レンズ/その表現力の可能性
レンズとその周辺事情について色々と書いて来たが、レンズそのものの質もさることながら、それを映し出すセンサーとの関係性(相性や後処理のワークフロー)が最も重要な点であることは変わらない。ただし多くのカメラがレンズ交換できるようになったことで、レンズそのものの”味”を、その後のデジタルテクノロジーを駆使して、どう演出できるかという、非常にクリエイティブかつテクニカルな部分がさらに重要になってきていることも判った。
今後の指向性として、ビデオの世界でもセンサーの大型化は当然の方向性のようだが、さらに民生用でも大判センサーを搭載したカメラが多く登場してくるだろう。またCP+で見たオリンパスの最新コンパクトデジカメ「XZ-1」のように、F1.8 I.ZUIKO DIGITAL LENSを搭載するという”レンズの味”を強調した完成度を狙って、あえてベストマッチングといえる1000万画素程度にセンサーの画素を落としているといった、”粋な”カメラも登場して来た。
このようにレンズは一長一短では語る事は不可能だが、もう一つ見えて来た点として、やはりフルデジタル&ファイルベースという技術基盤を前提としている現代においては、そのワークフローは無視できない。
とりわけ映画の世界では、たとえレンズとセンサーが良くても、今は撮影〜上映/配信までのトータルなテクニカル・フローをちゃんと設計できなければ良い作品には仕上がらない。それはフィルムで撮影しても同じ事で、DIやフィルムレコーディングなどのデジタルワークフローを挟んでしまえば同じ事が言えるだろう。現にフィルムで撮影されていても、その後処理で残念な結果に終わっている作品も多く見受けられる。
現場に取り入れられる”ニューセンセーション”カメラ群
テレビの世界もDSLRムービーがいくらか台頭してきている。特にCMやミュージッククリップではEOS 5D markⅡで撮影された素材が目立つようになってきた。また目が肥えてくると7Dで撮ったのか、5DmarkⅡで撮ったのかも判別できる。さらに今後はPMW-F3などの大判センサーカメラの普及によって、さらにこうしたワークフローが台頭してくると予想される。
今年も4月11日から開催されるNABショー(全米国際放送映像機器展)では、こうした”ニューセンセーション”カメラの新たな機材、周辺機器、そしてレンズ群なども数多く出展されると思われるので、どんな展示がされるのか?今年はさらに期待が大きい。
“EOS 5D markⅡ革命” を牽引してきたキヤノンも、ビデオ機材でXF105/100、XA10といった実用的な小型カメラが発売され、今後スチルとともにビデオ映像の世界でも頂点を目指すことを企業トップが公言しているところからも今後も展開が非常に楽しみだ。
さらに気になるEOS MOVIE関連機器の新たな展開も大きく期待される。ソニーはPMW-F3の本格発売とともにおそらくNABで出てくるであろうPLマウントのズームレンズ、そしてRGB&S-log出力オプションや、SRメモリーカードとF3に装着が予定されているSRメモリーのポータブルレコーダーなどにも期待したい。パナソニックはマイクロ・フォーサーズの仕様拡大でどこまで市場が広がるか、ビクターはFALCONBRIDセンサーによる新たな業務用のハイブリッド4K/2Kソリューションが期待される。
そしてRED Digital Cinema社が2008年以来のNAB本会場での出展を表明しており、”EPIC”そして”SCARLET”関連の本格展示も行われるかもしれない。REDの提唱するハイブリッド・プロフェッショナルカメラのコンセプトは、周辺の機器産業も盛り上げている点でも、今回の出展にも非常に多くの期待が寄せられている。
しかし毎年行ってみないと何が飛び出してくるか判らないのが、NABショーの醍醐味でもある。興味のある方で行ける余裕の方はぜひとも会場に足を運ばれることをお勧めする。もちろんPRONEWSでも、レポーター各人が全力投球のレポートを予定しているのでぜひ期待して頂きたい。