CES2012をスニークレビューするCES Unveiled開催

1月8日(米国現地時間)には、プレス向けプレスカンファレンスに引き続き、出展社主催の招待制カンファレンスやスニークプレビューを兼ねた展示であるCES Unveiledが行われた。CESで発表されるいくつかのUnveiled(ベールをはがしていく)されるスニークレビューの日となる。今年のテーマを見て計るにも絶好の機会なのである。

展示会前にこの地を訪問するのは、カンファレンス参加者とプレス記者のみである。しかし今年は昨年より、人の姿が明らかに多い。視界に入る限りでも様々な国籍の様々な人が大挙して押しかけ、製品の写真を撮影するのも一苦労だ。Unveiledでお目見えしたほんの一部の製品から編集部が気になるモノを取り上げ、今年のテーマSMART TV再編と、もう一つ取り上げたい「ユーザーインターフェースの進化」を再確認してみようとCES Unveiledに臨んだ。

会場に足を踏み入れようと思っても、プレスカンファレンスに出席していると既に行列に並ぶのに出遅れてしまう。16時スタートでほぼ一時間かけて入場。まさしく濃縮還元の名の下にCESイベントの洗礼をうける。しかし本番はさらに過酷だ。ここには収まらないプロダクトやサービスのお披露目が10日(現地時間)よりラスベガスの展示会場をほぼすべて使用してはじまる…。Unveiledの会場となっているThe Venetianホテルのコンベンションホールはかなり大きい。展示ブースとその関係者の分を差し引いても300人の入場も余裕なはずなのに、皆プレスバックを背負い、ある人は一眼レフを持ち写真を撮り、ある人はコンデジで動画を撮り、妙齢の男性は杖をつきながらブースに突撃してUstream中継を行うなど…。ブースとその製品をカメラに収めようと大勢の人間が我先にと殺到するため身動きもままならないほど。情報を発信するという手法に貪欲な人たちが多く見られた。ここからメディアのインターフェースも変わっていくのだろう。

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左は展示会でよく見かけるStreaming George。右はガジェット系Webマガジン編集者

ただ人が多過ぎたためにほとんどベールは明らかにされなかった…となると明日からの展示会場はどうなるのか考えると末恐ろしい…。そんな中からも注目度が高いモノから紹介しよう。

3M Multi-touch(3M)
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3Mは昨年のCES 2011 Unveiledで静電容量方式タッチパネルの新製品を発表した。この時の特徴は、「60点の接点(多入力)を検知でき、反応も高速であること」

そして、さらに今年のCES 2012 Unveiledでその新製品M1866PW(18.5″)ならびにDisplay M2167PW(21.5″)を発表した。従来製品比で、「双方向表示が可能であり、20の接点を同時に検知でき、その反応スピードが6秒かからないこと」と大幅に向上した。実際にタッチパネルを操作すると、大画面に浮かぶ画像をタッチし、スワイプや回転などの動作がスタックすることなくスムーズに動く様はとても直感的でストレスがない。

The QOOQ tablet(QOOP)
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キッチン・ホームユースに特化した独自のWi-Fi対応タブレット。キッチンとホームユースに用途を制限していることで、独自のユーザーインターフェースとアプリを有する。ブラウザー・各種SNSへのアクセスや投稿が可能で、MP3プレイヤー機能・USB・SDカードスロットなどの他、天気やノートアプリがプリインストールされている。

フランスの会社の製品ということもあり、タブレット本体のデザイン性の高さが光った。今後はなんでもできるタブレットから、誰でも使えるような機能を制限した独自デバイスが増えてくるのかもしれない。

AR.Drone2.0 (Parrot)

一昨年のCES2010で一番人気だったガジェットがParrot AR.Droneクアッドリコプター(4翼ヘリコプター)。その新しいバージョンが早速AR.Drone 2.0として登場。PRONEWS的に注目は、やはり搭載されたカメラが720p HDに変更されたことだろうか。GoProを始め小型カメラによるエクストリーム撮影が流行している中、手軽に空中撮影ができる可能性は興味を引く。

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また3軸加速度センサーに加えて新たに圧力センサーが搭載され、操縦時の安定性がアップ。オートパイロット撮影モードもあるという。AR.Drone 2.0は2012年の夏頃から販売される予定。価格は299ドルだという。

Wi-Spi INTER ACTIVE TOY
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ParrotのAR.Drone 2.0のように、iPhone・Androidに対応し、独自のアプリでオモチャに搭載したカメラを見ながらリモコン操作を行うというインターフェースは、今後かなり増えるだろう。これもその一つである。ヘリコプターや車のオモチャを操作できるものだ。その動画は音声付きで保存が可能で、Facebook・YouTubeに投稿が可能。今年秋に発売予定で、ヘリコプタータイプ(Wi-Spi HELICOPER)が$119.99、レーシングカータイプが$99.99と比較的に手に入れやすい。

nest(Nest Labs)

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アップル社で長年デザイナーを努めていたTony Fadell氏がCEOであるNest Labsが手がけるサーモスタットで「冷暖房界のiPod」と呼ばれている。昨年秋からそのデザイン性の高さ・性能面・機器内部にまで至る様式美が話題となり、年内に第一弾の製造分が売り切れとなるなど大ヒットしている製品だ。Wi-Fi対応でスマートフォンや各種タブレット、パソコンなどからインターネット経由でその家庭に適切な温度管理が可能だ。継続利用していくとそのデータが蓄積され、利用者の生活スタイルに合った室温を学習してくれる。現在、自分がどの程度節電に成功しているかもわかるようになっており、昨今の環境保全ブームへの対応をさりげなく行なっている。

Nest Labs以外にも、いくつか「生活」や「健康」に関する製品やサービスの出展社が登場していた。テクノロジーで生活を向上させ健康を増進させることは、医療の専門分野からその医療を受ける対象者である個々人に近づき使用できるようになるだろうと想像させる展示会だった。

総括

全体的な印象として、入力・出力どちらのデバイスもスマートフォンやタブレットに特化したものが多いと感じた。Appleが出展していなくても、iPadやiPhoneの事が注目されるのは、デバイスの秀逸さよりも人間の生理にあったインターフェースを我々が学んでしまった事にあるのかもしれない。また、健康に関わるサービスや製品、それをライフログとして記録・管理するモノや、昨今の潮流を考慮したエコに関する製品が多かった。既に家電という世界は、人により近く、パーソナル化し、インターネットがそのデバイスと人をつなぐ役目を果たし、インターフェースをシンプルに・軽快にすることで高機能であっても個人が十分活用できるほどに成長してきたのではないだろうか。まさにもうひとつテーマ「インターフェース再考」と定義付けられた年にふさわしいUnveiledだった。


Vol.00 [CES2012] Vol.02

取材協力:Ai YAMAMOTO、Kumiko KITAMUARA、Yasuhito NAKAE,