txt:江口靖二 構成:編集部
いかに目を引くか?会場の演出からCESを考える
CESの見どころの一つとして、各社がどういったブース演出を行うかというのも毎年楽しみである。今年目立ったものを幾つか紹介しよう。透明なディスプレイにはLCDとOLED、そして透明なスクリーンにプロジェクターで投影するなどの方法がある。CESでは今年もこうしたものを実際の展示演出に利用した、ユニークな事例をいくつも見ることができた。
■SAMSUNG | 透明OLED
かなり完成度の高いクオリティになってきた
まず一つ目はサムスンの透明OLEDである。数年前から技術展示を行っていたが、今回は実際の演出に利用していた。非常に発色がよく、また透明度もかなり高い。特長は片方向からだけしか映像を見ることができないということだ。例えばお店のショーウインドウに設置した場合だと、店外の人には情報が見えるが、店内の人からは透明で、外の景色だけが見える、といったことが可能になる。これが価格的にも実用レベルになると、主に商業施設での映像による空間演出が飛躍的に使いやすく、効果的になるだろう。住宅内部においても今までにはない使い方が生まれてくるのではないだろうか。
■SAMSUNG | タイルディスプレイの展示演出
サムスンのタイルディスプレイの展示演出
サムスンのディスプレイの動きと連動したコンテンツ演出。こうした物理的な動きと営巣の組み合わせは人目を惹きやすい。ただ映像関係者が期待するほどには、一般の人はその実現のための難易度がわからないので、「ほおお」と思って立ち止まってはくれないことも多いので要注意だ。
■Panasonic | Smart Show Window
映像を表示した状態(左)と透明な状態(右)
同じような透明モノのもう一つは、パナソニックの「Smart Show Window」である。これはガラスとガラスの間に特殊なシートを挟み込んだもので、このシートに電圧をかけることで光を反射させて映像を表示させるものだ。これまでもこういったシートは存在していたが、透明度が低く、表示できる映像の不鮮明であったが、かなり改善されてきたといえよう。ただ前述の透明OLEDとの比較ではOLEDのほうが遥かにクリアで透明度も高い。
■Panasonic | 高速プロジェクションマッピング
パナソニック高速プロジェクションマッピング
パナソニックは高速プロジェクションマッピングをデモ。リアルタイムな動きに連動したプロジェクションである。
■LG | 縦型湾曲OLED
湾曲ディスプレイの進化版も登場した。LGブースにあった縦型湾曲OLEDである。写真のように縦長設置で、凹凸の両方を交互に組み合わせている。これの特長は裏表に異なるものを表示することが可能であること。間仕切りのような利用で、裏表の異なる情報を出すことができる。
■E-ink | 32インチで4面マルチ表示
最近話題から遠ざかりつつある電子ペーパーも健在だ。E-inkは32インチで4面マルチ表示のデモを行っていた。表現力ではディスプレイには到底及ばないが、低消費電力性や、電源が確保されなくなってもバッテリーで一定時間表示できるなどの特長を持っているので、緊急時の情報提供には有効になると思われる。実際に東京都港区では、緊急情報の表示のためのデジタルサイネージとして、電子ペーパーを採用している。
■Krush Technologies | Moveo
圧倒的だったのはKrush Technologiesの「Moveo」である。これは大型のロボットアームにコクピットを取り付けた、360度全方位回転型のゲーム用筐体である。ヘッドマウントディスプレイ(Oculus VR)を装着して体験する。これ自体、今までとは全く未体験の感覚を得ることができるものだ。ブース演出として天井全面に設置されたLEDディスプレイによる空間演出はかなりインパクトがあった。ディスプレイの多様化によって壁面だけではなく、こうした天井面や床面などにこれからも映像が使われていくのだろう。よく考えれば古代の建築の時代より、壁面、床面、天井面はそれぞれ利用されてきたのだから、ディスプレイが同じように利用されるのは当然のことなのである。
上下左右に360度動くMoveoの動き
■Suitable Technologies | MEGABEAM
Suitable Technologiesの「MEGABEAM」はディスプレイを装着して自走するロボットだ。ディスプレイにカメラとマイクとスピーカーがセットされており、その場にいる人とネットワーク経由で会話しながら自走することが可能。小型のものはこれまでにもあったが、これは高さが5.6メートルあり、思わず笑ってしまいそうになるが、ここまで大型のものは初めてだろう。イベント会場等、使い方によってはインパクトがあるかもしれない。
txt:江口靖二 構成:編集部