ニューオリンズでSIGGRAPHが行われるのは、1996年、2000年に引き続き今年で3回目になる。ニューオリンズ・コンベンションセンンターはミシシッピー川沿い位置しており、ウナギの寝床のようにとても長く巨大な建物だ。写真の左端にある入口から、セミナー会場まで毎日延々と歩かされている。建物は3階建てなのだが、2階と3階は横に全部の部屋がつながっているわけではなく、部屋番号を頼りに部屋を探していると迷ってしまう。以前に訪れた時のかすかな記憶をたどってみると、以前はもう少し短かった建物であった気がする。もしかしたら建て増しが行われて,2階・3階のフロアーが分断されてしまっているのかもしれない。

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SIGGRAPHで毎年、グラフィックスを利用した体験型の先端技術展示が行われているのがEmerging Technologyのコーナーだ。見たり触ったり感じたりできることもあって、この展示は人気だ。毎年、日本の学校や企業から数多くの出展が行われていることも特徴だ。

例年のEmerging Technologyは、大きなカンファレンスホールで行われていることが多いのだが、今年は上記のようなコンベンションセンターの構造もあって、1列に並んだ部屋に分かれて展示していた。展示室の1つ1つは、小学校の教室程度の大きさがあり、1つの部屋に2~5つ程度の展示が散在していた。例年の展示と比較して天井が低い印象はあったが、1つ1つの展示をじっくり聞くためには、これの教室スタイルも良いかもしれない。

それでは、Emerging Technologyの中から、日本からの展示に焦点を当てて紹介していこう。


■3D Crystal Zoetrope

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円盤状のディスクに積層状に螺旋形に星などのマークを刻んだ3D Crystal Zoetrope。この円盤を回転させながら同期を取ってLED照明を当てると、見えるマークの位置が上がったり下がったり、右に左に回転したりと面白い動きが見られるというものだ。

■Bloxels Glowing Blocks as Volumetric Pixels

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四角いキューブを積み重ねて変化を楽しむ出展。1つ1つのキューブには,底にフォト受光機、上面にフォト発光機が付いており、キューブの中にさまざまな色を出す発光体が入っている。

テーブル上には仮想的なボクセルが存在し、ボクセルの1つ1つに色をプログラムする事ができる。これらのボクセルの情報は、テーブルから一番下に置いたキューブに送られており、上に積んだキューブのフォト発光機/受光機を使って順次転送されていく仕組みだ。

Jinha Lee, The University of Tokyo
Yasuaki Kakehi, Keio University
Takeshi Naemura, The University of Tokyo

■CRISTAL Control of Remotely Interfaced Systems Using Touch-B

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リビングにあるテーブルTOPが、部屋中の機器のコントロールを行うという展示。テレビのチャンネルや音量だけでなく、記録されているアルバムの写真をテレビに出力したり、部屋の明るさや空調をコントロールしたり、部屋掃除の指示を行ったりすることもできる。

Thomas Seifried, Christian, Rendl, Florian Perteneder, Jakob Leitner, Michael Haller, Media Interaction Lab
Daisuke Sakamoto, Jun Kato, University of Tokyo
Masahiko Inami, Keio University
Stacey D. Scott, University of Waterloo

■Funbrella Making Rain Fun

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目の前のスクリーンには、上からいろいろな物が落ちてくる映像が流されており、持っているビニール傘からは落ちてきた物の衝撃が伝わって来るという体感型の展示だ。

Ai Yoshida Yuichi Itoh Kazuyuki Fujita Maya Ozaki Tetsuya Kikukawa
Ryo Fukazawa Yoshifumi Kitamura Fumio Kishino
Graduate School of Information Science and Technology, Osaka University


■gCubik Real-Time Integral Image Rendering for a Cubic 3D Display

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キューブ形状をした裸眼立体視のディスプレイ装置のデモ。解像度は低いが、キューブを手にとって、上から下から斜めから、自由に形状を見る事ができる。

Roberto Lopez-Gulliver, Shunsuke Yoshida, Sumio Yano, Naomi Inoue
NICT Universal Media Research Center, Kyoto, Japan


■I Love Sketch

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3D CADの入力装置のデモ。スケッチがしたいのに、入力デバイスの操作を覚えないといけないなんてことはよくある。ここでの出展は、コマンドを覚えなくとも、画板でスケッチを行うようにモデリングが行えるというものだった。







■Interactive Cooking Simulator

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透過型のディスプレィを使ったバーチャルクッキング体験装置。実際にフライパンを動かすと、ディスプレイ上の肉も連動して動くことが体験できる。

■PhotoelasticTouch Transparent Rubbery Interface Using an LCD

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画像が映し出されたゲル状のプニョプニョした物体を押したり、つねったりすると、画像が変化するという展示。インターフェィス自体が安価に済むように、偏光板とカメラを使用して実現していた。

Toshiki Sato Haruko Mamiya Taro Tokui Hideki Koike, The University of Electro-Communications
Kentaro Fukuchiy, Japan Science and Technology Agency


■Sound Scope Headphones

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楽器に囲まれたレコードプレーヤー台の上に乗っているかのような出展。被験者のヘッドホンに流れている音楽は、向いた方向の楽器の音がフューチャーされるようになっている。

Masatoshi Hamanaka, Univirsity of Tsukuba
SuengHee Leey, Univirsity of Tsukuba





■Twinkle Interface for Using Handheld Projectors to Interact

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小型の懐中電灯タイプの装置から、キャラクターなどが投影されるというデモ。投影される画像は、あらかじめ照射される位置や動きがプログラムされており、操作者の思う通りには動かない。この映像と懐中電灯タイプの装置を組み合わせて、インタラクティブゲームなどを楽しめるしていた。

Takumi Yoshida, The University of Tokyo
Hideaki Nii, Keio University
Naoki Kawakami, The University of Tokyo
Susumu Tachi, Keio University

■YOTARO Baby-type Robot

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寝ている赤ん坊ロボットは、薄っすら暖かく、足をバタバタさせてグズッているときに顔を撫でると笑ったりする。ヨダレや涙が「水」として、赤ん坊の顔に出てくるようになっていた。

Hiroki KUNIMURA, Chiyoko ONO, Madoka HIRAI, Masatada MURAMOTO, Wagner Tetsuya MATSUZAKI, Toshiaki UCHIYAMA, Kazuhito SHIRATORI, Junichi HOSHINO
University of Tsukuba

■Anthropomorphization of a Space With Implemented Human-Like

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冷蔵庫などの電化製品をキャラクター化するという試み。その製品の使い方を教えてくれたりして親しみがわくので、ペットにしても良いかも。

Hirotaka Osawa, Keio University
Kentaro Ishiiy, Japan Science and Technology Agency, ERATO
Toshihiro Osumiz, Ren Ohmurax, Michita Imai, Keio University

SIGGRAPHというと、最先端技術カンファレンスに展示会がくっついたイメージもあるが、Emerging Technologyは大学などが行っている産学協同研究の成果発表の場でもある。このコーナーへの出展の中心となっているのは日本からのものであり、その技術は海外の学生や企業に対して、大いにアピールする場となっているのだ。

(今間俊博)