txt・構成:編集部

トム・クルーズ主演映画「トップガン マーヴェリック / Top Gun:Maverick」の撮影でシグマシネレンズが大活躍

シグマはIBC 2016で映像用交換レンズの開発・製造への着手を発表して、2019年にはすべてのラインナップが揃った。となると、シグマの今後の動向が気になるところで、IBC 2019で発表されたClassic Prime Lineや/i Technologyなどの新しいレンズがシグマシネレンズのフェーズ2なのではないかと予想される。

そういう意味でシグマは第一段階を無事に終えて、第二段階に突入し、そしてその次…、今後どのようにシネレンズを進化させようと考えているのか気になるところだ。そのあたりをIBC 2019の会場で、シグマ代表取締役社長 山木和人氏と商品企画部の若松大久真氏に話を聞いてみた。

シグマ代表取締役社長 山木和人氏(左)と、商品企画部の若松大久真氏(右)

――シグマはIBC 2016でシネレンズ参入を発表してちょうど3年が過ぎました。実際に発売を開始されて、どのようなことを感じていますか?

山木社長:まず、シネレンズをスタートした際に考えていた我々のお客様ニーズが少し変わってきていることを感じています。映画撮影業界への参入にあたり、当初のターゲット層は個人や小規模プロダクションの個人所有、いわゆるオーナーオペレーター系の方たちを想定していました。

しかし、実際に参入してみると、劇場公開作品のような大規模なプロジェクトで使われる方から、オーナーオペレーターの方まで想定以上に幅広いお客様に使っていただけていることが分かりました。今はそれぞれのお客様のニーズをきちっと拾い上げて、当社として何ができるのかを、ひとつずつ丁寧に行っている最中です。

それにどう応えるかというところから、/i Technology対応やClassic Prime Lineの実現に至っています。

――Cooke社の通信規格/i Technologyの電子接点付きPLマウントを実現した経緯を教えてください。

山木社長:/i Technology搭載は、実は撮影監督のクラウディオ・ミランダ氏から「トム・クルーズ主演映画「トップガン」(1986)の続編となる2020年公開予定の「トップガン マーヴェリック / Top Gun:Maverick」の撮影で使いたいので、ぜひ搭載してほしい」という要望があり、映画用にカスタムで3セット用意させていただきました。

/i Technologyは当初、それほどニーズはないのでは?と思っていましたが、「トップガン:マーヴェリック」のプロジェクトではどうしても必要とのことで対応させていただきました。その後、VFX業界の動向を調べていくと、レンズデータのニーズが高いことがわかってきました。であれば、PLマウントに/i Technologyに対応しようということで実現に至りました。

――では、新しいフェーズというのは、シグマのやりたいことを実現するというよりも、ユーザーからのフィードバックの実現によるものなのですね。

山木社長:確かにシネプライムレンズのいろいろなフィードバックを多くいただいておりまして、それをひとつひとつ消化している状態です。しかし、そういう受け身だけではモノ作りは面白くないので、いただいたフィードバックの中でそれを消化しつつ、次をどうするかというのを、ちょうど今いろいろ考えているところです。

ただ、基本的にはやはりトレンドは、ラージフォーマットになると思います。そこに対してどういうソリューションを提供していくかが中心になっていくと思います。

開発から製造、調達までを含む高い生産技術がシグマの強み

――Classic Prime Lineのような個性的なルックを特徴とするシネレンズは、他社からも発表が相次いでいます。Classic Prime Lineのアピールポイントをどのようにお考えですか?

山木社長:おそらく、撮影監督のニーズの幅が広いと思うんですよ。割とソフトで雰囲気がいい感じのレンズを好まれる方から、今回のミランダ氏のように、パキっと撮ってキチっと合成とかできるのを好まれる方もいて、本当に両極端だと思います。

レギュラーモデルは、当社のテクノロジーを使った高性能なレンズを低コストでお届けできること。それが、あまたあるレンズメーカーの中での当社の特長になると考えています。

シネレンズはオートフォーカスではないので、確かに参入もしやすい。メーカーも価格もいろいろあると思うんですけど、やはり技術がないときちんとしたものは作れないと思います。

あとはやっぱり、当社には攻めた設計を実現できる強い工場があります。Classic Prime Lineみたいなものや/i Technologyなどを、自分たちのテクノロジーできちっと対応して、当社の持っている技術や製造技術で対応できるというフレキシビリティも持ち合わせています。これが、サプライヤーをたくさん使って集めたものをアセンブリだけするメーカーとは違う、本当のモノづくりができるシグマの特徴だと思います。

――シグマのシネレンズは今後、ますますロサンゼルスでも増えそうですよね。

山木社長:だといいんですが、まだまだ参入して日が浅いです。だからこそ、出てきたメーカーの中で、やはり違うところを見せなきゃいけない。まだまだいろいろ挑戦して、お客様の支持を得られるようにしなければいけないなと思っています。