今年のCESを総括する
CES公式のソーシャルメディアチーム、コマンドブース
2013 International CESがようやく終わった。プレス向けプレイベントも含めると、6日間にわたって開催された。さて、世界最大の家電見本市、CES 2013の全体を振り返ろう。今年は、過去最大規模と言われた昨年をさらに超えた 3300社の出展、15万人以上の参加者とのこと。特にMicrosoftやAppleなどの超大手が出展していない事を考えると、躍進の度合いが伺える。
特にCESでは、小さなブースやあまり知られていない製品でもCESで注目を浴びると、あっという間にFacebookやTwitterで口コミが広がる。CES公式のソーシャルメディアチームの活躍もあれば、大手ネットメディアも、数十人規模の体制で、レポート合戦が行われていた。
また、巨大なイベントを縦横無尽に見て回るのは困難を極める事柄であるが、今年のCES専用アプリでは目の前に見えるブース名を入力することで現在地を把握し、目的地までの道案内をするアプリによって迷わず、効率よくブースを巡ることができた。
CESでの栄枯盛衰
ここ数年は花形であったのに、今年は勢いが無かった製品カテゴリに、電子書籍端末と立体視テレビがある。もちろんどちらもそれなりの展示はあるのだが、一時期の脚光を浴びていた感じは無かった。電子書籍ビジネスは世界的にも全体としては伸びつつあるようなのだが、Amazon Kindle一人勝ちの様相である。その他わずかに Reader(SONY)、NOOK(Barnes&Noble) の端末と、すでに電子書籍業界の勢力図が構築されつつあるようだ。ただし今回の電子書籍端末系では一点、PowerTabが、複数の電子インク表示装置間で画像や文字をコピーでき、端末の端を折り曲げる動作でページめくりできる、未来の「紙」を予見させるデモンストレーションが話題となっていた。
今年特に躍進が目立った分野は以下のとおりだ。
- ヘルスケア関連グッズ。特に身につけてスマートフォンアプリと連携するもの
- UltraHDと呼ばれる 4Kテレビと4Kカメラ、収録/再生装置
- モバイルアプリ、スマートフォン周辺機器を含むエコシステム
- 車載用のデバイスとアプリ、IT系サービスの連携
また、さまざまなデバイス、サービスにおいてソーシャルネットワークを活用するのは当たり前のことで、目新しいことではなく、当然のこととして浸透していることが実感された。
日本から家電ベンチャーの活躍
大手の家電メーカーの不振が心配されるなかで、規模こそ比べ物にならないながらも、日本初の家電ベンチャーの活躍がみられ、元気づけられ、応援したいと思った日本からの参加者も多いのではないだろうか?
Cerevo
http://otto.cerevo.com/ja/社名からしてConsumer Electronics(家電)をRevolution(革新)する」でCerevoの新しい展示は、ネット経由で調光も可能な、リモートで電源コンセントをコントロールできる8ポートのスマート電源タップ [OTTO] の展示。その他にもデジタル一眼カメラをスマートフォンで利用するデバイスSmartTrigger、プロ向けのネット動画配信機器 LiveShell.PROが展示されていた。
enchantMOON
http://enchantmoon.comアラン・ケイのダイナブックや、プログラミングとデータの利用が同一環境で可能なMacintosh HyperCardを具現化したような、ペンによる手書きの反応が恐ろしく素早いタブレットデバイス。いわゆるAndroidタブレットや、iPadのようなボタン的なユーザインタフェースが無く、未来の紙はこんな様相なのだろうと思えるデバイスに見える。近い将来の子供達はこのようなデバイスで楽しみながら教育を受けるころが予感される、素晴らしいプロトタイプ製品であった。
Multi Screen UXコンペティション
http://itpro.nikkeibp.co.jp/msuc/SONYブースでは、Multi Screen UXコンペティションの関係ノミネート作品もお目見えした。Multi Screen UXコンペティションは、SONYがスポンサーで開催されている複数デバイスの複数画面を活用したサービスのコンペティション。スマートTVとスマートフォンアプリの組み合わせや、スマートフォンとタブレットの組み合わせなど、日本の開発者の勢いを世界に感じてもらえたことだろう。
ファウディオ Portable DJ (PDJ)
http://www.faudio.co.jp/information-6.html仙台発のベンチャーファウディオからは、iPodを2台つなげたようなDJ専用の音楽デバイスがCESで一般にお目見えした。
再確認:解放されるモノ作り〜MAKERの影響
会場で人気の3Dプリンタ Cubify、作品群
今回のCESでは、元WIRED誌編集長であり「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」の著者でもあるクリス・アンダーソンのセッションもあり家電、製造業における「もの作り」、特に小規模な個人レベルでの「モノ作り」にスポットが当たっていた。安価で個人でも購入可能な価格帯の3Dプリンタの登場や、少量でも製品が生産できたり、プロトタイプを平易に作ることができる風潮が注目を集めている。
個人が3Dプリンタでプロトタイプを簡単に作れるようになった一方、普段手にしているスマートフォンや、それらのケースなどが、どれだけ精度が高く、精密に製造されているのか、その技術力をまじまじと感じるようになったとの会場の声も多かった。
さらにジェスチャーインタフェースや、音声入力など、数年前であれば、SF映画でしか実現できていなかった事柄が、現在では製品に組み込まれ当然の技術として存在するようになった。研究所内での研究試作ではなく、家庭で使われるくらいに安価に精度が高くなっているのだ。
今年はCESで、会場のあちこちで耳に残る音楽があった。ちょうどCESの時期に、日本以外の世界的にヒットしている韓国PSYの「江南(ガンナム)スタイル」だ。デモ音楽に、プレゼンの音楽にそこここで使われていた。多くの人にとって、こんな状況は全く予想できなかったのではないだろうか?
来年は今年の傾向がさらに勢いづいていることが予想されるとともに、様々なものが高品質、高画質化し、さらに安価になっていく。少量多品種や、カスタムメイドの製品なども増えてくることだろう。世界最大規模で錯綜する情報や製品群を一まとめにする事は難しいが、いくつかのトレンドはお伝えできたかと思う。来年はまた、まったく予想できない新たなトレンドがやってくるのは、必至だ。期待しつつまた来年レポートを送りする予定だ。
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