SIGGRAPH 2009が8月3〜7日の5日間、米ニューオリンズで開催された。SIGGRAPHでは展示会も行われているが、本分はコンピュータグラフィックス(CG)の学会である。グラフィックス関連の最新技術に関して論文発表やピスター発表が行われている。こうした発表とは別に、もう1つの有益な楽しみと言えば、CGを駆使したさまざまな映像作品の上映と、それらのメイキングやテクニックに関するセッションが行われるということだろう。

旧来の上映形式に戻したTheaterプログラム

今年の Computer Animation Festival では、通常の映像作品上映の前に、Real Time Liveと銘打ったリアルタイムCG映像作品の上映も実施された。Real Time Liveは、映像系のインタラクティブ作品やゲーム機を使用してリアルタイムに生成した映像などで構成されていた。

SIGGRAPH 2009のComputer Animation Festivalノミネート作品で、アワードを受賞した作品は以下の通りだ。

Best of Show (最優秀作品賞)/『French Roast』

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Jury Award (審査員賞)/『Dix』

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Jury Honorable Mention(審査員名誉賞)/『Alma』

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Student Prize (最優秀学生作品賞)/『Project: Alpha』

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W.T.F(Well Told Fable) Prize (脚本賞)/『Unbelievable 4』

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今年の受賞作、ノミネート作品群には、ヨーロッパ勢の勢いが感じられた。受賞作にこそ入っていないが、Computer Animation Festivalでは、日本の作品『KUDAN』『Hydrodynamic Butterflies』『塵芥集』『CR 宇宙戦艦ヤマト2』なども上映されていた。

ソニー製プロジェクターでステレオスコピック作品上映

今回さらに、Computer Animation Festivalとは別会場に、ソニー製4Kデジタルシネマプロジェクターに専用立体視投影用レンズユニットを組み合わせた2K+2K立体視の映像環境が用意された。この立体視用の会場では、各種立体視映画のメイキングや、予告編鑑賞、スクリーニング(試写)が行われ、長蛇の列ができた。立体視方式はRealD(偏光立体視)方式で、上映開始時に燦然と輝く「CineAlta 4K」ロゴを観て、プロジェクター本体を見ようと振り返る観客もいた。

立体視上映やメイキングなどで取り上げられた作品は次の通りだ。

  • Pixar/『カールじいさんの空飛ぶ家』(原題『UP』)
  • Pixar/Tokyo Mater(日本を舞台にした『Cars』のパロディ短編)
  • Coraline 3D(三次元プリンタを活用したストップモーションアニメーション)
  • G-Force(原題、ネズミのエージェントが活躍する実写+CGの映画、立体視ゲームも同時展開)
  • U2 3D(バンドU2の立体視収録されたライブ映像)
  • Disney Enterprises/映画『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン監督作品)
  • Pixer/Toy Story 3D, Toy Story 2 3D(映画『トイストーリー』の立体視版)
  • Sony Pictures/映画『曇りときどきミートボール』(原題『Cloudy With a Chance of Meatballs』)
  • DreamWorks SKG/映画『モンスターVSエイリアン』

最近の話題の映画作品や、CGを駆使した作品の多くが立体視作品としても制作されるようになってきている。立体視施設をもったシアターが増えるにつれて、数々の作品に触れられるようになってきた。今年のヴェネチア国際映画祭では、”the Best 3-D Stereoscopic Film of the Year”が新設されるという話もあり、ますます立体視作品の活躍の場が増えてきた。

立体視作品は、製作の苦労が倍では済まないという状況ではある。しかし、通常の上映料金より割高の料金を設定でき、観客数も動員できるため、興行収入としては実入りが良いことが注目されている。ステレオスコピック上映の本質では無いが、ビデオカメラなどで不法撮影されたものがコピーされて流通しないことなども、高評価につながっているようだ。

立体視表現の手法も変わりつつある。上映技術や立体感を調整することのできる編集技術、映像演出の進歩もあって、立体視黎明期に数多く見られた、刃が飛び足すような陳腐な立体視演出は行われなくなった。むしろ、立体視としての奥行き感や広がりを、うまくストーリー演出に生かした作品が多くなってきている。これに、試写で使用されたRealD方式をはじめとする立体視技術の進歩が加わり、90分間の映画を1本まるまる立体視で観ても目が疲れなくなったことも、立体視が受け入れられる要因につながっているのだ。

(安藤幸央)