スイッチャーは、映像・放送業界におけるIPビデオ伝送への移行、そしてライブ配信の隆盛が進むうえで、注目度が増している機材だ。以前から小規模なイベントやセミナー向けが増えてきているが、今年はVTuberやYouTuberを対象とした個人配信向け製品の発売が目立った。そこにニーズがあるという証だ。ここでは、100万円台以下の新製品に絞ってノミネートしてみた。

ローランドからは個人配信からイベント現場向けまでさまざまなビデオスイッチャーが登場

「VR-50HD MK II」は、中小規模のイベントを対象としたマルチフォーマットAVミキサー。1人で簡単に操作ができる「VR-50HD」を引き継いだリニューアルモデルで、ワンマンオペレートをサポートするためにオートミキシング機能、ビデオフォローオーディオ機能を搭載。パナソニック、JVC社製のPTZカメラをLANポート経由で制御可能。

「V-600UHD」は、コンサート、スポーツ、講演会などのイベントを対象とした4K HDR対応マルチフォーマットビデオスイッチャー。「Ultra Scaler」と呼ばれる優れたスケーラーの搭載が特徴。2Kから4Kまでの入出力を自在に操ることができ、例えば入力に1080i/1080Pや1600×1200/60Hz(UXGA)の映像を入力して、V-600UHDから1080pに揃えて映像を出力をしたり、異なる解像度の入力を組み合わせたPinPなども可能だ。

「VR-1HD」は、ライブ配信に最適なAVストリーミング・ミキサー。3系統のHDMI入力に対応し、PC、ゲーム画面を入力できる。また、2系統のXLR入力を搭載し、オーディオミキサーとしても使用可能。

特に面白いのが自動切り替えモードで、話をしている人を映すカメラの映像に自動で切り替え、演奏やDJパフォーマンスの音楽テンポに合わせてカメラを自動的に切り替え、あらかじめ決めたタイミングで順番に映像ソースを切り替える3つのモードがある。

「VR-50HD MK II」(左)「V-600UHD」(中央)「VR-1HD」(右)

4チャンネルの映像入力で税別35,980円を実現した「ATEM Mini」

Blackmagic Designは今年2種類のスイッチャーを発売した。

「ATEM Constellation 8K」は、8K DVE、8Kコンバート入力、8K SuperSource、8Kクロマキー、8Kマルチビューに対応したパワフルな8Kスイッチャー。「8Kはまだ関係ない」と思うかもしれないが、8Kモードに切り替え可能なHDまたはUltra HDスイッチャーとして考えていいだろう。HDやUltra HDでは40系統の12G-SDI入力を使用でき、8Kモードに切り替えると10系統のクアッドリンク12G-SDI 8K入力に切り替えて使用できる幅広さが特徴だ。

「ATEM Mini」は税別35,980円という圧倒的な低価格のスイッチャー。HDMI入力を4つ搭載し、出力はUSB3.0 Type-Cx1とHDMIを1つ搭載しており、Webカムのソースとしてあらゆるビデオソフトで作業できる。本体のハードキー以外にもPCのソフトウェアで少し凝った使い方をすることも可能。

「ATEM Constellation 8K」(左)、「ATEM Mini」(右)

これ1台でPC不要のポータブルライブストリーミングAVミキサー「UC9020」

「UC9020」は、iPadをモニターに使ったオール・イン・ワンのライブ配信ソリューション。1080pビデオキャプチャ、4Kプレビュー出力、ビデオスイッチャー、1080p@60Hz対応ストリーミング用ブロードキャスター、ビデオコンバーター、ビデオ分配器、オーディオミキサーをコンパクトな筐体に統合。手持ちのiPadをタッチ式インターフェースに変えて、複数の要素を操作・監視プレビュー・リアルタイム編集してプログラム・ミキシング可能。

ATVから4Kスイッチャー「AV-4K-4X1」が登場

ATVの「AV-4K-4X1」は、4K60P対応の4ch入力シームレス・スイッチャー。様々な映像信号のフォーマットの違いを意識することなく接続できるマルチフォーマット入力や、2つの入力を徐々に切り替えるディゾルブ(オーバーラップ)での切り替え、ワイプでの切り替えが行える。また、4つの入力を画面分割して同時に表示可能。画面の配置やサイズを自由に設定することも可能だ。

4K対応のスイッチャー「AV-4K-4X1」

NewTekからオールNDI、4K対応「TriCaster Mini 4K」登場

「TriCaster Mini 4K」は、現場に持ち込みやすい小型の筐体を実現し、現場に着いたらすぐに準備ができる敏速性をもちあわせたコンパクトなライブビデオ作成システム。現場に到着して数分以内に最大4K UHDの解像度で番組制作を開始可能だという。4つのプラグアンドプレイNDI接続により、イーサネットケーブルを接続することで、ビデオ、オーディオ、タリー、電源、および制御を利用できる。もちろん、サードパーティ製NDI互換のIPカメラやコンバーター、システム、ソフトウェアなど幅広く接続することも可能だ。

「TriCaster Mini 4K」

PRONEWS AWARD 2019 配信/スイッチャー部門ノミネート製品

以下が配信/スイッチャー部門のノミネート製品となる。

  • ローランド「VR-50HD MK II」
  • ローランド「V-600UHD」
  • ローランド「VR-1HD」
  • Blackmagic Design「ATEM Constellation 8K」
  • Blackmagic Design「ATEM Mini」
  • ATENジャパン「UC9020」
  • ATV「AV-4K-4X1」
  • NewTek「TriCaster Mini 4K」

何が受賞するのか…?発表!

PRONEWS AWARD 2019 配信/スイッチャー部門受賞製品発表

配信/スイッチャー部門
ゴールド賞
VR-1HD

ローランド

ゴールド賞はローランドのAVストリーミングミキサー「VR-1HD」だ。20万円以下の価格で、3系統のHDMI入力や2系統のマイク入力に対応し、ボイスチェンジ機能、映像の自動切り替え、効果音のポン出しなどを搭載している。映像スイッチャーと音声ミキサー、オーディオエフェクター、サンプラーを、この価格でここまで詰め込んできたか!というのが受賞のポイントとなった。

特に面白いのは、映像の自動スイッチング機能を配信時に活用できることだ。インタビューで3台のカメラがマイクで話した方のカメラに自動で切り替わったり、音楽テンポに合わせてカメラを自動的に切り替えが可能で、オペレーター抜きで3カメの生放送が実現可能だ。本格的な配信をしたい方にお勧めできる1台と言っていいだろう。

配信/スイッチャー部門
シルバー賞
ATEM Mini

Blackmagic Design

シルバー賞は、Blackmagic Designの「ATEM Mini」。4入力スイッチャーで、トランジションやピクチャーインピクチャーを搭載して価格は税別35,980円。ビデオミキサーやライブプロダクションスイッチャーに興味のなかった人たちも関心を寄せるほどのコストパフォーマンスが受賞ポイントとなった。

これまでのATEMシリーズは、もっとも安いもので10万円から30万円だったが、ATEM Miniははるかに小型でお手頃な価格ながらも4入力ともスケーラー搭載で、クロマキー対応にも対応しており、近い機能をもっているところも特徴だ。


Vol.02 [PRONEWS AWARD 2019] Vol.04