txt:安藤幸央 構成:編集部

大きく変わる会場構成、これがすべてを物語る

185万平方フィート(約17万平方メートル)と巨大な展示会場を持つCESだが、昨年と会場構成が大きく異なり戸惑う参加者も多いようだ。まさにカオスな状態。特にCES 2010から始まったiPod/iPhone/iPadグッズ、周辺機器を集めたiLounge会場は大幅に拡大した。特にiPhoneケースや、モバイルバッテリー、モバイルスピーカー、ヘッドフォンなどの分野が大きく広がってきていることが分かり「これ、誰が使うの?」といったニッチな商品も展示されている。

CESへの参加が例年お決まりとなっていたMicrosoftの今年の参加は無かったが、パナソニックのキーノートスピーチに飛び入り風にMicrosoftのスティーブバルマーが登場し、会場を沸かせていた。

開催前日キーノートから

Microsoft スティーブ・バルマー氏と。Windows Phoneのカスタマイズ性をアピール

開催日前日のキーノートは、クアルコムCEOのDr. Paul E. Jacobs氏。クアルコムは、数多くのスマートフォンの心臓部であるCPUや通信チップを提供している企業として知られる。発表のキーワードは「BORN MOBILE」。デジタルネイティブな世代はもとより、それ以外の世代も、モバイルの活用で皆が色々なことが出来るようになるというコンセプトだ。

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NASCARレース中の DRIVE TRACKER での表示。レーサーの様子が分かる

また、NASCAR(米国で人気の市販車を改造した車のレース)の著名レーサーBrad Keselowski氏が登壇し、タブレット端末や、スマートTVのおかげでレース中の通信など臨場感のある情報を伝えることができる。よりファンとの距離が近くなることを期待するといった話がされた。

開催初日Keynote-基調講演から

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開催初日、朝のキーノートはPanasonic社長の津賀一宏氏。津賀一宏氏は数百の特許登録のあるエンジニア出身の社長であり、エンジニアのこだわりや、エンジニアは世の中を良くしたいと常々思っているという話から始まった。顔認識でパーソナライズされた画面に変化するテレビの紹介から製品紹介が始まったが、Panasonicはテレビだけの企業ではないとのことで、車やオフィス、航空、エネルギーなどでも活躍している様子が紹介された。ビジネス向けとして20インチ 4K解像度のWindows8タブレット端末も紹介された。最後に、創業者である松下幸之助のDNAは変わらないとのコメントで締めくくられた。

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パナソニック社長本人の顔を認識し、パーソナライズされたゴルフ関連情報を中心としたテレビ画面が表れた様子

The Next Generation of Innovators Keynote

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The Next Generation of Innovators Keynoteは若手企業家を集めた、パネルセッション形式の中規模のキーノート。どの登壇者も、自身の体験にもとづいたアイデアや、不便な事柄をサービスにし、会社の形にした起業家ばかりだ。

「コンピュータで、サービスを作ること自体はそれほど難しくなかったが、それを継続的に提供しつづけられる会社にすることが一番大変だった。今でもやっているところ」(Bump Technologies CEOのDavid Lieb氏。Bumpはスマートフォン同士を軽くぶつけることで、GPS位置情報から電話番号やSNS情報を交換できるアプリ)

Webやモバイルで病院を探すことができるサービス ZocDocは、CEO自身が旅先で鼓膜が破損して、病院を探すのに大変困った体験から、サービスを立ち上げたそう。現在はモバイルに対応したおかげで、ベッドから起きられない人など、さらに多くの人々に感謝されているとのことだ。

ソーシャルメディアに最適化されたWebブラウザを提供するRockmelt CEOは、自身がSNSを使う時に不便だと感じたこと、ブラウザは登場以来、あまり変化していないことを考えたことがRockmeltを作るきっかけになったそう。

各企業家とも、自分が不便だと思っていることを、本人にしかできない手法や方法で事業化し、色々な困難を乗り越えながら、少しづつではあるが、より良い世界を構築してきている。どの起業家も「いろいろ大変だけれども、これが自分の仕事なんだ」という心意気が感じられる発表であった。

未来を作るEureka Parkでの驚きの展示

Eureka Parkは昨年から始まった新しい試みで、それぞれが狭い簡易的なブースながらも、駆け出しのスタートアップや、新製品のデモ、アイデアが光るユニークなサービスや製品などであふれる展示コーナーだ。全体の中でもCESがイノベーションを支援/応援してくれているのが強く感じられるコーナーだ(Eureka:エウレカ / ユリイカとは、アルキメデスがアルキメデスの原理を発見した際、叫んだとされる「見つけた!」という意味の言葉)。

mauz (Spicebox LLC) : iPhone がマウスになる小型デバイス
http://spicebox.it/?page_id=108

mauzは、iPhone のDockポートに取り付けて、iPhoneそのものをマウスの代用として使ってしまう、ハード+アプリの仕組み。

Almond+ (Securifi) : タッチスクリーンルーター
http://www.securifi.com/almond
Almond+ のホームルーター

タッチスクリーンを搭載した無線ネットワークルーター。ネット経由でなくとも本体そのもので設定でき、状態管理を画面で見ることができるのが便利な点。日本販売も予定されているそう。

PowerCube (Allocacoc) : キューブ型コンセント
http://www.allocacoc.com

PowerCubeは複数のコンセントの口を手軽に増設できる商品。100V電源だけでなく、イギリスなどで使われている220V用の端子や、USB充電用の端子のキューブ、壁や机に固定するための機器もあるようだ。Allocacocはオランダの会社とのこと。

VK-1 Headphones:ミニマルデザインのヘッドフォン
http://www.aedle.net CES2013_04_CIMG3749.JPG

VK-1は、ハイエンドのオーディオアクセサリーを扱うフランスのaedle社の新製品。来月世界発売予定で、フランスからの送付になるが、日本からも購入可能とのこと。現在、出荷までの80%の行程を終了しており、現在の状況をホームページでもお知らせしてくれている。限定版のカーボンバージョンも用意しているとのこと。

VT Technology : iPhone用赤外線リモコン
あらかじめ登録しておいたリモコンにより、一眼レフカメラのリモコンシャッターをきっている様子

iPhoneで利用することのできる赤外線リモコンデバイス。主要メーカーの機器はデータベースに登録してあるものをダウンロードして使い、登録の無いものは、実際のリモコンで一度リモコン信号を覚え込ませてから使うそうだ。

大きく変わる周辺機器やインターフェース

Apple の製品はiPodなど一部を除いて、白と黒といったシンプルな色合いしか無く、また形の同じ機種で統一されているため、ケースや周辺機器を専門で提供するサードパーティが大きく活躍する市場が出来ている。最近のLightningケーブルの登場で、混乱を巻き起こりつつも、いち早く対応することによって新たなビジネスチャンスを狙っているメーカーも多いようだ。

今年の大きな特徴としては、例年以上にヘルスケア関連グッズが対等してきていることだ。自身で健康管理しなければいけないニーズが広がってきていることも追い風となっている。またヘルスケアグッズのコントロールや操作にスマートフォンとの連携で活用されていることが多い。スマートフォンの普及で、NFCやBluetoothで連携するアプリを簡単に配布/販売/流通する道のりができたことも影響している。初日のキーノートではVerizonがヘルスケア、教育、サスティナビリティに関する賞金1000万ドルのコンテストを実施するとアナウンスした。ここ数年は、ヘルスケア分野が確実にビジネスになると見込まれているのだろう。

Verizonからの公式発表Verizon Powerful Answers Award for Innovative Solutions to Global Issues
Powerful Answers 公式サイト


Vol.02 [CES2013] Vol.04

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