どこへ向かうのか?カメラの存在
DSLRムービーの台頭から約3年。そして昨年末からの新たな潮流であるマイクロフォーサーズサイズの大判センサーカメラ、パナソニック”AG-AF105″や、この2月に出荷開始されたソニーのスーパー35mmサイズCMOSセンサーを搭載した “PMW−F3″、さらにはREDのニューフラッグシップ”EPIC”などに代表される”ハイブリッド・プロフェッショナルカメラ”といった、いわゆる新感覚のムービーカメラたちの出現によって、この数年でプロ映像に携わるカメラユーザー側の意識も、少しずつ変化しているようだ。
これまでのテレビコンテンツをマストとするプロフェッショナル・ビデオカメラ的な映像表現を、従来からの『ビデオカメラ』的とすれば、より映像コンテンツがよりパーソナルになった。個々の表現力や映像力部分を追求するカメラが求められている事は言うまでもない。これを『ムービーカメラ』と定義するならば、いま明らかに市場が求めているのは、『ビデオカメラ』ではなく『ムービーカメラ』なのである。
では、『ムービーカメラ』は本当に身近になったのか?本格的なムービーをどこまでにするかは別として、ハッキリ言うならば、これまでは持てなかった表現力が、簡単に手に入ることになる。
まさにキヤノンの”EOS 5D markⅡ革命”とも言えるDSLRムービーの市場制覇は、動画撮影できるカメラに対する感覚を変えたのはご存知の通り。
それによって「ユーザー」=「市場の目」はどこに向いたのか?その表現力、映像力を具現化するために一番重要なのは”レンズ”である。そしてカメラという道具の根幹をなすのもまた”レンズ”だ。
特にDSLRにおける元々の交換レンズの汎用性をそのままムービー撮影にも転用出来るようになったことで、レンズの種類、マウント、そしてそのレンズの特性であるキレや味といった感覚が再認識されるとともに、その個々のレンズが持つ魅力に、カメラマン以外の人までが、近年ますます注目するようになった。
さあ、レンズの魅惑の世界へ
レンズの魅力がすなわち写真/映像そのものの魅力に直結することを日常肌身で感じている。しかも誰もが簡単に…。表現手法にしても、ただ被写界深度が浅い(ボケ味のある)画だけではない、例えばアオリやシフトなどの特殊なレンズ選択によって、様々な表現を手に入れることが容易くできるようになった。すでに巷の中古レンズショップでは、マイクロフォーサーズを始めとする中古レンズ市場が盛況で、古い味わいのあるレンズなどは、入手困難になってきているものもあるという。
ニューセンセーションなカメラたちの登場と、さらに多彩な表現力と多種多様なレンズが使用出来ることで、カメラのニーズがカメラマン、もしくは撮影部という固定されたエリアの人たちだけのものから、映像クリエイター全般に大きく広がったことは、出来上がってくる作品の質に深く関わってくる。
アナログからデジタル、テープからファイルベースと、カメラが利便性の部分での進化を一通り終えて、ムービーカメラがカメラ本来の表現力の追求という”視点”を取り戻したことは、全ての映像制作者にとって、更なる表現進化の可能性がまた大きく拡がったことを意味するのではないか?
この特集では、カメラメーカー、各種レンズメーカー、そしてレンズ周辺の業界関係者にその最新事情を取材、また表現者たちの最新機材での挑戦を追う。またレンズ周辺に関わる最新情報もレポート。2月9日〜12日にパシフィコ横浜で開催された、カメラと写真映像の情報発信イベント『CP+』における取材を通じて、2011年のプロ映像界におけるレンズの世界を少しだけ覗いてみたい。