米ルイジアナ州ニューオリンズのニューオリンズ・コンベンションセンターで、世界最大のコンピュータグラフィックスの学会・展示会であるSIGGRAPH 2009(主催:ACM)が、2009年8月3〜7日(米国時間、展示会は4〜6日)の5日間にわたって開催されている。2005年8月にハリケーン・カトリーナの直撃による洪水の大被害を被ったニューオリンズは、現在はジャズ発祥の地・ニューオリンズ=音楽のあふれる街として復興し栄えていた。
さて、今年のSIGGRAPH 2009の特徴は、Game Papersと呼ばれるコンシューマゲームの中で使われている最先端の技術や、ゲーム開発のためのテクニックなどの論文発表のセッションが新設されたことだ。ゲーム開発者向けのカンファレンスとしては、3月に開催されているGDC(Game Developers Conference)が広く知られているが、SIGGRAPHにおけるゲーム関連のセッションは、より基礎研究に近く、コンピュータグラフィックスアルゴリズムの応用、インタラクティブテクニックのゲームへの応用が考えられたものだ。
また、ニューオリンズという土地柄を考えたのだろうか。音楽や、音に関するセッションが多いのも今年のSIGGRAPHの特徴だ。それでは、SIGGRAPHの模様を紹介していこう。
36時間連続!! CGマラソン制作イベントFJORG!
持ち時間は50秒。リレーで全論文を紹介するPapers Fast Forward
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SIGGRAPH恒例の人気イベントとなったPapers Fast Forwardセッション。このセッションでは、SIGGRAPHで発表される論文を、1本・約50秒という短時間で全て紹介するという勢いのあるイベントです。変装して発表する人から、掛け合い漫才のようにウケ狙いの人まで、それぞれのやり方で論文を紹介し、後日の論文発表をアピールする場となっている。
SIGGRAPHの数ある論文の中から、特にPRONEWS読者の皆さんに役立ちそうなものを紹介しよう。
■Moving Gradients: A Path-Based Method for Plausible Image Interpolation
2枚のわずかな時間差のある写真から、その時間をつないだスムースな動画映像を生成する技術。中央の3枚が、左右の画像を元に新たに生成された画像だ。
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■Optimizing Content-Preserving Projections for Wide-Angle Images
超広角の写真を利用する技術。魚眼写真の中から直線の個所を指定することで、四角い広角写真に変換する技術。右下が今回生成した出力だ。生成過程を紹介する動画はこちら。
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■Content-Preserving Warps for 3D Video Stabilization
手持ち撮影ビデオカメラのぶれを自動的に削除する技術。いわゆるソフトウェア ステディカム技術。
フラッシュ撮影時に目をつぶってしまうのを避ける手法。暗いフラッシュでも明るい写真を生成する技術。左から、マルチスペクトルフラッシュ光、環境光のみ、今回生成した出力、長時間露光。
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ゲーム界の重鎮、ウィル・ライト氏がキーノートスピーチ
今年のSIGGRAPH 2009は、ゲーム関連のセッションが充実している印象だ。それを示す1つが、2日目のキーノートセッションだ。キーノートセッションに登壇したのは、「Sim City」や「Spore」などシミュレーションゲームで知られる著名なゲーム作家ウィル・ライト氏。300枚弱のプレゼンテーション資料を次々に見せ、勢いのある超早口の講演ではあったが、時折大爆笑をはさみながら、多くのSIGGRAPH参加者が引き込まれていた。
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講演は、さまざまなエンターテインメントメディアの関係性と、人間の脳の仕組みと映像や音の認識に関する概念的な発表であった。ライト氏が、どのような考えのもとで物作りをしているのかが分かり、とても考えさせられる内容だった。
WiFiの提供だけでなく、音声データやTwitterも活用
SIGGRAPHはこれまでも、会場内でインターネットを活用した運営をおこなってきたが、今年はさらに充実している。アートギャラリーでは、mp3音声データを使用した紹介も採り入れ、iPodやiPhoneにデータを入れて、音声による解説を聞きながら会場を回ることができるようにしていた。
会場内でのさまざまなイベントが開始される前には、Twitterを使用して告知があり、参加者の行動の助けになっている。さらに、Wikiを活用した名刺交換ゲームなどもあり、ソーシャルネットワークを拡げるための試みもなされている。
現在、開催3日目を迎えているSIGGRAPH 2009だが、引き続きニューオリンズからレポートを行っていく。
(安藤幸央)
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