NAB 2026の会場で目に留まったのが、Saramonicの「WiTalk9 X」である。撮影現場の定番であるHollylandのSolidcom C1シリーズに対抗する新製品だ。市場を牽引する他社に対し、積極的に攻勢をかけるメーカーの姿勢が感じられ、興味深い。

Saramonicのセールスディレクター、Diana氏にブースで直接話を伺い、新製品「WiTalk9 X」の実力を探った。本作は単なる後追い製品ではなく、現場での運用を強く意識した工夫が随所に盛り込まれている。本稿では、速報では伝えきれなかったディテールを詳しく解説していく。WiTalk9 Xの登場により、ワイヤレスインカムの選択肢が大きく広がるのは間違いないだろう。

9人同時通信に対応するモジュラー型インカムシステム

Saramonicは約1年前にワイヤレスインカムシステム「WiTalk9」を発表しましたが、今年のNABで新たに披露された「WiTalk9 X」には、どのような特徴があるのでしょうか。

Diana氏:WiTalk9の成功を基盤に、NAB 2026ではアップグレード版である「WiTalk9 X」を発表しました。これは、9人同時フルデュプレックスに対応したモジュラー型ワイヤレスインカムシステムであり、軽量性、安定性、柔軟性を備えたチームコミュニケーションを、導入しやすい価格帯で提供することを目的としています。

WiTalk9 Xは、業界初となるモジュラー型ヘッドセット設計を採用しており、ユーザーは片耳、両耳、またはヘルメット装着型へと10秒以内で切り替え可能です。片耳ヘッドセットの重量はバッテリー込みでわずか172gと軽量です。さらにSaramonic ClearTalk 2.0テクノロジーを搭載することで、優れた装着快適性と適応性、そしてさまざまな制作環境における安定したチームコミュニケーションを実現しています。

10秒で形態を変える変幻自在のモジュラーシステム

――この業界初のモジュラー型ヘッドセット構造とは、具体的にどのようなものですか。

Diana氏:従来、制作チームは用途や環境ごとに異なるインカムシステムを購入する必要がありました。WiTalk9 Xは、このモジュラーヘッドセットシステムによってその状況を変えます。ユーザーは片耳、両耳、またはヘルメット型へと10秒以内で切り替えることが可能です。また、片耳ヘッドセットはバッテリー込みでわずか172gと軽量であり、快適性と優れた適応性を両立しています。

実際には、これは単なる柔軟性の問題ではありません。長期的な価値とメンテナンスコストの低減にもつながります。イヤークッション、ヘッドバンドパッド、そしてヘッドバンド自体もすべて交換可能です。必要に応じて新しいパーツを取り付けるだけでよく、これによりコストを大幅に削減することができます。

――音質と信号の安定性について教えてください。

――音質はどの程度で、信号の安定性はいかがでしょうか。

Diana氏:WiTalk9 XはSaramonic ClearTalk 2.0を搭載しています。これは、AIノイズキャンセリングとデュアルマイクアレイを組み合わせた技術です。デュアルマイクアレイは、話者の音声にフォーカスしたカーディオイド型メインマイクと、周囲の環境ノイズを収集するサブマイクで構成されています。これらの情報をもとにAIがリアルタイムで音声とノイズを分離します。

AIノイズキャンセリングは、20,000時間以上におよぶ700,000件のノイズサンプルで学習されており、予測困難な環境下でも高精度に音声を抽出します。

通信の安定性については、内部アンテナと外部アンテナの両方を備え、常に信号品質を監視しながら最適な信号を自動選択する仕組みを採用しています。これにより干渉やドロップアウトへの耐性が大きく向上しています。

さらに、1.9GHzのDECT帯域を使用することで、Wi-FiやBluetoothが集中する2.4GHz帯の混雑を回避できます。ClearTalk 2.0とトゥルーダイバーシティアンテナにより、過酷な現場でも安定かつ明瞭な通信が可能です。

WiTalk Baseで最大64人まで拡張可能

――9人以上での運用にはどのように対応しますか。

Diana氏:WiTalk9 Xは単体で9人のフルデュプレックス通信に対応しています。Saramonic WiTalk Baseと組み合わせることで16人まで拡張可能であり、さらに最大4台のBaseをカスケード接続することで、最大64人まで拡張できます。

WiTalk BaseはUSB-C経由でコンピューターと接続可能であり、ZoomやTeamsと連携することで、リモートコラボレーションやハイブリッド制作にも対応します。

WiTalk Baseとの組み合わせにより、最大16人での全二重通信に対応する。さらに、最大4台のベースをカスケード接続することで、最大64ユーザーまで拡張が可能。導入しやすい価格帯ながらプロフェッショナルレベルの性能を提供する

アプリ連携で設定と管理を簡素化

――アプリなどの対応について教えてください。

Diana氏:Saramonicアプリにより、セットアップと管理は非常に容易になります。通信設定の構成、各種パラメータ調整、デバイスのリアルタイム監視が可能です。

特に有用なのが、GPS位置情報に基づいて各地域の法規に適合した周波数設定を自動適用する機能です。これにより、国際的に活動する制作チームでも安心して運用できます。

現場運用を強く意識した新たな選択肢

ブースにて実機を試用した印象は、製品としての完成度が極めて高いというものであった。特筆すべきは、イヤーカップの物理的な着脱により、片耳・両耳の仕様を即座に変更できるモジュラー構造である。

現場状況に応じて形態を即座に変えられる点は実用性が高く、用途ごとに複数のヘッドセットを用意する必要がなくなる。運用の柔軟性を大きく高める設計である。

機材の効率性を重視するプロの現場において、有力な選択肢の一つとなる可能性は高い。Saramonicの新たな方向性を示す製品として、今後の展開に注目したい。