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GH5やBGH1で活躍中のライブ配信エンジニアにGHシリーズの魅力を聞く

カメラマンやクリエイターはどんな思いでGHを選んでいるのか?第3回はライブ配信エンジニアの前田進氏。主に医療系などのライブ配信を手掛ける前田氏に、GHを選ぶ理由や新製品GH5 IIへの期待を聞いた。

前田進|プロフィール
前田進 1980年生まれ。卒業後は長野県小諸市のケーブルテレビ局にキャスター兼記者として就職。2008年からフリーランスして都内外のCATV局のニュース取材やリポーターとして活動を開始。現在はワンストップのライブ配信フリーランスエンジニアとして、年間100本以上の配信現場に当たっている。
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前田氏所有の機材。LUMIX GH5×1台、BGH1×2台

元職はキャスター兼記者のライブ配信エンジニア兼カメラマン

――現在はどのような業務に取り組んでいますか?

前田氏:

今は医療系のライブ配信が多いです。一般の方はご存じないかも知れませんが、日本にはさまざまな分野で活躍する著名な先生方が大勢いて、各領域の投薬・臨床結果、エビデンスなどを発表する講演会が頻繁に開かれています。これをライブ配信するために日本全国を飛び回ってますが、コロナ禍で自由な外出が制限される中、多くの医療関係者に利用頂いています。
このような仕事では配信中の中断は許されません。最近はコンパクトで高性能な機材が増えたので、一人でもできないことはありませんが、トラブル時に迅速な対応ができません。特に配信は、映像、音声だけでなく、配信用ネットワークなど、いろいろなことに気を配る必要があるし、マルチタスクでやらねばならないことがたくさんあります。なので、配信のときは二人体制が基本です。

――撮影も行うと伺っておりますが、どのような業務の撮影でしょうか?

前田氏:

最近は減りましたが、幼稚園の舞台撮影とか運動会の撮影をしています。長野県のケーブルテレビに勤めていた頃から、通常業務としてやっていました。地方のケーブルテレビは基本的に地元密着型なので、こういう仕事が多いです。キャスターとして就職しましたが、スタッフが少ないので撮影から編集まで全部の作業を経験しました。このお陰で、フリーになった後もイベント系を中心に仕事を続けることができました。
幼稚園の仕事では、撮った映像を編集してDVDあるいはBlu-rayディスクに焼いて販売します。最近は密集・密接を避けるために催し物の配信も増えていますが、そもそも幼稚園の撮影は要望がすごく厳しいです。
例えば、学芸会は舞台上の人の動きがすごく複雑です。広いステージでバラバラの位置にいる園児が順繰りで矢継ぎ早にセリフを言ったり、予想だにしない動きを唐突に見せる子も日常茶飯事です。とにかく出演者全員を漏らさず押さえる必要があります。運動会では「徒競走に出たうちの子が3秒しか映っていない」みたいなクレームが保護者から来ることも。要するに全員が平等に写っていないといけないので、すごく気を遣います。

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幼稚園の舞台撮影はGH5があったからこそ乗り越えられた

――撮影にはどのような機材を使っていますか?

前田氏:

フリーになった最初の頃はPD-170やVX2100を使用していました。カメラの台数分カメラマンを用意する必要があり、人件費やスタッフ確保で苦労しました。そうしてようやく幼稚園が希望する映像に近いものを押さえることができましたが、人的ミスは完全に無くすことができず、冷や汗を流す場面もありました。
ミラーレス機を使うようになったのはLUMIX GH5からです。このときは幼稚園のイベント撮影がメインでした。なかでも4K60Pは編集時にクロップできるので小さく写っている子供の画を拡大したりと重宝します。正直、GH5の4K収録+トリミングのお陰で幼稚園との信頼関係が高まりました。
それからGH5は映像撮影でも一眼レフ形なので園児が全然警戒しません。なので自然な表情が撮れます。業務用カムコーダーみたいに大きいカメラを担いでいるとテレビ局の取材が来た!と勘違いした園児が興奮し、もう収拾が着きません。
幼稚園のビデオ撮影では、子供の笑顔が欠かせません。カメラも小さいほうが子供が安心するのでリラックスした自然な表情が引き出せます。それから私からしゃべりかけながら撮影するので手ブレ補正は絶対に必要です。ピントもボケてはいけません。
大勢の子供をワンフレームに収めるとき、ボケをウリにしているフルサイズ機は比較的避けるようにしています。あまり必要としていないメリット部分ですし、マイクロフォーサーズ機の方が完成した映像のフォーカスが安定しています。
カメラを見ている子供の顔が鮮明に写っていることがイベント収録の必須条件です。

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前田氏所有のGH5

――GHの画質はどのように評価されていますか?

前田氏:

GHは教育系イベント収録現場において十分過ぎるほどのポテンシャルを持っています。画質は言わずもがな、パリッとしたディテールは編集していて気持ちがいいです。また撮影現場においても従来の業務用カムコーダー以上に軽快な立ち回りができて、自然な表情が引き出せます。
DMW-XLR1を用意すれば業務用マイクを気軽に扱え、レンズ交換を行うことで暗所の舞台撮影では引きでも寄りでも高画質で対応可能。そして何より一式揃えてもフルサイズ機ほど高額になりません。GH5は必ず持っていく一台です。

BGH1はシンプルな機能がお気に入り

――所有機材の中でもマイクロフォーサーズ機のBGH1の存在が目を引きます。なぜ2台導入されたのでしょうか?

前田氏:

医療系の配信のメインで使っているのがBGH1です。私は収録するにしてもフォーカスの確認性を上げたくて、外部モニターのATOMOS NINJAを後から付けるため、最初からカメラボディにモニターは必要ないのではと思っていました。日頃からRED KOMODOみたいなボックス型カメラがパナソニックにあったらいいなと思っていたら、BGH1が登場したので購入しました。
それまで使っていた他社メーカーのビデオカメラに比べるとBGH1は画が圧倒的にきれいです。医療系現場に持って行ったら撮影した画を見たクライアントがすごく気に入り、次もこのカメラにしてくれと言われました。機材の価格が格段に違うので撮影料が上がりますとお伝えすると、それでもOKが出ました。配信映像は720Pでそれほど高解像度ではないですが、映像のプロではなくても直感的に画の良さは分かるんですね。その後、もう1台買い足して今はBGH1×2台態勢です。

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――普段はどのようなレンズをお使いですか

前田氏:

私は機動性重視です。幼稚園の撮影では逃げる園児を追いかけて園庭を走りまわるのでレンズは軽くて小さい方が良いです。マイクロフォーサーズは万が一落としてもコストパフォーマンスを含めいろいろな意味でダメージが少ないですし。
高倍率ズームもたまに使いますが、35mmフルサイズ換算で35~70mmクラスが好きです。動画には子供たちの声が入らないと意味がないので自分の体で稼ぐというか、被写体に近づくことが基本です。餅つき大会では「どんな味?」「柔らかいの?」みたいなことを質問しながら近づいていきます。子どもたちがコメントを返してくれて、それで初めて幼稚園ビデオの良さが出てきます。それに広角で近づくとパースペクティブが強調されて画面に迫力が出ます。
このほか35mm判換算で24mmの単焦点レンズ「LEICA DG SUMMILUX 12mm F1.4」なども軽いので気に入っていますが、とにかく今はマイクロフォーサーズ用レンズを中心にレンズを揃えています。以前はBlackmagic Pocket Cinema Camera 6Kも持っていて、スーパー35mmで6Kを撮っていましたが、キヤノンEFマウントで、マイクロフォーサーズと2ライン揃えるのは厳しいので手放しました。

GH5 IIを活用してどの角度からでもステージが見られるライブ配信を行いたい

――新製品のGH5 IIを使った感想を聞かせて下さい。

前田氏:

新しく搭載された配信機能は、YouTubeやFacebook向けだと思いました。紐付けが簡単で配信ボタンを押すだけで配信可能です。たとえばライブ会場にGH5 IIを3台用意し、上手、下手、センターに設置。HDMI信号をスイッチャーに繋いで、スイッチャーで選んだ映像をメインで配信しながら、それぞれのカメラの画を単体で配信すれば、視聴者の好きな角度からステージが見られます。
GH5 IIはUSB-C給電ができ、配信用バッテリーもカメラのバッテリーを使うのでバッテリー切れの心配がありません。おまけにエンコーダーがいらないためケーブルも不要です。もし業務で活用できれば、セッティングと撤収作業が楽になると思いました。
また、すごく感覚的な答えですが、GH5 IIは撮っていてすごく楽しかったです。本当に小気味よく撮れたなという感じで軽いシャッター音も心地良いです。仕事では動画ばかりで静止画はあまり撮りませんが、15mmの単焦点レンズを付けて、ぶらっと写真撮影をしたらすごく楽しかったです。

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前田氏のGH5 IIのセッティング例。RODEのWireless GOを搭載して、vlogのようなライブ配信ができたら面白いのではないかと語る
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――GH5 IIにあったら良かったという機能はありますか?

前田氏:

USBを使って外部ストレージに記録できる機能ですね。それから私は配信がメインなのでLANケーブルで映像データを送るNDIが欲しいです。パナソニックのCX350はNDIに対応していますが、やっぱりGH5 IIはそこまでプロユースじゃないということでしょうか?次に登場するGH6には搭載されてほしいと願っています。

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中村文夫|執筆者プロフィール
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。日本カメラ博物館、日本の歴史的カメラ審査委員。


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