Fanicon登録者やチケット制ライブ配信サービス利用者は無料で使用可能

正面、左、右、床と4面に敷き詰められたLED。その中に立つと視界を覆いつくす映像に圧倒される。ここは会員制のファンコミュニティアプリ「Fanicon」を運営するTHECOOが、Fanicon利用者のために設立したスタジオ「BLACK BOX3」だ。

ここは、そのFaniconに登録しているアイコン(アイドル、ミュージシャン、スポーツ選手、俳優、芸人、インフルエンサーなどFaniconを通じてファンとコミュニケーションをとっている情報発信者のこと)もしくは、THECOOのチケット制ライブ配信サービスを利用すれば無料で使用できる。

この4面LEDの「BOXスタジオ」だけでなく、他の階には本物のレンガ張りのアンティーク調配信用スタジオ「BRICKスタジオ」も用意されており、そこもスタジオ使用料は無料というのだから、かなりの太っ腹だ。まさに、アイコン登録者への無料サービスで使えるとは思えない贅沢ぶりなのだ。

VOL10ブラックボックスサブ写真
アンティークのインテリアが特徴のBRICKスタジオ

背面、両側面、床面の4面LEDパネルを常設

正面、左、右の3面のLEDは3.9mmピッチの高さ4m、奥行4m、幅9mの空間を作り出している。床のLEDも4.8mmピッチと荒くなるものの、激しいライブでアーティストが飛び跳ねたりしても問題ないタフさを持っている。

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普通の映像を床面含めて4面に引き伸ばして映像を映し出すことも可能
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床面LEDは靴で上がっても問題ない。飛んだり跳ねたりしても耐えられる

そこに写し出す送信システムはdisguiseのvx 2を使用しており、全面合わせると4Kにおよぶ映像送出を管理している。カメラはパナソニックの4Kインテグレーテッドカメラ「AW-UE100K」4台と「AW-UE150K」1台の計5台で、サブコントロールルームから操作してリモート撮影という最先端のシステムだ。

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サブコントロールルーム
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メディアサーバーはdisguiseのvx 2
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リモートカメラ「AW-UE100K」

それぞれのカメラはスイッチングを切り替えるごとに、背景のグラフィックも選ばれたカメラに合わせて最適な映像に切り替えるカメラトラッキング機能も備わっている。

ただ、前述のとおり、3.9mmピッチのLEDに1/2.5インチのイメージセンサーのカメラだとどうしてもモアレが気になるのではないか?と、想像してしまう。実写のような全面に映像が出るタイプの素材だとそういった弊害が出るかもしれないが、主な使用用途のグラフィカルなコントラストの強い映像を流す分にはそんなに目立たない。

最初、真俯瞰の天井の吊りカメラだけ、なんで高価なAW-UE150Kを使っているのかが謎だったが、実はこのカメラだけ1インチセンサーを採用している。LEDのピッチも4.8mmと広く、被写体までの距離がLEDから近い床に向けたカメラだけ比較的被写界深度の浅い1インチセンサーのカメラを採用しているのは絶妙なバランス感覚だ。このスタジオに合わせてLED、送出、カメラと全ての設備を常設のシステムとして組んでいることでギリギリのラインを攻められている。

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天井の吊りカメラはAW-UE150K

現段階ではインカメラVFXのようにカメラの動きに合わせて3DCGの背景が連動し、疑似ロケ撮影が可能な設定はされていない。ただ、1カメできちっとカットを積み上げて行く撮影ではなく、5カメマルチでリアルタイムスイッチングする用途なら十分すぎるポテンシャルを備えている。

このスタジオが、ネットを通じてファンとコミュニケーションをとるFaniconから派生していることを考えると、このようにリアルタイム性の高い配信スタジオという現状のようなシステムが合っている。しかも、この4面LEDに出す映像素材のガイドラインもBLACK BOX3のサイトに明記されおり、映像素材の作成も、3DCGで作るのに比べたら格段に敷居が低く、いろいろなバリエーションが組めそうだ。

4面LEDの視覚効果で刺激的なライブ体験を実現

スタジオ新設の目的は、アーティストやクリエイターたちと一緒に「オンラインライブの最適解を見つけること」。だからこそ、一般への貸し出しはせず、Faniconやチケット制ライブ配信サービスを利用するクリエイターのみに提供するという。

今の時期、なかなかミュージシャンがライブをしたり、タレントのイベント関係がままならない状況で、数少ないファンとの交流の場が配信ライブである。ただ、それも観客を入れないことで小規模になってしまうことも多く、アーティストも通常のライブ時と同じテンションまで持ち上げていくのは難しいと聞く。

でも、このような通常のライブとは違う表現の仕方を模索できることで、アーティストにとっても新たに挑戦するというモチベーションが持てるし、ファンにとってもスペシャルなライブ体験をすることができそうだ。

小林基己
MVの撮影監督としてキャリアをスタートし、スピッツ、ウルフルズ、椎名林檎、リップスライム、SEKAI NO OWARI、欅坂46、などを手掛ける。映画「夜のピクニック」「パンドラの匣」他、ドラマ「素敵な選TAXI」他、2017年NHK紅白歌合戦のグランドオープニングの撮影などジャンルを超えて活躍。noteで不定期にコラム掲載。

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