txt:西村真里子 / 編集部 構成:編集部

世界最大規模に開催されるCESの多様性

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今年50周年目を迎えたInternational CES(Consumer Electronics Show)。1月5日から8日(米国現地時間)の4日間、17万人規模の来場者が世界から集まる世界最大の国際家電見本市が、米国ラスベガスで開催されている。事前に1月3日(米国現地時間)よりプレス向けカンファレンスや招待制イベントが2日間に渡り行われた。一世代前の家電やテレビがCESの主役だった時代から、自動運転を始めとする自動車メーカーの最新技術や、VR/AR、音声入力などの台頭が目立つようになったのが今年のCESの特徴だった。映像に関しては目新しい発表はあまり見られなかったのが正直な所だ。

そんな中でもCPUやディスプレイの軽量化、安価化に伴い“身にまとえるデジタルサイネージ”プロダクトも多く目にするようになった。身にまとうウェアラブルデバイスとしてスマートウォッチが登場したのはいまから2、3年前のCESからだが、それは生体データを取ることを目的にしていた。今年目にしたウェアラブルデバイス達は、純粋にサイネージとしての価値を示していた。ここでは身にまとうサイネージと題していくつか紹介して行こう。その他今回の特集は以下の通りである。

POP-I E Inkディスプレイでマイサイネージを

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Eインクディスプレイを革製バックパックに編み込み、自分だけのオリジナルバッグを作れる「POP-I」はカリフォルニア、サンタモニカのスタートアップだ。HD 10インチ×4.7インチのE Inkディスプレイに自分のお気に入りの写真をスマホ上から選んで、バックパックに瞬時に反映できる。ユースケースとして話されたのは自分のペットの写真を入れたり、お気に入りの写真を入れたりしてEインクディスプレイに反映させると愛着の湧くバックパックが出来上がるという。私は猫を飼っているのだが、確かに愛猫の写真はいつでもどこでも自慢したいので、背中に写真を背負いながら多くの人に愛猫を褒めてもらえるという親バカスピリッツをくすぐられる。

そして「あなたの猫ちゃん、可愛いですね」と話すキッカケとなり、コミュニケーションが生まれるデバイスとも考えられる。そして本題であるデジタルサイネージ活用を考えると、自社のサービス、プロダクトを文字通り“背負い”ながら、人通りの多い界隈を歩くことにより宣伝につながる。ニューヨーク在住のデザイナーと組んでつくったファッショナブルなデジタルサイネージ「POP-I」は新たなサイネージの可能性を提示している。

VINCI“Connected”な生活の中心にヘッドフォンを!

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「“Connected”な生活の中心にヘッドフォンを!」と、Inspero Inc.「VINCI」の説明員は語る。このデバイスは、音声認識搭載、16GB容量、ノイズキャンセリング、ワイヤレス、人工知能、しかもスマホ不要のヘッドフォン型コンピューターでもある。音楽を聞きながら、雨が降り出しそうな場合には「傘の準備が必要だよ!」と話しかけられ、目的地に向かう電車が遅延している場合には「別ルートを紹介します」とナビゲーションしてくれたり。ヘッドフォン型であるからこそとてもスマートな“Connected”体験を提供してくれる。

スマートフォンが顔の横についているようイメージしてもらえるといいのだが、このデジタルサイネージ上から発信するメッセージは身近な人にはとてもインパクトがある。特に日本では満員電車の中でこのヘッドフォンからメッセージが流れたら思わず目に止めてしまうだろう。

COSMOヘルメット後頭部もサイネージに!?

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車のリアウィンドウにメッセージを出すデモンストレーションは1、2年前のCESで紹介されていたが、フランスのスタートアップが今年紹介していたのは、バイクのヘルメット用サイネージだ。COSMO社が提供するアタッチメントはヘルメットの後ろにつけるだけでいつブレーキを踏んだのか?わかるような仕組みになっている。もちろん安全面を優先するのが目的だが、いままで活用されてなかったヘルメット後頭部もサイネージとして利用できそうな可能性を感じる。

SAY WEAR 1.5インチOLEDディスプレイに自分のメッセージを

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最後に紹介するのは1.5インチOLEDディスプレイに自分のメッセージを詰め込めるイスラエルのスタートアップ「SAY WEAR」だ。ソーシャルメディア上だけの発言ではなく、リアルな空間でも自分の主張を伝えられるようにと開発したのがこのデバイスだ。ネット上の人格とリアルな人格を使い分けたい人もいるかもしれないが、どうしても伝えたいメッセージがある場合はスマホ経由でこのペンダント型ディスプレイに表示をすることができるものである。

上記で紹介したバックパック型、ヘッドフォン型、ヘルメット型に比べると、より身近な人に見てもらうためのメディアなので、この場所をサイネージとして使うことにより影響力は大きくなる。例えば、「SAY WEAR」を身につけた人との会話の中で、このディスプレイ上からおすすめのラーメン屋などが表示されていたらコミュニケーション終了後にその店に向かってしまうかもしれない。勉強会やイベントが多いこのご時世では、イベント告知がさり気なくされていたら認知拡大にもつながるだろう。

ウェアラブルデバイスは生体データの入力装置から、デジタルサイネージ利用へと活用幅を広げている。小型、安価なデバイスが多いので、無料バラマキ型にして情報一斉配信する広告モデルにするのも面白いかもしれない。かつての広告塔たる“サンドイッチマン”はデジタルデバイスをまとって蘇りそうである。

txt:西村真里子 / 編集部 構成:編集部


[CES2017] Vol.02

WRITER PROFILE

西村真里子

西村真里子

株式会社HEART CATCH代表取締役。“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。