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VistaVisionフォーマットのカバーをコンセプトに開発がスタート

Tokinaは、1950年設立の東京光器製作所から続く歴史ある光学機器のブランドだ。Tokinaといえば一眼レフカメラ用の広角ズームレンズが特に有名で、高性能かつリーズナブルな価格で高い評価を得ている。その光学設計技術のノウハウはデジタル一眼用レンズだけに留まらない。シネマレンズ業界でも、大型センサーサイズ対応で明るくブリージングのない「VISTA」の登場が話題になっている。ケンコープロフェショナルイメージングの小坂修司氏と福島義光氏に、新製品のシネマプライムレンズ「VISTA」シリーズについて話を聞いてみた。

ケンコープロフェショナルイメージングの小坂修司氏(左)と福島義光氏(右)

――自社グループ製や国内販売代理店として取り扱っているシネマレンズブランドの紹介をお願いします

小坂氏:メインは、自社グループ製品であるTokinaブランドのシネマレンズです。マイクロフォーサーズやEマウントのミラーレスカメラ用に設計された「Veydra」とサムヤンの「XEEN」は、国内販売代理店として取り扱いを行っています。

Tokinaの「CINEMA AT-X」シリーズには、「CINEMA AT-X 50-135mm T3」「CINEMA AT-X 16-28mm T3」「CINEMA AT-X 11-16mm T3」のズームレンズ、このほか100mmのシネマ撮影用マクロレンズをラインナップしています。

Tokinaの「VISTA」シリーズはTokinaレンズブランド初のプライムレンズシリーズで、18mmから85mmまで5本のレンズをラインナップしています。また、これまでCINEMA AT-Xブランドでリリースしていたズームレンズ「16-28mm」をバージョンIIにリニューアルし、VISTAブランドにランナップしています。

絞り値はT1.5からでVistaVisionをカバーするシネマプライムレンズ「VISTA」

――Tokinaの名前の由来を教えてください

小坂氏:Tokinaの名前の正しい由来はわりません。元々は東京光器製作所という名称で、OEM主体でした。そのためブランド名がなく「いつかPhotokinaに出展できるようなブランドにしたい」ということから、Photokinaの名前からTokinaとしたと言われています。

――Tokinaブランドは光学技術的にどのような特長をもっていますか

小坂氏:低分散ガラスレンズへのこだわりがあります。SDガラス(超低分散ガラス)を1980年代のAT-Xシリーズから多用し、高画質化を狙っています。最新のレンズでは、FK-03という蛍石に近いものまでを採用しています。

さらに非球面レンズに関しても長年のこだわりがあり、1990年代の「AT-X 235 AF PRO」では、50mmもの径となる非球面レンズを採用し、デジタル最初のAT-X 124 PRO DXでは、非球面量の設定がより有利なP-MO(プラスチック非球面レンズ)を採用しています。

――VISTAシリーズはケンコー・トキナーの光学設計技術を惜しみなく投入して実現したシネマレンズですが、改めて開発のコンセプトを教えてください

小坂氏:業界にはツァイスのCPシリーズなどフルフレームをカバーするシネマレンズはすでに数多くあります。「だったら、それを超えるようなものを出していこう」ということで、VistaVisionフォーマットをカバーするシネマレンズの開発がスタートしました。シネマカメラ用のレンズはスチルカメラ用レンズのリハウジングしたものが多いですが、VISTAはVistaVisionのカバーを実現するためゼロから設計を行っています。

VISTAのもっとも大きな特長は、この46.7mmをカバーするイメージサークルの対応で、REDのMONSTRO 8K VVにも対応しています。また、ブリージングと呼ばれるフォーカス送りによる画角変化を抑制しています。ツァイスのMaster Primeは画角変化を極限まで抑制していますが、VISTAもそれに匹敵する性能を持っています。

もう1つ大きな特長は、VISTAは18mmから85mmのすべてのレンズの開放値がT1.5と明るく、レンズのT値は統一されています。特に18mmでT1.5の明るさを実現しているシネマレンズは多くないと思います。回転角は約300°を実現していまして、マウント変換もサービス対応で可能です。

ケンコープロフェショナルイメージングが配布をしているカタログより。VISTAはフルフレーム35mmフォーマットやREDのMONSTRO 8K VVをカバーする

――価格と発売時期を教えてください

小坂氏:焦点距離によって変わりまして、希望小売価格は約80万円から100万円です。これほどの性能を実現したシネマレンズであることを考えると、かなりお手軽な価格と考えております。

Tokinaは国内のメーカーなので国内を優先して販売を開始したいのですが、VISTAに関してはハリウッドなどの世界市場を優先しています。国内では今年2月にリリースを開始したばかりで、一部のレンズは遅れる見込みです。18mmは海外でも出荷が始まっていません。

――どのようなカメラと組み合わせて使われそうですか?また、競合製品とどのような違いがありますか

小坂氏:CookeのS7あたりを競合と考えております。S7と比較すると、VISTAのほうが軽量で、T1.5の明るさを実現している点でも差別化できていると思います。どちらかというと、上のクラスのレンズと勝負をして行きたいと考えております。

VISTAは現在、いろいろな現場でテストをして頂いている最中で、VistaVisionフォーマットのカバーを活かせるMONSTRO 8K VVやソニーのVENICEなどのシネマカメラに向けに展開中です。また、ブリージングの発生を抑制などの特長もありますので、ALEXAなどのPLマウントのカメラでも展開していきたいと考えています。

VISTAのフロント径はすべて114mmに統一されている

ミラーレスカメラ用に設計されたシネマレンズ「Veydra」

ミラーレスカメラに対応したシネマレンズ「Veydra」

――Veydraはどのような交換レンズですか

福島氏:Veydraは、マイクロフォーサーズのミラーレスのカメラのサイズに合わせて小さく作ったシネマレンズです。マイクロフォーサーズのカメラを使っていても、従来のシネマレンズを使ってしまっては機動力を活かすことができません。ミラーレスカメラのコンパクトさを活かすために作ったレンズがVeydraになります。

――マイクロフォーサーズで映像撮影というとツァイスやフォクトレンダーの名前をよく聞きますが、スチルカメラ用レンズと何が違いますか

小坂氏:スチルカメラ用レンズよりもピントリングを調整する回転角が大きく、微妙なピント送りがやりやすいようになっています。ギアは0.8mmで全部径が統一されていて、絞りとフォーカスの位置はすべてレンズで共通の位置となっています。

――どのような焦点距離をラインナップしていますか

小坂氏: マイクロフォーサーズ向けには12mmから85mmの6本をラインナップしています。近日発売の19mmも含めると7本になります。明るさは19mmを除いてF2.2です。ソニーのEマウント向けには、マイクロフォーサーズで対応している12mmと16mmはラインナップされていません。近日発売の19mmを含めると85mmまでの5本のラインナップになります。また、本国ではCマウント向けもリリースしています。

福島氏:Cマウント仕様に関しては、カタログに展開はしてませんが、お客様のご希望があればお取り寄せは可能です。

――どのようなカメラと組み合わせて使われることが多いですか

小坂氏:ソニーのFS5あたりと組み合わせて使っている方が多く、非常に相性がいいと聞いております。ただ、パナソニックからGH5が発売されてからだいぶ流れが変わってきており、今後はGH5と組み合わせて使われることが増えてくるのではと期待しております。

フルサイズに対応したコストパフォーマンスの高いシネマレンズ「XEEN」

14mmから135mmまで8種類の焦点距離を揃える「XEEN」

――XEENはどのようなメーカーで設計、製造を行っていますか

小坂氏:サムヤンと呼ばれる韓国の光学メーカーで設計、製造を行っています。サムヤンは、比較的コンシューマー向けの交換レンズメーカーですが、XEENはシネマなどの映像製作向けのブランドになります。

福島氏:サムヤンの交換レンズは、国内ではスチルカメラ用レンズが中心に売れているのですが、海外ではシネマ用レンズも売れていると聞いています。

――サムヤンはシネマレンズを複数種類リリースしていますが、どのようなラインナップがありますか

小坂氏:サムヤンにはスチルカメラ用レンズにギアを付けたシネマレンズもリリースしていますが、そちらはグループ会社のケンコー・トキナーの扱いになります。ケンコープロフェショナルで扱っているのはXEENのみになります。

――XEENはツァイスのCPシリーズやキヤノンのCN-Eシリーズなどのシネマレンズと競合していますが、他のシネマレンズと何が違いますか

小坂氏: ツァイスのCPシリーズやキヤノンのCN-Eシリーズと同じ36✕24mmのフルサイズのカバーを特徴としています。しかし、コストパフォーマンスは他社製品より優れており、14mmから135mmの広角から標準まですべて同じお値段の税別31万2,500円にさせて頂いております。

ラインナップは14mmから135mmまでの8本です。かなり細かく分けてラインナップしていますので、必要とされる焦点距離は用意されていると思います。24mmから85mmまではT1.5で統一して、14mmはT3.1、16mmはT2.6、20mmはT1.9、135mmはT2.2となっています。

XEENのフロント径は14mmから135mmまですべて114mmに統一されている

――光学系はスチルカメラ用レンズからの流用になりますか?また、特にお勧めの焦点距離のレンズありますか

小坂氏:光学系は流用になります。また、ラインナップの中では、50mmが特に解像度的によかったと高評価を頂いております。

福島氏:スチルカメラ用レンズからの流用というのは、悪い意味ではありません。4Kは800万画素程度で、デジタルカメラは約3000万画素オーバーのものも多く、高画素に耐えられる解像力を持っています。

――XEENはどのようなカメラマウントに対応していますか。また、マウント変換は可能ですか

小坂氏:マウントは、キヤノンEF、ニコンF、ソニーE、マイクロフォーサーズ、PLに対応しておりまして、マウント交換キットを用意しております。

――最後に、ケンコープロフェショナルイメージングが取り扱っているシネマレンズのアピールをお願いします

小坂氏:弊社で取り扱っているシネマレンズは、Tokina、XEEN、Veydraと複数ありますが、それぞれ使用する機材や特徴、価格帯が異なっており、映画撮影から個人での動画撮影まで、幅広いお客様のニーズに対応できると考えています。これらのレンズをお使いいただき、その優れた描写をご活用いただければと思います。

txt・構成:編集部


Vol.04 [新世紀シネマレンズ漂流:最新単焦点レンズ編] Vol.06