4Kの撮影機材は各カメラメーカーから数々の製品が発売されているが、HDも含め高速度撮影など特殊なジャンルに入る特殊なカメラも見逃せない。特に放送が開始されるとスポーツ中継で必要とされるスローモーションやCMなどで高速度撮影が必要となるほか、ドローンによる撮影システム、ステディカムに代表されるカメラスタビライザーなど様々な撮影シーンに対応すべく、従来から民生機の利用や計測器ジャンルのカメラなどを流用している。InterBEEではこうした背景から様々なシャンルの製品が紹介されている。
一方、地上波を中心としたHD以外にも新たに4K/8Kが出現したことにより、従来からあるベクトルスコープや波形モニター以外に色域を計測したり、IP伝送のための測定機器なども重要になってきた。こうした測定機器はまだ特殊とはいえHDRなどが一般化したり、IP伝送が普及するうえで欠かせない機材となっている。
今年から新設された特殊機材のコーナーは他のコーナーでは取り上げにくかったり、一般のビデオの範疇からはみ出そうな特殊なものを中心に取り上げてみたい。
RICOH THETA Sで撮影した360°全天球動画です。視点変更機能を利用するにはPC版Google ChromeブラウザおよびiOS/Android版YouTubeアプリが必要です。(アプリ起動はこちら)
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ケンコープロフェショナルイメージング / スリック / ケンコー・トキナー (ブース#6407) |
写真用品としてフィルターなどが有名だが、水滴がつかないTokina親水コートフィルターやAputure 7型LCDモニター、リングライトのAmaranHC-100なども必見といえる。また、Tokina Cinemaレンズも50-145T3や16-28などが加わりラインナップがそろってきた。照明機材はFLOLIGHTやdedolight、Camlight、IANIROといった海外製品が注目される。なお、フォーマット=ハイテック社を傘下にしたことで、写真用および映画用のハイエンドフィルターへと製品構成の幅が広がった。これによりNDやグラデーションフィルターなどシネスタイルで使われるフィルターのラインナップが広がっている。
GoProといえばスポーツカムのジャンルを切り開いた先駆者といえるが、単に撮影するカメラからWi-Fi対応や単体で防水仕様をクリアしたものなど様々なモデルがラインナップされている。すでに放送局のバラエティ番組などでは定番ともいえるカメラとなっているが、最近では球面+パノラマコンテンツ撮影用のアクセサリーが用意され、専用のキューブ型のリグに6台のGoProを取り付ける専用のソフトウェアで画面をシームレスにつなぐアクセサリーやVislinkと開発したHEROCast無線トランスミッターなどが用意され撮影領域を広げている。こうした展示会では製品そのものよりも実際にこうした機材で撮影された迫力のある映像が披露され一見の価値があるものとなっている。
ドローン撮影を身近にしたDJIは様々なモデルをラインナップしているが、マイクロフォーサーズ規格の賛同メーカーになり、カメラメーカーともなっている。ドローンで培ったジンバル部分をカメラサポートシステムとして製品化もされており、ちょっと特殊な撮影を行うための周辺機器メーカーとしての側面もある。デジタル一眼やビデオカメラを搭載できるジンバルRoninや専用カメラZenmuseと組合させて手持ち撮影でのスタビライザーやパノラマ撮影を可能とする小型手持ちジンバルカメラOsmo、4KマイクロフォーサーズカメラZenmuse X5を搭載したドローンInspire 1 Pro、HDカメラ搭載で10万を切るPhantom 3 Standardなどが新製品として注目される。
同社はスイッチャーなどの設備機材を中心に事業展開しているが、業界でいち早く4K対応の高速度カメラFT-ONEや、24コマ/秒から700コマ/秒まで撮影速度の変更が可能なHD対応バリアブルフレームレートカメラVFC-7000などを手がけ製品の幅を広げている。こうした中で注目したいのは照明が原因で発生したフリッカーをリアルタイムで補正するFC-ONEや、撮影時に発生した映像のブレをリアルタイムに補正可能なビデオスタビライザーIVS-200といった撮影に関わる特殊機材だ。デジタル化で一般的な製品は比較的どのメーカーでも作れるようになったが、業界に密着したこういう機材は貴重だと思う。また、センサーレスバーチャルスタジオシステムも4K対応になり、デモンストレーションは見逃せないだろう。
スポーツ中継に使われている高速度カメラより毎秒コマ数が遥かに高い高速度カメラPhantomシリーズを扱っている。毎秒1000コマ以上でHDや4Kに対応したモデルPhantom Flex4Kなどがある。こうしたカメラは水滴が落ちる瞬間とかCMや学術系の番組で使用されることが多く、ミュージックビデオなどでも演出の一つとして特徴的な効果として使われているが、実際の映像をブースで確認したい。また、かなり特殊になるが2色式熱画像カメラシステムThermeraがあり、このカメラは肉眼では見られない温度を可視化するカメラとなっている。
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ナックイメージテクノロジー / カールツァイス (ブース#3405) |
ARRIの代理店としてALEXAやAMIRAがブースでは目立つ存在となっているが、同社の高速度カメラを扱う歴史は長く、現在でも池上通信機と共同開発したHi-Motionなどはスポーツ番組などで多くの実績をあげているほか、1920×1080ピクセル時で12500コマ/秒撮影が可能なハイスピードカメラの新製品i-SPEED7シリーズや、視線や眼球運動を計測するEYEMARK RECORDERといったかなり特殊な機材もある。EYEMARK RECORDERは実写の画像にその人がどこを注視してみているかをオーバーレイして記録するもので、テレビ番組でも使われた実績がある。他にもARRI Anamorphic Ultra Wide ZoomやOptimo Anamorphicといったアナモフィックレンズにも注目したい。
波形モニターやベクトルスコープなど、ビデオ用測定器のメーカーとして親しまれているがベータカムの時代に積極的に参入した後発組だ。新製品として3G-SDIデュアルリンクまたはクワッドリンクと、HD-SDIクワッドリンクによる4K映像フォーマット(4096×2160、3840×2160)に対応したマルチ波形モニターLV 5490や、フィールドでの使用に便利なマルチSDIモニターLV 5333などが定番の測定器だ。マルチ波形モニターLV 5490はxy色度座標表示が表示できるようになっており、測定値が色度座標のどこにあるのか範囲を見ることができるようになっている。HDRなどを目指した場合使い易い機能だ。また、コンテンツ品質管理Hybrid QCはブロックノイズ、ラインノイズ、絵飛び、カット点異常、フリーズ/ブラックアウトおよび音声雑音、音切れ/音飛び、プチ音/ブツ音などを自動検出する測定器で放送事故につながるような致命的な障害を未然に防ぐ事が可能。こうした機能を実際の映像やデモで確認しておきたい。
4Kカメラをいち早く開発し、その後も8KカメラやHDビューファインダー、レコーダー、4K/8Kモニターなどビデオ映像のハイレゾに積極的だが、HDや4K/8Kが混在する中で必要となる8KクロスコンバータSC-8209-Aや放送バックアップ伝送システムCB-5542という地上デジタル放送で用いられる204byteのMPEG-2TSの帯域を圧縮しIP伝送する装置、8Kカラーグレーディング装置VP-8407、多チャンネルのMPEG-2TSをリアルタイムに監視するCW-5543などにも注目したい。
テレビ系の測定器としてWFM/WVR8000シリーズ波形モニターなどが定番だが、3Gbps SDIおよびデュアルリンクSDI対応のマスターシンクジェネレーターやファイルベースコンテンツの自動品質管理やMPEGアナライザーといったあまり馴染みのない測定器もある。ファイルベースでの制作が一般化し、異なるビットレートやフォーマットでさまざまな規格でエンコードされたファイルが混在した場合の品質管理システムやIPネットワークの障害解析システムSentry、RF、IP、MPEGモニター/診断ソリューションなどは放送局など大きなところでは必要な測定器だ。
写真用品を専門にする同社だが、デジタル一眼によるムービー撮影が一般化する過程でビデオ関係にも力を入れている。特に同社が代理店を務めるSteadicamはカメラスタビライザーの老舗であり、小型カメラ用から35mmシネマカメラ用まで様々なラインナップがある。またデジタル一眼用のスタビライザーFilmpowerや綺麗な商品撮影が手軽にできるライティングキットなど照明や背景紙、一脚など撮影に関わるアクセサリーにはこまらない。
※掲載しているブース写真は過去に開催されたイベントのものです。