時代の必要性から重要視されるレコーダー

レコーダー部門は新設した部門だ。以前までのテープの時代ではビデオがカムコーダー内で収録することが標準化されていたところから、ファイルベース化されたゆえの新たな潮流として、カメラ本体とは異なるコーデックのファイルフォーマットで収録したいという制作者の欲求から、別途外付けのレコーダーで異なるフォーマットでの収録ができるレコーダーが出現。その中でもcinedeck EXTREMEのように編集用のコーデックである、アップルのProRes422や、アビッドテクノロジーのDNxHDなどで収録出来る、現場収録用のレコーダーの存在は、近年の新たな傾向だ。ファイルベース化されれば、その後必然的に収録データはノンリニア編集システムなどへ取り込まれ、データとしてやり繰りされていくわけで、最初から編集用フォーマット収録は、効率的だ。またそれ以外にも上映用のビデオレコーダーやアーカイブ用のレコーダーなど、データの運用が増えれば増えるほど、その取り廻しに便利なレコーダーや管理に必要なアーカイブが増えるのは、データベースの運用理論で言えば不変的に正比例するのである。

さて、ここに取り上げられた製品だが、まずトムソンカノープスのデジタルディスクレコーダーT2は、GrassValley HQコーデックを採用したイベント現場の映像出力や、ケーブルTV局などの放送用途、また映像編集などのポストプロダクション等でも使用出来る製品。特徴的な7インチタッチパネルとジョグシャトルによる、放送用VTRライクな操作性は特に放送局などでの使用に向いている製品だろう。昨年のPRONEWS AWARDを受賞したAJA Ki Proは、アップルの編集コーデックであるProRes422収録レコーダーの先駆けとして、またカメラ周辺機材としてのレコーダーとして画期的な製品となった。今年は、その大反響のあったKi Proのユーザーからのフィードバックにより誕生した弟分にあたるKi Pro miniが早くも反響を呼んでいる。撮影環境の小型化への提案として、一回り小さな筐体とKi Proと同等の機能、堅牢化した金属製のボディと細かい取り付けアームなども付属して、よりカメラガジェットとしてブラッシュアップされた。これに対抗するように、今年のIBCで突如現れたのが「ATOMOS NINJA」だ。同じProRes422による収録が可能。その他では、パナソニックのPOVCAMとして昨年末に発売されたメモリーカードポータブルレコーダー「AG-HMR10U」が、意外と現場で予備のアーカイブやプレビュー用の映像モニター兼レコーダーとして使われている。POVCAM用途以外のこうした使われ方もコンパクトなレコーダーが現場のワークフローで重要なポジションを占めてきた表れだろう。

txt:石川幸宏 構成:編集部

PRONEWS AWARD 2010 レコーダー部門ノミネート製品

  • パナソニック AG-HMR10U
  • AJA Ki Pro mini
  • ATOMOS NINJA
  • トムソンカノープス T2
  • cinedeck EXTREME

ノミネート基準と講評

「カメラレコーダーはKi Proによって開かれた。編集コーデックで収録するという発想は斬新。今年はその便利さに恩恵を受けた人のフィードバックが多かったと予想」

「単に収録するというよりも、カメラ側にAVCHDでパラレル収録できることで、AG-HMR10Uなどを使って、カメラ本体とは別なところでプレビューできるのが便利」

「cinedeck EXTREMEは140万円と高価格だが、Avid ベースで編集しているユーザーには大きい存在になるかもしれない」

「ATOMOS NINJAは画期的な新製品。ミスを招く恐れのある操作は一切無く、REC/STOP/MONITER/PLAYの4つしかないシンプル操作が良い」

「T2が意外とイベントのポン出しレコーダーとしてウケているらしい」

「Ki Pro miniはカメラ周辺機器として進化した製品」

PRONEWS AWARD 2010 レコーダー部門受賞製品発表

レコーダー 部門
ゴールド賞
Ki Pro mini
AJA Video Systems
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Ki Proに比べて、小型軽量かつ頑丈なエアクラフトアルミ製のボディに10bit フル解像度 Apple ProRes 422 SD、HDフォーマットで収録可能(HQ/LT/Proxy含む)。カメラからコンパクトフラッシュ(CF)カードへSD/HD収録でき、QuickTimeファイルを生成、SD/HD-SDI、HDMI入出力、ライン/マイクレベルを選択可能なスイッチを持つ2ch.バランスドXLRオーディオ端子を搭載、SDI、HDMI経由で8ch.のエンベデッドデジタルオーディオ対応。Ki Pro Miniオプションとして、ホットシューやバッテリープレートなどのアクセサリーにマウント可能なポータブルメディアレコーダー。

レコーダー 部門
シルバー賞
NINJA
ATOMOS
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Ki Pro miniよりもさらにコンパクトなボディでProRes422収録が可能なコンパクトキャプチャデバイス。ノートブック用のHDDもしくはSSDを収録メディアとして採用、DSLRのHDMI端子から直接ProRes422収録できる。本体操作はシンプルなタッチスクリーンで行える。バッテリーもソニー製のコンパクトバッテリーが使用可能で、ホットスワップ対応により、セカンダリバッテリーに自動切り替えとなる。MacPro、iMac、MacBookなどのFireWire 800、USB2.0/3.0、eSATAで接続し、収録データにアクセスすることが可能。

総評

ファイルベースカメラ時代の新型レコーダーが隆盛となって来た2010年、受賞理由としては当たり前のことだが、安定した駆動性能と機動性が決め手になった。Ki Pro miniはこれまでのKi Proのモチベーションを変えること無く、さらにコンパクトに仕上げて来たところで更なる実用価値が生まれてくることは必至だろう。NINJAは登場間近の製品ではあるが期待値が非常に高く、なによりも低価格であることが一番の魅力だ。国内ではフォーカルポイントコンピュータが総代理店として取り扱うが、開発にはアップル社の協力もあったということで製品のポテンシャルも高そうだ。