txt・構成:編集部

撮影監督石坂拓郎氏がRED KOMODOでアクション作品を撮る

撮影に使用したRED KOMODO ST(ストームトルーパー)。初回限定版の配色だ。現行品の筐体は黒色

これまで謎に包まれたシネマカメラ「RED KOMODO」がまもなく出荷を開始する。国内でも国内代理店のRAIDがKOMODOのリリースに向けて準備中。そして、実写映画「るろうに剣心」の撮影監督 石坂拓郎氏がKOMODOのデモリールを撮影したという。KOMODOを使った撮影体験談を聞くことができたので、さっそく紹介しよう。

Martial Arts Tokyo | Takuro Ishizaka | KOMODO

–今回の内容に至りました経緯を教えてください

KOMODOのデモリールを撮影しました。

企画を考えているときに、ちょうどInstagramで映画「るろうに剣心」のアクション部で日芸を卒業した伊澤彩織さんの投稿を見かけました。伊澤さんは、Instagramで格闘家などのワンアクションを撮って、そこの最後に「MARTIAL ARTS TOKYO」と入れて公開するプロジェクトを行っていました。

これが、面白いなと思いまして、伊澤さんとコラボする形になりました。そこからどんどんと自分の知り合いを引き込んでいきました。それで制作していった事感じです。

石坂拓郎氏(撮影監督):米国LA在住の撮影監督。岩井俊二監督の右腕として活躍した名カメラマン、故 篠田昇氏の遺作となった「世界の中心で、愛をさけぶ」でフォーカスマンを担当。その後、国内の映画作品、CMなど様々な方面で活躍

――撮影期間は何日でしたか?

2日間が演者さんの撮影で、1日間が実景撮りでした。撮影は、汐留、中野、渋谷、晴海で行い、撮影部は3人で助手をつけました。尺はショートバージョンは30秒、ロングバージョンは2分です。

――KOMODOの第一印象はいかがでしたか?

よかったですね。いろいろな意見がありますが、私は素直に面白いな思いましたね。まず、四角という形が潔い良いですね。手に持った瞬間、「ちいさっ!」みたいな感じでした。本体のみで、あとはなにもついてない。上にディスプレイがついていますが、それが起き上がることもない。本当に潔く、四角い。そのデザインは大変なインパクトを感じました。

国内メーカーさんともカメラについて意見交換をする機会がありますが、XLRを始めさまざまな機能が搭載していないと不十分だよねという感じになってしまう。結局、機能を実装せざる終えなくなって、複雑化してしまう。REDの場合は、割り切っているのでしょう。最小限かつ必要な機能で実現している印象を受けました。

――先日、完成前の作品を拝見させていただく機会がありました。グレーディングをしなくても「完成の状態ではないか?」と思いました。

それはグレーディングをしていないストレートで出しただけの状態ですね。やっぱりKOMODOの面白かったのが、REDはLUTを昔から積極的に配布や共有が行われています。そのLUTの運用が充実しており、近年では、仕様書がしっかりしています。それをきちんと読んでみると、意外にワークフローにもうまく絡められる。カメラ用のLUTをダウンロードして、メディアに入れてKOMODOの中に入れることができます。

そして、「RED CONTROL」と呼ばれるiPhoneアプリが非常に重宝します。iOSデバイスから直接KOMODOカメラを制御できるアプリなのですが、特に感動したのは、映像がアプリ上で確認できることです。

RED CONTROLは、全メニューがコントロールできる。その中に3D LUTメニューがあり、プリセットや好みのLUTがすべて作例として、同時にリスト表示できます。カメラボディからモニターにつないで、ルックの確認をモニターでできます。その少し派手なライティングをして、色破綻がLUTででちゃったりしても、違うLUTで試す、といった思考錯誤も可能です。

さらに、現場選択したLUTは、ポスプロでそのLUTを当てて再現もできます。これは凄くいいなと思いました。


――ダイナミックレンジや画質の面で、従来のDSMC2シリーズと違いを感じることはありますか?

KOMODOはグローバルシャッターを搭載しています。例えば、電車を撮影した場合、見慣れてしまっている電車の歪みがありません。逆に最近ではローリングシャッターに慣れ過ぎていて、歪まないのが不思議に感じるぐらいです。あとは、フラッシュも試しましたが、光の光芒が線になることはありませんでした。

画質やダイナミックレンジに関しては、そんなに従来のREDとは差は感じません。従来のREDとは違うのは圧縮レートが細かく選べません。MQ、HQ、LQの3種類です。

私が手元に届いたときは、MQとHQしかありませんでしたが、最近になってLQが追加されました。その3つがあれば、結構十分だなと思いました。KOMODOはREDCODE RAWのR3Dで撮れます。あの小ささで、16ビットのR3Dが撮影可能ということが最大のアドバンテージだと思います。

ノイズに関しては、少しあります。これはグローバルシャッターの影響だと思います。ただし、いろいろ検証してみると、ISO1600に上げれると、ハイライトも綺麗に収まることがわかりました。当初はISO1600で撮ろうと考えましたが、ノイズが上がるので、最終的にはISO1000ですべて撮りました。

ノイズリダクションテストも行いました。Resolve用のNeat Videoのノイズリダクションをしたのですけれども、サンプルを撮って試したところとても綺麗になります。ノイズリダクションは、約90ドルぐらいで購入ができます。パッと処理するだけでISO800より綺麗にすることができます。それもRAWの状態でノイズキヤンセルできるのも強みだと思います。

――KOMODOのイメージセンサーはスーパー35mmですが、スーパー35mmのメリットやデメリットをどのようにお考えですか?

私は「るろうに剣心」をRED MONSTROで撮ったこともあり、スーパー35mmの良し悪しはわかります。小型が特徴であるKOMODOというプロダクト特性を考えたときに、これにフルフレーム搭載は少し意味がないかなと思いました。私自身、スーパー35mmでずっと撮影をしていたこともあり、そんなに気にはなりませんでした。

――今回の作品は、どのようなレンズと組み合わせて撮影をされましたか?

1つはTOKINA CINEMA ATX 11-20MM T2.9です。このレンズは面白いと思いました。RFマウントが良かったのは、何のマウントでも変換できるところです。

それと、今回の都内の撮影場所は、暗いシーンが多かったので、ファーストレンズ(ZEISS SUPER SPEED)を借りて使いました。T1.3と明るいのが特徴です。

私は昔よく使っていたレンズで、小型なのが特徴です。近年のシネマレンズは、どれも大型化の傾向にあります。LeicaのSummiluxやSummicronになると、ボディの2倍ぐらいの長さになってしまいます。しかし、ファーストレンズはあの小ささで、T1.3です。クオリティもよくて、フレアもいい。KOMODOに対して、大型化の問題をどうやって防ごうかなと考えたときに、ファーストレンズの組み合わせが一番いいなと思いました。

アクセサリーは、Wooden Cameraのマウント変換とトップハンドル、バッテリーアダプターを使って撮りました。バッテリーは、BebobのMICROにして、できるだけ小型化を実現しました。そして、MoVI Proに乗せて持った瞬間にあまりの軽さに感動しました。動きやすいし、結構無理な体勢もできる。このぐらい軽ければ、MoVIの意味があると思いました。

――どのような解像度で撮影をされましたか?

メインは6Kと4Kです。たまに5Kで撮りました。KOMODOの6Kは最大40Pまでです。残念ながら4Kまで落とさないと、60Pにはなりません。ハイスピードはそれほど強いカメラではありません。2Kは120Pに対応しますが、少し怖くて本番撮影では使用しませんでした。

6Kは、Colorfrontようなソフトウェアを使用すれば8K現像も可能となります。あとは6Kや5Kで撮って、納品が4Kであれば、オーバーサンプルリングで綺麗になるし、小さいフォーマットを作って、疑似ルックアラウンドにする。もしかしたら、あとで、スタビライザーをかけられる余裕もでたりします。

――今後、KOMODOでどのような作品を撮影したいと考えてしますか?

KOMODOは、シンクにも対応していますので、マルチカメラの撮影も可能です。KOMODOは決して高くはありませんから、恐らく結構な人が購入するのではないかと思います。例えば知り合いからKOMODOを借りて、プレート上に3台を並べた撮影が実現できるのでは?と考えています。今まではMONSTROで3台揃えるとなると偉い値段になるので、なかなか実現はできませんでした。

KOMODOは、R3Dやカラーマネージメントが結構しっかりしており、RAWで撮影が可能というところが僕にとっては大きいなと思っています。それ故、撮って出しでベストな画が撮れるというカメラではありません。ひと手間加えて使うイメージのカメラです。使い方を分かれば、ぐっとクオリティが上げられる。RAWなので、フレキシブルにさまざまな形にできると思います。

txt・構成:編集部


Vol.11 [Camera Preview 2020] Vol.013