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NAB 2026のKiloviewブースでは、NDIを軸とした低遅延IP伝送技術と、運用コストを低減する独自のIP管理エコシステムが披露された。

NDI技術を背景に発展してきたKiloview

Kiloviewは、現在のIP映像伝送におけるデファクトスタンダードの一つであるNDI分野で、早期から関連技術に取り組んできたメーカーだ。同社CTOのジェイコブ・ズー氏は、NDI開発者として知られるアンドリュー・クロス氏とも交流が深く、NDI黎明期から技術分野に携わってきた経緯を持つ

こうした背景は、同社製品の低遅延性能にも反映されている。一般的なNDI伝送では数フレーム単位の遅延が発生するケースもあるが、Kiloviewは独自の低遅延処理技術により、極めて低いレイテンシーを実現しているという。

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4K HDMI対応の双方向NDIコンバーター「N60」を用いたデモも展開。「Built-in NDI Bridge」や「Broadcast-Ready」をキーワードに、インターレース信号およびSEIタイムコードに対応した放送向けIP伝送ワークフローを訴求していた。モニターにはタイムコード付き映像を表示し、リモート環境を含めたNDIベースのライブプロダクション運用をアピールしていた

新製品:IP制作の核となる「AVX24-4」と「KiloLink Station」

今回の展示の中心となったのが、IPワークフローを統合・管理するための新ソリューション「AVX24-4 Media HUB」と「KiloLink Station」である。

VX24-4 Media HUB

ブースでまず目に入ったのが、IPメディア管理をシンプルにする「AVX24-4 Media HUB」だ。複雑化しがちなAV-over-IP環境を可視化し、一元管理できる点を特徴としている。ネットワーク接続状況をマップ状に表示し、システム全体の状態を直感的に把握できる構成となっていた。

放送グレードの信頼性を確保するため、DHCP、IGMPスヌーピング、QoS、VLANといったAV向けネットワーク機能を標準搭載。さらにPTP同期にも対応し、専門的なIT知識がなくても放送向けIP環境を構築しやすい設計となっている。ハードウェア面では冗長電源や高度な冷却システムを採用し、長時間運用での安定性も重視されていた。

AVX24-4 Media HUB

実際のUIもよく作り込まれている。リアルタイムマップ上にはデバイスや接続ポートが一覧表示され、異常発生時には色分けアラートで即座に状態を把握可能だ。ワンクリックでネットワーク全体の診断も行え、SNMPベースの監視によって遅延やスループットも継続的に確認できる。

NDIルーティング機能も本格的で、低遅延切り替えに加え、QoSによるストリーム優先制御にも対応。マトリックススイッチャー感覚で操作できるUIにより、複雑な運用も直感的に行える。さらにKDDS(Kiloview Device Discovery Service)によって、自社製品だけでなく対応サードパーティ機器も自動検出・管理可能だ。

複数台構成や、後述するKiloLink Serverとの連携にも対応しており、大規模システムへの拡張性も高い。ユーザーごとのアクセス権限設定も可能で、共同運用環境への対応も考慮されている。AVとITの境界を意識させず、一つのインターフェースで統合管理できる点は、IP化が進む制作現場において大きな強みとなりそうだ。

KiloLink Station

続いて紹介されたのが「KiloLink Station」である。配信現場で課題となりやすいサーバー構築や月額クラウド費用を不要にし、ハードウェア単体で完結する集中管理プラットフォームとして提案されていた。

ハーフ1Uサイズの筐体内部には「KiloLink Server Pro」を統合。ワイヤレスボンディング受信、デバイス管理、IP/SDIワークフローまでを一台で処理する。ラインナップは2種類用意されており、IPベース運用向けのStandard Editionと、4系統3G-SDIを搭載したPro Editionが展開される。

複雑なDocker設定やコマンド入力を必要としないプラグ&プレイ設計も特徴だ。

KiloLink Station
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Kiloview製ワイヤレスボンディング対応エンコーダー「Pシリーズ」を一元管理し、安定した映像伝送環境を構築できる点も大きな特徴である

性能面では、最大8台のP3またはP3 Miniエンコーダーを同時受信可能。複数回線を束ねることで、不安定な通信環境下でも安定した伝送を実現する。さらにフレーム精度同期に対応したSDI出力や、マルチビュー確認用4K HDMI出力も備え、中継車やスタジオ用途も視野に入る。

AVX24-4 Media HUBとの連携にも対応し、デバイス状態や信号フローをリアルタイム監視可能。NDI HX、SRT、RTMP、HLSといった主要プロトコルにも対応しており、リモート制作やライブ配信など幅広い用途に適応する。

プロ用途を支える多彩なラインナップ

ブースには、現場課題を解決する各種IP関連機材も数多く並んでいた。

中でも存在感を放っていたのが、PRONEWSでも過去に紹介したフラッグシップモデル「Cradle Series RF02」だ。2RUラックマウント筐体に18基のホットスワップ対応スロットを搭載し、高帯域スイッチも内蔵。複雑化しやすいIPシステムを高密度に集約できる構成となっている。

このプラットフォームは単なる筐体ではなく、統合型メディア管理センターとして機能する。KiloLink Server Proによる一元管理に対応し、エンコード、デコード、メディアゲートウェイ、ボンディング機能などを用途に応じて柔軟に構成可能だ。

複数デバイスを一つのソリューションとして統合できる点は大きなメリットであり、放送制作、医療映像、リモート教育、ライブイベントなど幅広い分野での活用が想定されている。

P3モバイルエンコーダーも展示されていた。4G/5G、Wi-Fi、有線LANを束ねるワイヤレスボンディング送信機で、日本国内向け技適も取得済みである。

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さらに、NDIマルチチャンネルレコーディングシステム「CUBE R1」も披露された。ライブ制作から現場確認用途まで対応する録画・再生デバイスで、NDI High BandwidthおよびHX3ソースを、4Kで最大4系統、1080p60で最大9系統同時収録可能だ。

本体タッチパネルでは最大9画面のマルチビュー表示に対応。スロー再生、倍速再生、コマ送りなども直感的に操作できる。ストレージ面では、2基のホットスワップ対応SSDスロットに加え、NAS書き出しもサポートしている。

「CUBE X1」は、NDI信号の分配・管理用途に特化したモデルだ。ハーフラックサイズの筐体ながら、NDI HXで最大16入力・32出力、NDI High Bandwidthで13入力・26出力に対応する。

ルーターモード、グループ管理、ローテーション再生など多彩な機能も搭載。NDI HX2/HX3を含む各種フォーマットをサポートしており、スタジオや中継車、大規模ライブ配信における信号管理用途で活躍しそうだ。

Kiloviewは現在、外部クラウドや他社サーバーに依存せず、自社機材のみで完結するIPエコシステムの構築を進めている。国内ではアスクが輸入を担当し、日本ラッドが技術サポートおよび販売を行っており、今後の展開にも注目したい。