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ついに届いた「16Kイマーシブ専用機」

8月上旬、待ちに待ったBlackmagic URSA Cine Immersiveが筆者の手元に届いた。プレオーダー開始当初は3月出荷予定とされていたが、最終的に数カ月遅れての到着となった。理由は「1台ずつ丁寧に調整しているため」とのこと。梱包は専用の大きなペリカンケース。開封の瞬間から"特別な機材"であることを実感する。

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実際に手に取ると、サイズ・重量ともに標準的なシネマカメラと同等。これまでVR撮影で使用してきたEOS R5 Cなどと比較すると圧倒的に大きく、周辺機器も含めて"本格的な映画機材"という印象だ。内部をのぞくとヒートシンクがむき出しで、ほぼ空洞のような構造に驚かされる。16K 90fpsという高負荷を冷却するため、ファンは常時回転。しかし耳を近づけてようやく聞こえる程度に抑えられている点は好印象だった。

撮影対象は「アイドル」に決定!

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今回テスト撮影の題材に選んだのは、アイドルグループ LiVS(ALL INc.)のミュージックビデオ収録。イマーシブ映像は基本的にカメラを固定するため、主体的にカメラへアプローチし、空間内で動きを生み出す被写体が望ましい。歌やダンスのパフォーマンスはまさに最適解であり、過去にもVR撮影経験のあるメンバーということもあって、現場はスムーズに進行した。

最も気を使ったのは「被写体との距離感」。VR180特有の立体視効果を活かしつつ、酔いを誘発しない心地よい没入感を得るために、振り付けや立ち位置を現場で細かく調整していった。

想定外の課題:光量不足とデータ容量

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撮影場所の照明が暗く、光量不足に悩まされた。Apple Vision Pro向け推奨設定はBlackmagic RAW 12:1だが、やむなく8:1で収録。その結果、わずか3分半の収録で340GBという巨大なファイルサイズに。高解像度・高フレームレート撮影では、照明計画と収録計画が極めて重要であると痛感させられた。

初期不具合とファームアップの重要性

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初期出荷機ゆえ、不具合も存在した。たとえば内蔵マイクが録音されない、左右同時出力ができないといった症状。しかし最新ファームウェアの適用で解消され、現在は正常に動作している。届いたらまずアップデートすることが必須だろう。

なお右チャンネルの内蔵マイクに周期的なノイズが乗るという報告もあるが、イマーシブ収録では外部マイクを使うため実用上は全く問題ない。

撮影フォーマットと運用ノウハウ

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URSA Cine Immersiveはレンズ交換不可、固定レンズでの運用となる。基本的には16K 90fpsが標準で、片目あたり8160×7200ピクセルつまり8K相当の解像度を実現している。設定可能項目はISO・シャッターアングル・ND・WBの4つに限られ、レンズはF4.5固定・無限遠想定という割り切り設計だ。現場で重要なのはシャッターアングルとNDの調整のみ。ISOやWBは後処理で柔軟に対応できる。

撮影時に課題となったのはフリッカー問題。90fps/360°シャッターという特殊な条件下で、日本の一般照明周波数に合わずフリッカーが発生しやすい。DaVinci Resolveのフリッカー除去で対応可能だが、撮影環境での工夫も求められる。

また、重量が約10kgに達するため、安定した三脚と水準器による水平・垂直の徹底が不可欠だ。VR180特有の"三脚の写り込み"対策として、カメラを前面に突き出すセッティングも有効だった。

細かい設定などはBlackmagic Design Webページのマニュアルを参照すると良いだろう。

編集ワークフローと課題

編集はDaVinci Resolve Studioを使用。データは膨大で、1カットごとにSSDへ吸い出して整理しながら作業を進めた。最終出力はApple Vision Pro向けに、P3D65色域・ST2084(PQ)ガンマを指定。Vision Proの基準輝度108nitに合わせる必要がある。

仕上げで最も重要なのはノイズリダクション。立体視を阻害するノイズは「質感の味」ではなく「没入感を壊す要素」として徹底的に排除すべきだ。Resolve内蔵のNRだけでなく、Neat Videoなど外部ツールを併用することで、仕上がりのクオリティは大きくアップする。

さらにApple Immersive Videoの特徴として、背景にUSDZ形式で「バックドロップ」を挿入できる点や、エクイレクタングラー変換が不要な点も注目に値する。最終的にVision Proで動作させるためには、アプリケーションエンジニアとの連携が必須であり、映像制作の枠を超えた新たなワークフローが求められるだろう。

まとめ

Blackmagic URSA Cine Immersiveは、まさにApple Vision Pro時代の到来を象徴するカメラだ。高解像度・高フレームレートによる圧倒的な没入感と、後処理の柔軟性は特筆に値する。一方で、膨大なデータ容量、ノイズ対策、そしてアプリ連携という新たな課題も浮き彫りになった。

イマーシブ映像制作は「機材を使いこなす」だけではなく、照明計画、データマネジメント、アプリケーション開発までを包括した総合的なプロジェクトになるだろう。その第一歩としてのURSA Cine Immersiveレビューが、映像制作者にとって貴重な参考になれば幸いだ。

▶今回の映像はAmpliumのプラットフォームにて公開予定。Vision Proをお持ちの方は、ぜひ実際の映像体験をチェックしてみてほしい。

渡邊 徹(Concent, Inc.)クリエイティブディレクター/VRディレクター

全天球映像作家「渡邊課」課長 XRや生成AIなどの先端技術を活用した施策を多数手がけ、自らVRカメラを持って現場で奔走。ユーザー中心の視点で、最適なコミュニケーション施策を考えるアイデアマン。現在はURSA Cine Immersiveを使った、Apple Vision Pro向けのイマーシブ映像をプロトタイプ中。YouTubeでは「VR映像作家 渡邊課 課長」として、XR映像技術のひらく化に勤しんでいる。

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