2019年は6Kシネマカメラが続々登場

2019年のシネマカメラ業界は、6Kシネマカメラが話題になった年だった。

100万円台クラスから紹介していくと、キヤノンは5.9Kフルサイズセンサー搭載のEOS C500 Mark IIを2019年12月24日に発売。特徴は、Cinema RAW Lightによる6K RAWをカメラ本体のCFexpressに記録可能。シネマカメラなのに、全面の撮像画素が位相差AF画素のデュアルピクセルCMOS AFや5軸手ブレ補正搭載を特徴としているのもキヤノンらしいところだ。

ソニーはフルサイズ6Kセンサーを搭載した「FX9」を2019年12月10日に発売。従来のFS系と同一の使い勝手は一緒で、フルサイズのレンズを活かせるのが特徴だ。こちらもキヤノンに負けず劣らず、シネマカメラながら高性能AFを実化するファストハイブリッドAFを搭載。さらに、デュアルネイティブISOの800/4000やフルフレーム対応の電子可変NDフィルターも特徴だ。

キヤノンのEOS C500 Mark II(左)、ソニーのFX9(右)

100万円以下の6Kフルサイズシネマカメラでは、パナソニック「S1H」が話題になった。フルサイズミラーレスカメラでは初となるセンサー全域を使った6K24P収録、ライカカメラのLマウントに対応。ミラーレスのスタイルだが、Netflixのオリジナル作品を撮影できるNetflix認定カメラとして認められるほど本格的な仕様を実現している。

Blackmagic Designは、スーパー35mmセンサーの6Kカメラ「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K」を発売。大人気モデル「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4k」の上位機種で、6Kセンサー搭載、スーパー35mmセンサー、EFマウントを搭載。低価格でありながら最大4Kまですべてのフォーマットの10ビットProResファイル、または6Kまですべてのフォーマットの12ビットBlackmagic RAWに記録対応が特徴だ。

パナソニックの「S1H」(左)、Blackmagic DesignのBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K(右)

シネマカメラメーカーからはARRI「ALEXA Mini LF」やRED「RANGER」登場

今年はシネマカメラメーカーのARRIとREDからも新製品が登場した。

ARRIは、ラージフォーマットカメラでありながら自由に動ける4.5Kセンサー搭載デジタルシネマカメラ「ALEXA Mini LF」を発売。昨年発表したALEXA LFの性能をそのまま小型軽量化したバージョンだ。センサーはLFと同じALEV III CMOSセンサーを搭載。LPLレンズマウント搭載で、シグニチャープライムレンズに対応。それでいて、モジュール式ですべての用途にも使えるのも特徴だ。

RED DIGITAL CINEMAは、シンプルな使い勝手でスタンダードなカメラを好むユーザー向けの「RED RANGER」カメラシステムを発売。RED RANGERカメラの重量は約3.4kg、コンパクトでスタンダードなカメラ形状をしており、電力供給を考慮した電力ソースの配置や静かで効率的な温度管理が可能な大型ファン搭載が特徴だ。

ARRIのALEXA Mini LF(左)とREDのRANGER(右)

動画機能が充実したミラーレスカメラ「SIGMA fp」や「GFX100」「ライカSL2」

動画機能が充実したミラーレスカメラの発売も相次いだ。その中でも特に話題になったは、「SIGMA fp」「GFX100」「ライカSL2」だ。

シグマ「SIGMA fp」は、ベイヤーセンサーのフルフレームミラーレスデジタルカメラを2019年10月25日に発売。fpが大注目を浴びたわけは、これだけ小さいのにフルフレームであったり、静止画と動画撮影に対応しているところだ。しかも動画撮影機能も充実しており、コンパクトでありながらもCinemaDNG RAWによる12bit収録対応も話題になった。

富士フイルムは、43.8mmx32.9mmのセンサーを搭載したラージフォーマットCMOSセンサー搭載のミラーレスカメラ「GFX100」を発売。特徴は35mm判の約1.7倍の面積を持つセンサーに有効画素数約1億2百万画素の裏面照射型イメージセンサーを搭載しているところだ。一般的なシネマカメラよりも大型なGFX100のセンサーを16:9/17:9画角に使って4K30P収録が可能だ。

ライカカメラは、ライカSLシステムの次世代モデルとして「ライカSL2」を発売。シネマ4K(C4K)モードでは最大60fps、フルHDモードでは最大180fpsの動画撮影が可能。Cineモードでは、マニュアル操作が可能なシネマカメラとして使用できる。マイク端子とヘッドフォン端子やHDMI端子も装備しているので、外部モニターに映像を出力も可能。

小型、軽量が特徴のSIGMA fp(左)と有効画素数約1億200万画素が話題のGFX100(中央)、シネマ4K(C4K)モードにも対応するライカSL2

光学ズーム比20倍、4:2:2 10ビット記録に対応するパナソニック「AG-CX350」とJVCケンウッド「GY-HC500」登場

4Kハンドヘルドカメラでは、1インチイメージセンサー、光学ズーム比20倍、4:2:2 10ビット記録対応のパナソニック「AG-CX350」とJVCケンウッド「GY-HC500」が話題になった。

AG-CX350は、記録しながらHDストリーミング出力可能なのが特徴だ。ストリーミング方式はRTSPに加えてRTMP、RTMPSをサポート。さらにIP接続にも対応し、NDI/HXに対応する。レンズは、広角24.5mmの光学20倍ズーム、1.0インチ15MのMOSセンサー搭載。タブレット/スマートフォンからのワイヤレスコントロール。SDI・HDMI同時出力などを実現している。

JVCケンウッドはハンドヘルドタイプの4KメモリーカードカメラレコーダーGY-HC500を発売。光学20倍で4K60P記録に対応。別売のSSDメディアアダプターを使用することでProRes 422の4K60P記録が可能。

パナソニックのAG-CX350(左)、JVCケンウッドのGY-HC500(右)

PRONEWS AWARD 2019 カメラ部門ノミネート製品

以下がカメラ部門のノミネート製品となる。

  • キヤノン「EOS C500 Mark II」
  • ソニー「FX9」
  • パナソニック「S1H」
  • Blackmagic Design「Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K」
  • ARRI「ALEXA Mini LF」
  • RED DIGITAL CINEMA「RED RANGER」
  • シグマ「SIGMA fp」
  • 富士フイルム「GFX100」
  • ライカカメラ「ライカSL2」
  • パナソニック「AG-CX350」
  • JVCケンウッド「GY-HC500」

何が受賞するのか…?

PRONEWS AWARD 2019 カメラ部門受賞製品発表

カメラ部門
ゴールド賞
Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K

Blackmagic Design

ゴールド賞はBlackmagic DesignのBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kだ。税別283,800円と手頃な価格で6K RAW内部収録対応を実現。受賞理由は、このもっとも入手しやすい6Kカメラを市場にリリースしたところだ。

また、これまでのシネマカメラはストレージ容量やコストの問題になることが多かった。6K収録となると、ストレージの空きスペースの悩みはさらに顕著になる。Pocket Cinema Camera 6Kは、USB-Cポート経由の外部SSD記録に対応したのも特筆だ。EFレンズマウント採用で、手持ちの交換レンズを活用しやすいのもありがたい。

Blackmagic RAW対応も話題だ。編集時に現像が自由自在で、撮影時のLUTやホワイトバランスを気にする必要がなく、Resolve Studioでストレスなく作業できるところも受賞理由となった。

カメラ部門
シルバー賞
S1H

パナソニック

シルバー賞は、パナソニックのS1Hだ。受賞理由は、品質の高い収録をボディ内記録が可能なところだ。最大撮影解像度であるアスペクト3:2フルフレームで6K/10ビット24P、アスペクト16:9フルフレームで5.9K/30Pの内部録画が可能やSDカードを使って時間制限なしにすべてのモードで記録に対応。NETFLIXの認定カメラであることからも、その実力は確かだ。

また、パナソニックとATOMOSは、S1HからHDMI経由で5.9K 35mmフルフレームのProRes RAW収録を2020年初旬に開始と発表。これまでSDI搭載シネマカメラに限定されていたRAW収録が、ミラーレスカメラでももう時期可能になる。これはシネマカメラ業界にとっては、大きな転機となりそうだ。


Vol.00 [PRONEWS AWARD 2019] Vol.02