txt:安藤 幸央 構成:編集部
興味を引くモノ作りを感じる今年の潮流と展示
CESの主催団体であるCEA(全米家電協会)の会長Gary Shapiro氏が、「Ninja Innovation」という家電業界での成功事例をまとめた本を出版した。イノベーション(革新)の大切さとともに、忍者的な要素である、
- 少数精鋭
- 限られたリソースと困難な使命
- 厳しい訓練のもとで身につけたスキルが大切だと
これらを説いている本とのこと。いささか「Ninja」に期待しすぎかもしれないが忍者像を知る人にとっては現代のNinjaの姿が想像でき、あながち間違ってはいない気もする。
今回のCES 2013で強く感じたのは、小さな企業の登場と躍進、スマートフォンの周辺機器やヘルスケアグッズなどのハードウェアを手がけるハードウェアベンチャーの増加。三次元プリンターを始めとする「作るための道具」や木の質感やファブリックを家電製品に生かすなどモノ作りへの回帰が多く見られた。また、米国で躍進中のクラウドファウンディングKickstarterで資金調達に成功し、プロジェクト進行中のいくつかの製品がCESで展示したり、重要な発表があったりと、今までには無かった新しい動きが確実に見られるようになってきた。
クラウドファウンディングは投資家ではなく、一般の消費者達に少額の資金援助をつのり、目標額に到達したらプロジェクトを開始できる資金調達の仕組み。Kickstarterの場合、開発資金を調達するだけでなく、応援者を集め、事前に製品の購入額を支払ってもらえるため、プロジェクトにとって大きな支援になる。2012年のKickstarterは総額約3億2,000万ドルの資金を集め、前年比221%増の躍進とのことだ。ただし、なんらかの理由で実際の製品が完成できなかったり、当初の予定より品質が低かったり、出荷が遅れる、または製品が他社の特許に抵触するなどといったリスクも心配されている。
もちろん大手家電メーカーも、立ち位置をはっきりとし、大手にしかできない、本当の意味での高品質なコンシューマー向けの新製品群を発表してきている。今後、ネット企業と家電メーカー、ネットも家電も得意とする企業内の横のつながり、家電ベンチャーと大手ネット企業など、さまざまなつながりとコラボレーションによってより良い製品やサービスの躍進が感じられたのが今年のCESであった。
メイン会場展示から目を引くガジェットたち
Canon PowerShot N : 上下の無い真四角なカメラ
液晶パネルを開いてスタンド状態にした例
CESで数多くのデジタルカメラの新製品が発表されるなか、特に会場の話題をさらっていたのが、デジタルカメラから「上下左右」という概念を取り払った新しいタイプのデジタルカメラPowerShot Nだ。カメラの背面全体がマルチタッチ可能な液晶パネルになっている。液晶パネルは90度まで開くことができる。パネルを開いた状態でそのままスタンドとしても機能する。最近のデジタルカメラは、タッチパネル液晶化し、通常のカメラシャッターだけでなく、液晶画面をタップすることでシャッターを切ることができる機種も数多い。
PowerShot Nでは、ほぼ全ての操作が液晶画面に集約されている。さらにシャッターは、人差し指で押し込むシャッターボタンが無く、液晶画面を触るオートフォーカスシャッターか、レンズ根元のシャッターリングを押し込むことでシャッターが切られるのだ。無線LAN機能も内蔵。カメラを撮影する時の姿勢や撮影スタイルそのものを変える可能性のある意欲的なカメラだ。スマートフォンの登場で、お株が奪われつつあるデジタルカメラに新しい領域を開くのかもしれない。
Condition ONE:パノラマ動画アプリ
http://www.conditionone.com/CEO Danfung Dennis氏による紹介ビデオ。
Condition ONEは魚眼レンズで撮影した動画映像を、iPad、iPhoneでインタラクティブにパノラミックに再生することのできるアプリ。iPad/iPhoneの傾きセンサーの動きにあわせて、まるで窓を除いているかのように再生できるのが心地よい。特定のパノラマカメラに依存せず、撮影機器によらず利用できるのが特徴。余談だが、明らかにCES会場で、慌てて撮ったかのように見えるCEOのアプリ紹介ビデオが妙にカッコいい。CPOとしてインタラクティブデザイナーTakaaki Okada氏が活躍するプロジェクトだ。Condition ONEの機能だけを聞くと、旧来からあったパノラマ写真、パノラマ映像と同じではないかと思われるかもしれないが、Condition ONEを実際に見た後では、未来のスマートフォンの動画映像は、定点で四角く切り取られたものではなく、ライブ感の有るパノラマ映像なのではないかと、強く予感させるものであった。
Improv Boogie Board : 電子黒板
http://www.improvelectronics.com/us/en/Boogie Boardに描いた画像をパソコン画面と比較している様子。
変にデジタルな機能を持たない潔い電子黒板として登場したBoogie Boardも、市場のニーズに押されて、様々な機能を搭載したバージョンをリリースしてきた。今回展示されているBoogie Board SYNC は Bluetooth経由でパソコンにリアルタイムで画像転送し、描いた画像をメール転送したり、データ記録クラウドサービスEvernoteなどに保存できるようになった。要望の高かった、SDカードスロットやmini USBポートを搭載している。また、小型のBoogie Board JOT 4.5インチサイズも様々な現場で、ほぼ無限に使えるメモとして重宝しそうだ。
GoPro:アクションカメラ
http://gopro.com数多くの放送局でも使われているGoPro、形は無骨に見えるかもしれないが、信頼性は抜群。今回GoPro HERO3が発売されたばかりで、ブース内も、実際にGoProを利用しているファンで盛況であった。ロケーションもIntelの横という好ロケーション。他社からも似たようなライブビデオカメラが続々と登場する中、性能アピールではなく、GoProがどのような状況化で活躍することができるのか、利用例を大きくアピールした展示が印象的であった。そのため、本体のアタッチメントや、水中写真のためのハウジングなど周辺の撮影機器とともに展示されており、様々な質問が飛び交っていた。
人気デジタルガジェットのプレゼンと投票:Last Gadgat Standing
会期中超満員で長蛇の列でしられるガジェット対決セッションLast Gadget Standingが1月10日に開催された。今年はLenovoが後援。事前に候補のガジェットがWebで公開され、そのうち投票により10個のデジタルガジェットが短時間でプレゼンテーションされる。それらは最後に会場の拍手の音の大きさで、勝敗が決まる。また発表の隙間にトリビアクイズが出題され、各メーカー提供のデジタルグッズがプレゼントされていた。優勝者は、発表の演出も凝っていた、Lenovo の IdeaCentre Horizonという27インチのパソコンとしても使えるタブレット端末であった。
Luminae Keyboard+ キー配置自由な光るキーボード
http://www.translusense.com/Luminae Keyboard+ の左部分に地球儀付きのキーボード設定
Luminae Keyboard+ は全面タッチパネルの、暗闇で光るキーボード。キー配置は透明シートに描かれたものを貼付けているだけなので、自由に変更が可能。例えばビデオ編集用の専用ダイアル付きのキーボードに変更したり、ライブ放送用に、必要なキーだけを配置した専用キーボードを用意したりすることができる。また、キーボードの上でスワイプやピンチイン/アウトといったタッチパネル風の操作も可能。Luminae Keyboard+ の上に貼って使う、キーボードデザインを提供するオンラインサービスを予定しているそうだ。
Looxcie HD Explore取り付け自由なHDライブカメラ
http://www.looxcie.com/products-page/cameras/looxcie-hd-explore/Looxcie HDで転送された、会場の動画
Looxcie HD Exploreは、主に頭に装着して、見ているものを撮影し、WiFi経由で1080p動画を無線転送するデバイス。製品がバージョンアップし、HD解像度に対応した。ただしFacebookへのライブキャスト時には低画質の設定となる。暗いところでの撮影性能が改善され、低照度用カメラセンサーが使われている。基本的にはスマートフォンと組み合わせて利用し、ネットカメラとして利用したり、ライフログとしてひたすら撮り貯めるためにMicroSDHCを利用することもできる。
CES会場の方は、最終日を迎えたが、まだまだ御伝えしたい事は多くある。次のレポートでは日本の家電ベンチャーや、日本発のプロジェクトなどについて報告する予定だ。
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