毎年会期1日前に行われるプレスカンファレンスが今年もマンダレイ・ベイホテルで行われた。
昨年のCESで、事業内容の選択と集中・事業の基本重視を打ち出したSHARPとPanasonic、一線を画すように拡大路線を強気に発表したSAMSUNG。そして新たな製品を一堂にライナップしその自信に溢れるSony。あれから1年経ちどのような製品が新しく生まれ戦略はどう変わったのか、今年もPRONEWSは追いかけた。時系列に順を追って紹介していこう。
SHARP | 液晶事業への集中を発展段階へ前進
AQUOS新モデル4シリーズをラインナップ
オリジナル液晶ブランドIGZOは幅広い分野で導入されている
昨年CESの発表とともに打ち出した大胆な液晶事業集中の戦略がどのように功を奏したか、今年の発表にはよく現れていた。冒頭、シャープ・エレクトロニクス・コーポレーションの大澤敏志会長 兼 社長は「SHARPは2014年、事業拡大の年である」と力強くスピーチし、オリジナル液晶ブランドIGZOシリーズの導入例を示しながら「今後市場の需要はさらに大画面化し、高いクオリティを要求される。すなわち、SHARPにとって好機が訪れている」と結んだ。
2014年に発売するAQUOSは、AQUOS 4K・AQUOS Q+・AQUOS Q・AQUOS HDの4シリーズ
大澤氏よりバトンを受け継いだJim Sanduski SHARP ELECTRONICS MARKETING COMPANY OF AMERICA戦略的製品マーケティング分野担当シニアバイスプレジデントはさらに今後需要が伸びていく一つの答えであるとし、AQUOS Q+とAQUOS Qを発表した。
フルHD(画面左側)とQUATTRON+(画面右側)を比較表示した
AQUOS Q+とAQUOS QはAQUOS Quattron+パネルを採用し、価格が高くなりがちな4Kテレビよりも安価でなおかつ同等の4Kコンテンツが楽しめるモデルである。
サブピクセル数は1,600万だが、4K映像信号の表示機能と4Kへのアップスケーラーを搭載した結果、フルHDよりも高解像なスクリーンを実現した。AQUOS Q+・Q両シリーズは2014年2月より販売を開始。60型・70型の2タイプを用意する。
今まで購買に結びつかなかった層の取り込みを積極的に行い、今後のビジネス展開に弾みをつける狙いが強く伺えるカンファレンスであった。
Panasonic | 4K有機ELパネル・テレビ・カメラなど、4K対応を加速し、業績復調の機運を逃さない強気の戦略
4Kウェアラブルカメラや4K動画対応ミラーレス一眼なども出展
昨年の津賀社長のスピーチを受け、Joseph Taylor氏が語る今後の戦略とは
昨年のCESではエンジニア出身の津賀一宏氏がPanasonicの社長として「人」にフォーカスする方針と製品群を発表して様々な反応を生み出した。13年9月中間決算は純利益が1693億円、5年前の1284億円を上回り過去最高を記録した。2014年の新たな一手はどのようなものになるのか。
4K対応は、有機ELパネル・プロジェクター・業務用タブレット・監視カメラソリューションなど多岐にわたる
同社テレビの主力シリーズであるVIERAの新モデル発表を後ろ倒しにし、Panasonicの4K技術を様々な業種・ビジネスソリューションへ展開するコンセプト説明から製品発表はスタートした。改良を加えた4K画質を活用し、コンシューマー用の機器だけではなく、コンシューマー向け製品の開発で培った技術を発展させ、業務用ソリューションを企業に提供する戦略だ。「Panasonicは4K技術の業界におけるリーダーである」と力強く語り、その姿勢を明確にした。
4K対応ウェアラブルカメラ「HX-A100」。よりリアルな動画撮影が可能になる
コンシューマー向け製品も多数発表された。特に、現在開発中の4KウェアラブルカメラのHK-A100が筆者の興味をひいた。出力側・入力側共に4K対応してゆく流れの中で、小型・軽量であり、ハンズフリーの扱いやすいカメラのニーズはまだまだ伸びると考える。映像制作にも幅が広がりそうなこのデバイスはぜひ展示会場で手にとってみたい。
4K対応ミラーレス一眼レフカメラ「LUMIX GX7」他「LUMIX Gシリーズ」はカメラのミラーレス化を加速するか
一眼レフカメラが切り開いてきた高画質の世界は、ミラーレス一眼レフカメラの技術向上でさらに別の次元が見えてきた。昨年11月、Panasonicは2014年に発売するコンパクトデジタルカメラの新機種を2013年の2分の1とし、ミラーレス機の発売を強化すると発表。ミラーレスの4K対応も間近と予想していたが、やはりCESの展示にぶつけてきた。
アメリカ市場向けの4Kスマートテレビは「Life+ Screen」を搭載
VIERAのアメリカ市場向けモデルは、4KスマートテレビにLife+ Screenを搭載し、ボイスコントロール機能や個人の好みに応じて様々なコンテンツをシームレスにつなげて表示する機能などを搭載する。
昨年の復調を支えた自動車業界との連携も強化。車載エンターテインメント機器やフロントガラスに情報をポップアップ表示するヘッドアップディスプレイなどを紹介。市場が飽和しているコンシューマー向け製品との分散を図りたい姿勢が伺い知れた。
SAMSUNG | 湾曲型 UHD TVなど自信と実績に裏付けされたラインナップでプレスが湧いた
Ultra HD 4K テレビ「UHD TV」(Ultra High Definition)の他、昨年注目した2D・3D撮影可能なレンズ交換タイプデジタル一眼カメラの後継機「NX30」などを発表
全面180度以上のカーブした大型ディスプレイは圧倒的な存在感
年々席の争奪戦が激しさを増すSAMSUNGのカンファレンスは、昨年よりもさらに広い会場で開催され、詰めかけたプレス関係者は大いに湧いた。舞台上に設置されたディスプレイ横には「Discover The World of Possibilities」という同社の手綱を緩めない攻めの姿勢を感じるコンセプトワードが掲げられていた。
昨年12月CES開催前に事前発表をしたとおり、湾曲型の105型UHD TVを発表
毎年競争が激しいテレビ分野において意欲的な製品を発表し続けているSAMSUNGはHD解像度を超えるUHD規格のテレビでは世界初・最大・湾曲カーブも最大の「UHD TV CURVED」をお披露目した。画面を湾曲させることで、側面から画面を見つめた場合でも従来のフラット画面タイプと比べ約2倍の鮮明さが確保されるため、さらに大人数が同時に鮮明な画面で鑑賞が可能となる。また、画像処理エンジン「Quadmatic Picture Engine」を搭載し、解像度が異なる映像を一律UHD解像度へ変換し表示が可能となった。
スマートカメラ「NX30」・交換レンズ・Android4.4搭載の「Galaxy Camera 2」
昨年発表された3Dと2Dのスチールおよび動画撮影が1本のレンズで撮影できるレンズ交換タイプデジタル一眼カメラ「NX300」の後継機「NX30」は、1080/30pでHDMIから撮影中映像を出力できる。同時に発表した交換用NXレンズのプレミアムライン「Sシリーズ」は、オートフォーカスの速度や精度を向上した。また、NX30と同様にSamsung 45mm F1.8 2D/3Dレンズを使った3D撮影も可能。
残念だったのは、デビュー当時の昨年よりも劇的に本製品に関する発表の時間が短かったことだ。カメラの新しい可能性を切り拓く存在として、筆者は今後の動向に注目している。
畳み掛けるように広い分野にわたり新製品を一挙に発表
大きなステージを存分に活用し、デザイン性と機能性を更に高めたドラム式洗濯機や有名シェフ2名監修の元開発したオーブンレンジ・食洗機などの「Chef Collection」なども発表された。SAMSUNGのエネルギーを思う存分に感じられた時間であった。
SONY | 4Kを撮影からリビングまで網羅するソリューション。4Kをリーディングする自信漲るラインナップ
Lens to Linving 4K Experience
平井一夫CEOが登壇が冒頭に登壇。昨年は最後まで平井氏の進行によってプレスカンファレンスを終えたが、今年は、所感を手短に述べるとSony ElectronicsExecutive Vice PresidentであるMichael Fasulo氏に交代した。
「レンズからリビングまで、4Kエクスペリエンスをトータルに提供できる」とソニーが掲げる4Kの取り組みを語った。昨年9月にスタートした「Video Unlimited 4K」をはじめ、Netflixとの提携に言及。Netflix CEOのReed Hastings氏も登場した。
CES開催前にアナウンスされたGoogle開発した「VP9」を用いて4K動画を配信可能にする。今回発表された新BRAVIA「X9500Bシリーズ」は、HEVCだけでなくVP9の再生も行えるというから、YouTubeの4Kコンテンツも身近になるということだ。
デジタル4KビデオカメラレコーダーFDR-AX1に続き、小型のFDR-AX100が発表された。4Kを2Kドルで実現できるなど4K対応とは思えないほど小さな筐体は魅力的だ。有効約1420万画素CMOSイメージセンサー Exmor Rと新世代の画像処理エンジンBionz X、最大広角29mmのZEISS Tレンズ搭載。4K撮影でのフォーマットはXAVC Sを使用。残念ながら4K撮影は30p最高ビットレートは60Mbpsで60p撮影できない。いよいよ手頃な4Kハンディカムが登場する事によって標準化して行く事は言うまでもないだろう。
PRONEWSでは御馴染みのマウントレンズ交換対応NXCAMカムコーダーNEX-FS700Rも展示。インターフェースユニット「HXR-IFR5」とRAWレコーダー「AXS-R5」とバッテリーの組み合わせで4K/2K RAW記録を実現する。実にバランスの良い組み合わせだ。
最後は、ソニーモバイルの鈴木国正社長が登壇。「ウェアラブル・エンターテイメント」という新しいキーワードをコンセプトに、「スマートウェア」を展開すると発表。第1弾がリストバンド型の「スマートバンド」となる。その後は、絶好調のスマートフォンXperia Z1シリーズの発表となった。
密かに注目されているPS4についてはほとんど触れられなかったが、明日1月7日午前8時半(現地時間)のCES基調講演で平井氏が大きな発表をするのではないかと思われる。いずれにせよソニーの自信が感じられるカンファレンスであった事は言うまでもない。いよいよ明日から展示会が始まる。CES2014の会場からお伝えして行こうと思う。
txt:中村文子 / 猪蔵 構成:編集部