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最小で手頃な価格帯の4Kカメラを実現するZ CAM社

Z CAMは、海外ではお手頃価格かつ、性能の高さが話題のシネマカメラブランドだ。国内では技術基準適合証明(通称:技適)を取得し、サロンフィルムズジャパンによる販売、サポートがスタート。Z CAMの注目は高まりそうだ。本稿では、香港のZ CAM社CEO キンソン・ルー氏に会社の成り立ちからZ CAMの魅力を聞くことができたので紹介しよう。

――Z CAMはどのような会社でしょうか?

香港からインタビューに応じて頂いたZ CAM社CEOのキンソン氏

中国の深センに本社を置くカメラブランドです。正式な社名は、深圳イメージビジョンテクノロジー社で、設立は2013年3月です。現在発売中のZ CAM E2の前モデルとなります、マイクロフォーサーズのレンズ交換可能な最小の「Z CAM E1」が最初のカメラでした。

Z CAMシリーズは世界中に出荷しており、メインは中国、米国、続いてヨーロッパが中心です。香港や中国の映画プロダクションやBBC、アメリカのハリウッド等、業務用途で使っている方々からも支持を頂いており、そういった方々にAカメもしくはBカメとして使われることが大変多くなっています。

今回サロンフィルムズジャパンと手を組んで、日本市場の皆様に我々のZ CAM Flagshipシリーズ全機種をお届けできることを、大変うれしく思っています。我々の高い品質とコストパフォーマンスの高さは、間違いなく日本の皆様に支持されると自信をもっています。

――Z CAMはゼットカム?ジーカム?どちらの発音が正しいですか?

好きなほうで大丈夫です(笑)。

――Z CAMはプロ用VRカメラメーカーかなと思っていました。現在、シネマとVR、開発はどちらに重きを置いていますか?

もともと会社としては、高品質なシネマカメラを作りたいという思いが常にありまして、会社設立後の初製品はシネマカメラのZ CAM E1と、成り立ちはシネマカメラが本流です。2016年や2017年は、業界的にVRカメラの需要が大変高かった背景があり、その2年間は開発の比重をVRカメラに置いていました。ですので現在はシネマカメラが中心で、Z CAM E2の開発が実現しました。

2015年にKickstarterのクラウドファンディングによる資金調達を募集した4KシネマカメラのE1

――シネマカメラを世に出そうと思ったきっかけとはなんでしょうか?

シネマカメラの歴史を振り返ると、昔から大型カメラが中心でした。そこに私は小型のシネマカメラを作りたいと考えました。小型カメラならばさまざまなシーンで違った使い方や、使い方の幅を広げることができると考えました。

しかし、小型化には常に技術的な難しさが伴います。様々なものを小型の筐体の中に詰め込もうとすると、オーバーヒート問題に悩まされます。熱を逃がすためには、ファンを回さければいけないが、ノイズが発生するというジレンマが発生します。そこで我々のE2シリーズは、すべてのモデルでファンレスを実現しました。ファンの代わりに、筐体そのものが熱を伝達して逃がす構造になっています。よって、どのE2シリーズも長い連続撮影が可能となるように作られています。

弊社のカメラは、8Kカメラに至るまですべて、外部電源供給とメディアの容量が続く限り、まる一日連続で記録することもまったく問題ありません。他社の一般的な大きな撮影用カメラはファンを搭載しており、一定時間が経過すると熱を逃がすためにファンが回転します。我々のカメラは、そういった心配はまったくありません。

もう1つの思いですが、世の中にはインディーズのクリエイターの方々が大勢います。そういった方々に手が届きやすいカメラを作って提供して、クリエイターの裾野を広げていきたいという思いもありました。

    ■Z CAM E2シリーズのラインナップ
  • Z CAM E2-M4:4/3インチWDR CMOSセンサー搭載、4K/160fpsシネマカメラ
  • Z CAM E2-S6:スーパー35mm CMOSセンサー搭載、6K/60fpsシネマカメラ
  • Z CAM E2-F6:フルフレームCMOSセンサー搭載、6K/60fpsシネマカメラ
  • Z CAM E2-F8:フルフレームCMOSセンサー搭載、8K/30fpsシネマカメラ
――社長はこれまでどのようなビジネスに関わられてきましたか?カメラマン出身ですか?

これまで、エリクソン、モトローラ、ソニーエリクソンなど、モバイル関連やスマートフォン関連のビジネスに20年以上関わってきました。12~13年前から自分の趣味として、写真を撮っています。その頃、現在、創設者で会長でもあるジェイソン・チャンと出会いまして、一緒にZ CAMを育てております。今ではスマートフォン業界から離れて、完全にシネマカメラ1本です。

私が他社カメラメーカーのCEOと違うのは、私自身がユーザーであることです。どんな機能もすべて私が実際に試したうえで搭載を決定します。そこがやっぱり他社カメラメーカーのCEOと違うと思います。私もカメラマンですから、なぜこういう機能がほしいのか、なぜここがいいのか、なぜここに不満があるのかを理解できますし、どんな質問にも応えることができます。まさに私自身が、プロカメラマンと開発との間の橋渡しを果たしていると思っています。

――Z CAMはなぜコストパフォーマンスの高いシネマカメラを実現できるのでしょうか?

我々の会社は発展途上で、ほかの大手企業と比べると規模も小さいですし、学ばなければならないこともいっぱいあります。ただ、いつも大切にしていることは、なににおいてもクオリティを最優先にする方針です。品質が悪ければ、正直タダでも誰もいりませんよね。

特に色再現技術を重要視しており、スキントーンの発色をどのように再現するかにはこだわっています。また、ProResで10ビット、12ビットの撮影が可能で、スーパー35mmでこの値段は圧倒的にコストパフォーマンスがいいと考えております。これが、いろんな可能性を広げることにつながると信じています。

また、ライブストリーミングなどの利用においても、大変威力を発揮します。特に、昨今、映像のライブストリーミング市場のニーズが大変に高まっています。そこで、E2シリーズすべてに無線、有線LAN接続を完備し、ライブストリーミングできる機能を備えました。

――これから国内でもZ CAMとブラックマジックデザイン、どちらを買うか悩む人が増えてくると思います。Z CAMの優位性をご紹介ください。

正直、この価格帯で、変換アダプターを介すことなく、直接レンズマウントを交換できるインターチェンジャブルなカメラは他社には存在しません。どのレンズマウントでも使えるシステムはZ CAMしかないはずです。さらにうちのカメラはファンがついていないので、ファンのノイズ問題もなければ熱暴走の問題もありません。

また、4K30フレームでは、Sonyの高容量NPバッテリー1個で5時間の撮影が可能です。おそらく、ほかのカメラで同じような電気消費量で抑えることはできないと思います。4K30フレームのほかの同スペックのシネマカメラでは、電池1個で5時間連続撮影というのはまず無理なのかと思います。

今のZ CAM E2もしくは、新しく発売したZ CAM E2-M4では、4K160フレームの撮影が可能です。このハイフレームレートを、この値段で実現できる機種を他社では見たことがありません。品質には自信を持っていますのでぜひ、他社のカメラと横並びでの比較を積極的にやっていただきたいと思います。

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E2シリーズのレンズマウント対応一覧。電子NDフィルター(e-ND)は、通常のEFマウントとPLマウントに搭載可能だ
※画像をクリックすると拡大します

――最後にZ CAMはラインナップが充実していますが、今一番お勧めのモデルを教えてください

2020年5月に発表しましたZ CAM E2-M4が今、一番のお勧めです。マイクロフォーサーズマウント対応で、日本にはたくさんのレンズが出回っています。もちろん、マウント交換の機構を備えており、EFマウントやPLマウントに換装が可能です。

Z CAMのturboマウントという補正レンズを内蔵したアダプターを用意しており、EFレンズを直接つけることが可能です。EFのフルフレーム用レンズでは、通常2倍必要なところを1.4倍で撮影可能になります。それだけ被写体深度や明るさの確保が可能です。また、インターチェンジャブルの機構があることによって、MFTのレンズだけでなく、EFマウントやPLマウントに対応させることも可能です。もちろんそれだけではありません。EFマウントには、アクティブロックの機構を備えていますので、動画撮影に際して、よりしっかりとレンズを固定することができます。

E2-M4は、大変チャレンジングな値段で提供させていただいておりますので、色々な方々に使っていただきたいと思っています。業務だけでなく、プライベートでも使っていただけますし、それがクリエイティブの裾野を広げると思っています。

また、我々のカメラはフルフレームも取り揃えており、4Kから8Kまで様々な撮影要件に対応可能です。我々の取り揃えているラインナップによって、マーケットが必要としている部分をかなり広くカバーできていると自負しています。

国内ではサロンフィルムズジャパンが販売とサポートを提供

サロンフィルムズジャパンは、日本国内市場向けにZ CAMの発売を開始した。サロンフィルムズは香港(SAR)に本社を置き、中国、シンガポール、マレーシアと東京に支店を持つ映像プロダクション会社。メイン事業はプロダクションやレンタルだが、ZCAMや中国の照明メーカーの機材の販売も行っており、香港国内のZ CAMの公式ディストリビューターとしてカメラを提供してきた。

2020年6月よりサロンフィルムズジャパンを立ち上げ、Z CAMの撮影用機材販売を行う。サロンフィルムズジャパンの取り扱うZCAMは、マニュアルもすべて日本語化され、日本国内での電波法に準拠し、技術基準適合認定(技適)を受けた日本仕様で販売を行う。

サロンフィルムズジャパンは、Z CAMの販売を同社オンラインWebサイトなどで行う。同社から購入したZ CAMでサポートが必要な場合は、メールや電話は日本語のやり取りができる。また、同社が指定する国内への郵送で修理を依頼することも可能だ。

txt・構成:編集部


Vol.06 [Camera Preview 2020] Vol.08