txt:駿河由知 構成:編集部

使えば使うほど楽しくなるSIGMA fp

2020年7月11日と13日開催の「ライブ配信まるごと大相談会」。筆者は「シグマfpによる高画質配信TIPS」というテーマで出展し、SIGMA fpを4台展示した

筆者の通常業務は、インターネットライブ配信である。これまで配信用カメラは、業務用ビデオカメラ、CINEMA EOS SYSTEM、ミラーレス一眼などを使用してきた。その中でも「SIGMA fp」は昨年の登場以来、メーカーにサポートをいただきながら、多くの現場で検証を重ねてきた。

SIGMA fpは「全部入りではない」ところが楽しみを大きくしている。動画撮影でのオートフォーカスは若干微妙であったり、ヘッドフォン端子がなかったり、不便も感じる。しかしながら、不思議なことにものすごく愛着の湧くカメラである。

インターネットライブ配信の場合、複数台のSIGMA fpのHDMIから映像スイッチャーにケーブルで接続しカメラスイッチングが可能だ。豊富なシグマレンズのラインナップの中から、イメージにあったレンズを選択できることも大きなメリットがある。音楽ライブのアーティストからも、SIGMA fpの映像の評価は群を抜いて良い。

それともう一つ、カラーモードの選択により、SIGMA fpならではのユニークなカラー演出が可能だ。特に筆者は「ティールアンドオレンジ(T&O)」が一番のお気に入りだ。

そして2020年6月25日、SIGMA fp初となるファームウェアメジャーアップデートVer.2.00が公開された。気になる機能を紹介していこう。

右がファームウェア1.0からファームウェア1.1へのアップデート。左が今回リリースされた1.02から2.00へのアップデート

アップデートVer.2.00でHDMI RAW出力を搭載。NINJA VやVideo Assistを外部レコーダーとしてRAW記録が可能に

SIGMA fpとATOMOS NINJA Vとの組み合わせ

アップデートで最初に注目したのは、RAW出力の対応だ。外部レコーダー記録はATOMOS「NINJA V」が今夏公開予定のファームアップデートで、Blackmagic Design「Blackmagic Video Assist 12G HDR」は2020年7月17日に公開されたBlackmagic Video Assist 3.2アップデートにて対応する。Blackmagic Designによると、残念ながら2020年7月16日に発表された低価格モデルの新製品「Video Assist 3G」シリーズはSIGMA fpのRAW外部記録に対応しないとのこと。また、シグマによると、SIGMA fpファームウェア Ver.2.00とBlackmagic Video Assist 3.2を使用したBlackmagic Video Assist 12Gモデルの組み合わせにおいてRECトリガーが動作しない現象が確認されているとのことだ。

■HDMI経由によるRAWコーデック記録対応の外部レコーダー

  • ATOMOS NINJA V(税別92,500円)
  • Blackmagic Video Assist 5” 12G HDR(税別89,980円)
  • Blackmagic Video Assist 7” 12G HDR(税別113,800円)

SIGMA fpとBlackmagic Video Assist 5” 12G HDRとの組み合わせ

SIGMA fpは、発売当初からCinemaDNGの12bit RAW収録対応が特徴だった。しかし筆者の場合、多くのストレージが必要なため使用することはなかった。筆者は4Kテレビのコマーシャルなどをバリバリに編集するタイプではなく、「ライブ配信後のダイジェスト映像」の制作などを最近多く行っている。

このダイジェスト映像制作は、1080PのH.265、解像度は大きくて4K、短期間納期、低コストでの作業が多く、長年使い慣れている編集ソフトのFinal Cut Pro Xで作業する場合が多い。となると筆者が待望しているのは、Final Cut Pro X+ProRes RAWを記録できるNINJA Vのほうだ。RAWでありながら、扱いやすいデータサイズやパフォーマンスの良さに期待している。

特に会議室のような現場では、しっかりと色温度を合わせても収録された映像が合っていない場合がある。NINJA VにProRes RAWで録画しておけば、「まったくホワイトバランスがあっていない」という事故が起こっても後から調整できると考えている。

Blackmagic Video Assistでは、Blackmagic RAW形式で直接録画することが可能だ。執筆時点はSIGMA fpへの直接収録対応前で体験はできなかったが、現在はDaVinci Resolve Studioとの組み合わせでパーフェクトなポストプロダクション環境を構築が期待できそうだ。

ちなみに、これも驚いたことだが、「12bit HDMI RAW出力機能」は「DCI 4K」にも対応する。ライブのダイジェスト映像をちょっとおしゃれに仕上げたい場合などに、DCIのシネスコサイズで仕上げれば目を引く映像を制作できるのではないかと考えている。

ISO100、3200のデュアルベースISO採用

ISO100、3200のデュアルベースISOもアップデートで気になった点だ。筆者の場合、ライブハウスでの撮影が多いが、場所によってはピンスポットライトなどによって照明の明るさが変化することがある。このような場合に、デュアルベースISOを3200に設定することで白飛びを防ぐことができ便利だ。

待ちに待ったAFの改善

アップデートVer.2.00によるAF改善も嬉しいトピックの1つで、とても気になった。これまでAFの遅さはSIGMA fpの弱点の一つであったと思う。それがアップデートによりかなり改善された。特に、24-70mm F2.8 DG DN | Artに関しては、大幅な改善を体感できた。筆者は、SIGMA fpをビデオ通話にも使用しているが、24-70mm F2.8 DG DN | ArtをF4ぐらいに絞って使っても問題を感じることはない。ただし、35mm F1.4 DG HSMや50mm F1.4 DG HSMなどの明るい単焦点レンズだと、顔検出や瞳検出にしても開放などの精度はまだ問題を感じる部分もある。さらに改善してほしいところだ。

RAW撮影で最適な「カラーモードOFF(切)」を搭載

各撮影シーンに最適な色調、コントラストなどを調整できる「カラーモード」は、これまで初期設定のスタンダードで撮影を行うのが一般的だったが、OFF(切)機能が追加された。

筆者は、カラーモードをOFFにしたときの暗めの色をとても気に入っている。今までに見たことがない、とてもおしゃれなイメージで、モノクロに近い落ち着いた気持ちのいい色を再現してくれる。特に、RAWで撮る時は、カラーモードを(切)にしておくと、作業がしやすくなるだろう。

SIGMA fp ver2.0カラーモードのオンオフ違い

画像と映像が組み合わさったアニメーション「シネマグラフ作成/再生機能」搭載

Ver.2.00でシネマグラフの.mov形式の動画が制作可能となった。撮影した動画をSIGMA fp本体内の簡単な操作で、とてもユニークな動画を作成できる

ちょっと変わった追加機能なのが「シネマグラフ作成/再生機能」だ。写真の一部を動かせる機能で、例えば大道芸の写真の中で、3つのボールを交差させてキャッチする部分だけ動画で動くような表現が可能となる。Adobe PhotoshopやPremiere Proで必要な作業をカメラの中で全部できてしまうのには驚きだ。SNSで見かけるアート作品のように表現できるのが、面白いと思った。

シネマグラフ機能の使用例。右下のリスにマスク処理をした

レコーダーへの対応が楽しみ

SUGMA fpはVer.2.00で、ワンランク上のシネマカメラに成長中だ。外部レコーダーへの圧縮RAWデータの録画は、ユーザやこれから購入を検討されている皆さんにはさらなる楽しみになっている。早速対応を開始したBlackmagic Video Assist、そしてこの夏対応予定のATOMOS NINJA Vへの対応が楽しみだ。

txt:駿河由知 構成:編集部


Vol.05 [Camera Preview 2020] Vol.07

WRITER PROFILE

駿河由知

駿河由知

官公庁、国連、国際会議等の各国多拠点接続会議、教育機関の入学式、卒業式等 各種インターネットライブ中継の企画制作。