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「PXW-Z280」が発売されたのは2018年秋。その後「PXW-Z190」が発売されて以降、ソニーの業務用4KカメラのアナウンスはZ200が出るまで音沙汰なく、私の周りの同業者からは、いつソニーから3連リングのカメラが出るのか?という話題が本当によく上がっていた。

ようやく2024年にソニーから新しいハンドヘルドカメラが出るらしいとの噂が出始め、周りではいったいどんなカメラなのか?と相当ざわついていたことを記憶している。

満を持して発表されたZ200に対し、好意的な意見となぜ3連リングじゃないのか?という疑問の声もかなり上がっていたことは事実。ソニー的にも3連リングの需要があることは当初から分かっていたようで、時期をずらす形となったが今回、Z200発売後遅れること1年で、ついに待望の3連リング搭載の「PXW-Z300」がベールを脱ぐこととなった。

今回PRONEWS編集部よりカメラを預かることができたので、先行販売されていたPXW-Z200との比較なども交えながら、実際にどういう部分が変わったのか私の目線ではあるが検証してみたいと思う。

新たなソニー的デザイン

最初に目にした時の印象はZ200のデザインを踏襲した形となっており、サイズ的には3連リングということもありZ200を一回り大きくしたデザインとなっている。重量感もずっしりとした感じでZ280とほぼ同じくらいという印象を受けた。

ハンドルを持った時の左右のバランスはほぼ完璧に取れており、ハンドルを持って撮影した場合ほぼ水平が取れる設計となっている。前後バランスに関しては搭載するバッテリーにより変わるのだが、「BP-U70」の場合ちょっと後ろが重くなる感じであった。

今回のZ300で特徴的なのは変化(へんげ)するLCDモニターだ。現在のカメラマンの平均年齢は以前と比べ高齢化してきており、現場からの要望も老眼に対応してLCDの位置をもっと前方(遠く)にして貰いたいという切実な声にソニーは答えてくれた形となる。

このLCDの可動構造は大変よく考えられており、クルクル回る回転機構が3カ所あるため写真のように手前、奥、カメラの正中(中心線)という、今までにないポジションを実現できている。可動部の物理的強度もかなり高く、今までの華奢なヒンジ構造から脱却した物となっている。

フレキシブルLCDアームであらゆる撮影スタイルに対応

残念なことにリアのビューファインダーが廃止になってしまった。ソニー的にはLCDの輝度特性が向上したので、外のロケでも問題なく確認できるようになったために廃止したという話である。

Z200には下方に曲げておくことができるVFが付いており、見たい時に起こすことで映像を確認できる仕組みなのだが、実は筆者はZ200のVFは意外と重宝している。というのも老眼が進んでくると近くが見えにくくなりLCDに表示されている文字などはこのクラスのサイズでは到底細かくて見えない。

しかしVFだとレンズの視度調整ができるので、VF内の細かい文字もはっきりと確認できる。LCDに取り付けられる拡大表示ができるVFレンズが出てくれば対処は可能なのだが、オプションで対応してもらえると嬉しい。

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Z200とZ300はいろいろと共通する部分は多々あるのだが、LCDに関しては可動部分以外の違いがある。Z200にはLCD側面にピーキング、ゼブラ、アサインボタンが付いているのだが、Z300にはこれらのボタンはなく、LCD映像を鏡像、上下反転などLCDをいろいろ動かした時にちゃんと整体に見えるようにするスライドスイッチが付いている。この部分にもピーキングやゼブラボタンを装備してもらいたかった。

後部サイドにはアクセサリー用のVマウント機構が供えられており、使用する現場に合わせたカスタマイズが行いやすくなっている。この部分は今回は触れないが、ソニーが推奨しているクラウドやオンプレミスサーバーへの転送モジュールの取り付けが考えられているようだ。

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気になるレンズ周り

このカメラのセンサーは1/2インチ4K Exmor R CMOSイメージセンサー3板式となっている。レンズ部分は先代のZ280とほぼ同じ仕様のFUJINON製となっている。

広角側5.6mm 望遠側95.2mm(35mm換算 30.3mm~515mm)いささか引きのサイズが35mm換算で30.3mmというのはENGの現場ではかなり物足りない印象。Z280の時にも同じ指摘があったと思われるが、この部分は今回のプロダクト設計段階でコスト面から外されたのかもしれない。逆に言うとステージ物やスポーツなど被写体から離れた所から撮影する場合は向いているともいえる。

ただ、この場合も光学17倍という倍率では若干物足りなさを感じる。この倍率設定はF落ちしない光学的特性を考慮した望遠端ということを考慮した設計ということなのだと思われる。それを補完する機能として新たにデジタルエクステンダー機能が搭載されている。

4K収録時は1.5倍、HD収録時は2倍・3倍・4倍の画質を落とさない拡大が可能となっている。今回超解像ズームの機能は見送られていて、純粋なデジタルエクステンダーとなっている。これらの機能は側面のボタンにアサインすることができる。

オートフォーカス、マニュアルフォーカスの切り替えもフォーカスリングを前後にずらすことにより切り替える機構はZ280と同じ。またその他のオートアイリス切り替えやワンプッシュAF、手振れ補正機能ボタンの配置もZ280と同じとなっている。

マクロ機能も便利だ。HDであればデジタルエクステンダーで4倍まで寄ることができるが4Kではそこまで拡大できない。そういう時にはマクロ機能を使うことで対処できる。

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Z300はM.O.D(最短撮影距離)が80cmなので商品クローズアップ撮影にはまあ問題ないレベル。Z200は100cmなので、展示会などのガラスケースに置いてある商品を撮るにはちょっと不向き。長い脚の三脚が必要になる。

Z300とZ200の画角差の参考事例

本来は画質の荒れなどを意識すればここまで寄るということはないが、エマージェンシー的に最大望遠が欲しい場合の参考になればと…。

画質に関してはZ300に軍配が上がる。というのも2000lx F12というスペックはかなり優位だと感じる。このカットを撮影した時は夕方近く若干暗くなったなという印象。

Z300は特にゲインを上げる必要もなく撮影できた。またZ200は前玉がZ300より小さいため集光力がなく、ゲインは12dBまで上げているデジタルエクステンダー(1.5)を入れると画像にはざわざわとノイズがまとわりつくのが確認できた。まあこれも一生に1度あるかないかのイレギュラーな時に(非常用)使うのがよろしいかと…。

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ND機構もZ280と同じなのだが、ボタン配置はZ200のデザインと共通となった。筆者としてはダイレクトにNDを変えられるレバーを搭載したZ280の方が番組取材など屋外、屋内を移動する撮影では間違いが起こりにくいのでは?と感じた。まあ馴れの問題なのかもしれないが…。

このカメラの画像処理エンジンはα7 IVで採用されたBIONZ XRとなっている。この処理エンジンは先行発売のZ200に搭載されたものと同じようで、オートフォーカス特性やディティール・質感表現などソニーの技術の結晶ともいえる高度な処理を受け持っている。SDR収録(BT.709)時にはS-Cinetone、ITU709などのプリセットを選択可能。

α7系のカメラも収録現場では最近よくお目にかかるが、これらのカメラとの混在環境でもカラーマッチングがしやすく、S-Cinetone指定という現場では特にもてはやされるだろう。

広色域・広ダイナミックレンジでの記録が可能なHDR収録ではS-Log3、HLGが選択可能。HLGではHLG Live、HLG Mild、HLG Naturalのプリセットが用意されている。この辺りはZ200とほぼ同じといってよい。

オートフォーカスについてもZ280より進化しておりAIプロセッシングユニットを搭載することにより、人体の構造や姿勢を認識することで高度なAF機能を発揮することができる。

例えば骨格を認識しているので被写体が後ろを向いていて顔が見えない状態や、マスクをしているような状態でも顔の部分にフォーカスを合わせることができる。

このカメラにもZ200と同じオートフレーミング機能が搭載されており、人物を画面の中央に配置した状態で追う機能や人物を周期的にズームインからズームアウトを繰り返す演出も新たに加わっている。

収録に関してはZ200と同じくCF Express Type1とSDXCカードに対応している。収録フォーマットは4K(24P 25P 30P 50P 60P)HD(24P 25P 50i 50P 60i 60P)、MPEG HD422 MXF XAVC Intra(4:2:2 10bit)XAVC Long(4K 4:2:0 8bit / HD 4:2:2 10bit)、HEVC(MP4)プロキシ収録対応となっている。

2つのスロットがあるためAスロットに4Kフル画質、BスロットにHDプロキシという記録も可能。

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4chオーディオ

フロントのXLR 2ch入力の他、MIシューによるワイヤレスレシーバーからの2ch入力にも対応、独立して入力レベル調整が可能となっている。またフロント内蔵マイクはステレオ仕様となっている

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MIシューは後部1カ所、VFは廃止された

本機を使用して気になった部分をもう一つ上げるとすると外部DC入力端子がUSB Type-Cのみとなってしまった点である。Z200には20V出力のACアダプターが付属されていたが、本機にはUSB Type-C PD(Power Delivery対応電源 100W対応)が別途必要になる。

今回のデモ機にはAnker社製の100W対応電源が付属していたが、筆者の手持ちの60W対応電源ではカメラのスイッチを入れても起動しなかった。

カメラバッテリーのBP-U〇〇は14.4Vのバッテリーなので、なぜ外部電源は20Vが必要なのか?疑問に思っているところだ。

Z280とZ200の長所を融合した、撮影スタイルで選ぶべき一台

全体を通すと、Z280+Z200÷2といった印象ではないだろうか。Z280自体はかなり完成度が高いカメラだったので、それをベースにZ200とほぼ同じ動画エンジンとAIプロセッシングユニットを搭載させ、ピント周りはかなり優秀なカメラという印象だ。

また明るいレンズと裏面照射3板CMOSという、明るいセンサーの特性を十分に生かしたノイズ感の少ないカメラに仕上がっていると感じた。

重量や消費電力、外部電源等解決してもらいたい内容もあるが、ユーザーのチョイスとして、自分の撮影スタイルに合っていればドはまりするだろうし、広角メインであれば、200を考えてもいいのかもしれない。要はご自分の仕事に合ったアイテムなのかを選ぶカメラではないかという感想で締めくくりたい。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。