2010年を総括する!

昨年からの大きな潮流として、プロ映像業界もステレオスコピック3D(S3D)映像を新機軸として、更なる業界の活況にむけて取り組んで来た。しかし、S3Dという特殊コンテンツは制作の段階でも非常にハードルが高く、演出のセンスや撮影技量、また制作にも大きな予算を必要とするため、誰もがそこに参入することは難しかった。

そんな中で世界中からも注目されていたパナソニックのS3D撮影用カメラ「AG-3DA1」がようやく発売。2009年のNABで初期のコンセプトモデルが発表され、今年のNAB2010で実機がお披露目になり、今夏に待ちに待った出荷となった。もちろんそのインパクトは強烈で、特に業務用の世界にまでその幅を広げてくれた功績は大きい。まだ実際にAG-3DA1によるコンテンツが数多く世に出てくるには、少し時間がかかるかもしれないが、このカメラの多様性によって、新たな映像制作へのポテンシャルを高めてくれたことには違いない。このカメラに、第2回目となる今年のPRONEWS AWARD 大賞を贈りたい。

PRONEWS AWARD 2010 カメラ部門受賞製品発表

PRONEWS AWARD
大賞
AG-3DA1

パナソニック

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本体重量2.4kgの小型軽量な筐体、左右チャンネルのフルHD映像をAVCHD方式(高画質PHモード)でSD/SDHCカードにファイルベース収録する。世界初の一体型2眼式フルHD 3Dカメラレコーダー。左右のフルHD信号はHD-SDIサイマル出力可能。3D撮影のために新設計されたツインHDレンズは、フォーカス、アイリス、ズームが正確に同期、またコンバージェンスポイントも自由に調整可能で自然な3D映像が撮影可能。業務用ビデオの世界にまでS3D制作の新たな可能性を拡げたこの「AG-3DA1」登場の功績は大きい。

PRONEWS Loungeで発表された大賞!

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夕方開催されたPRONEWS Loungeの中で第2回PRONEWS AWARD大賞の発表が行われ、パナソニック宇郷氏が無事記念楯を受賞。「チャレンジングな商品でしたが、受賞できてうれしく思います」とコメントを残した。この模様は、PRONEWS Loungeアーカイブから参照可能なのでぜひ見てほしい。

苦境の中から出て来た新しいテクノロジーの芽に期待

2008年10月のリーマンショック以降、その経済不況が業界の制作費に直接反映されるカタチで波及してしまった2010年前半の映像業界。予算削減による制作規模縮小ゆえに、その高性能からもてはやされたDSLRムービーの台頭など、今年前半まで話題をさらっていったのはやはりDSLR機と、価格の安いHDソリューションであるAVCHD関連製品だったと言えるだろう。またRED ONEに代表される「4K」「デジタルシネマカメラ」といったキーワードについては、一部の映画CM業界では未だに継続するものの、EPICやSCARETの出荷遅れやARRI ALEXAの実機入荷の遅れもあって、弱冠足踏みした一年でもあった。

そんな中で多くのコンシューマテレビメーカーがこぞって3D対応のテレビを出荷し、TV向けの3Dコンテンツが急務となって来た中で、「AG-3DA1」のようなカメラの登場は、業界にとっても大きなプラス要素として働いたことは言うまでもない。また日本ビクターの2D3D変換プロセッサー「IF-2D3D1」や、IBC、InterBEEではソニーからもシャルダー型のS3D2眼一体型カメラが発表されている。今後もこうしたS3D制作ツールの汎用製品が出てくることによって、エポックメイキング的なS3Dキラーコンテンツが出てくる土壌がようやく出来たばかりと言えるのではないだろうか?すでにS3Dの行方を不安視する見方が些か声高になってきた感があるが、その結論を急ぐのはまだ早い。これからが面白くなってくる市場であると期待したい。

DSLRにある意味で市場を奪われたビデオ業界の巻き返しの具体策として登場して来た、DSLR機と同等の大判センサーを搭載した、新しいコンセプトのビデオ(ムービー)カメラは、2010年後半の注目として期待されている。こちらも4月のNABでコンセプト発表、そしてInterBEE時期には実機や明確な製品発表など、非常に具体的になってきた。大判センサーとスチルレンズの交換による被写界深度の浅い、表情のあるクリアな画像はDSLRムービーの根本的な魅力だが、そこに無かった長時間撮影、バッテリー持続、ムービーライクな周辺機器などが組合わさった、新たな魅力のカメラとして来年は大きく需要を伸ばしていく気配が濃厚だ。ただし問題なのはその価格帯で、フィルムカメラやデジタルシネマカメラの価格よりも遥かに安いDSLRの価格帯は、まだまだこれらのカメラよりも安く、DSLRの使い勝手も徐々にブラッシュアップされていることからも、さらりと差し変わるとは思えず、来年のこれらの攻防戦にも良い意味で注目したい所だ。

放送業界を中心に引き続きファイルベース化の波は、ある意味で製品的にもこなれて来た感がある。とくにプロ機材におけるAVCHDの台頭は業務用などのミドルレンジ以下のファイルベースソリューションを大きく牽引した。パナソニックのAVCCAM、ソニーのXDCAM EXシリーズの充実などもファイルベースワークフローの汎用化を促進、またAJA KiPro mini、ATOMOS NINJAなどの編集コーデックで収録するファイルベースレコーダーなども今後大いに現場でも活用されていくだろう。

またノンリニア系に関しては今後編集、合成、カラーコレクション、そしてサウンドまでを複合統一処理できる、Suite製品によるワンデスクトップ化が浸透して来た。今後はポストプロダクションもこうした流れを無視出来ない状況もあり、個人のオペレート・リテラシー、もしくはカルチャーをそれぞれのメーカーがどう育めるのかによって、その普及度合いも変わってくると予想される。その辺の動きにも注目してみたい。

さて迎えるところの2011年、映像業界に何が起こるのか?大きな流れが見えている部分もあり、また予想を良い意味で裏切ってくれる凄いものが出てくる予感もある。すでに楽しみな2011年のプロフェッショナル映像制作の世界が待ち遠しい。

PRONEWS 編集部