レンズ部門のノミネート発表

レンズ部門は、2021年に発売されたシネマレンズに焦点を当ててノミネートを選んだ。映像業界ではここ数年、フルフレームフォーマットを希望する撮影監督が増えており、シネマレンズメーカーはフルフレームの新シネマラインや焦点距離を拡張する動きが盛んだ。その影響もあって、今年のノミネートはフルフレームシネマレンズが多数を占めた。

今年のレンズ部門ノミネートには選ばれなかったが、中国を拠点とするLaowa、Vazen、meike、DZO Filmなど新興シネマレンズメーカーがとても元気だ。ドローンやスマートフォンで圧倒的な地位を築いている中国メーカーだが、シネマレンズ業界でも魅力的な価格でフルフレームフォーマット対応製品が続々と登場してきている。シネマレンズ業界は今後、CMや映画で選ばれる老舗シネマレンズメーカーと一般的な作品制作に選ばれる新興シネマレンズメーカーの二極化が予想される。

レンズ部門にノミネートされた製品は以下の通りだ。

■Tokina CINEMA ZOOM 25-75mm T2.9

受注開始:2021年5月28日 供給開始:2021年7月
希望小売価格:税別657,800円

PRONEWS AWARD 2021 VOL.02レンズ部門説明写真

スーパー35mmをカバーする標準域のシネマズームレンズ。RED KOMODOやソニーFSシリーズ、Blackmagic Pocket Cinema Cameraシリーズなどに対応する。Tokina Cinema ZOOMラインは、「25-75mm T2.9」、「11-20mm T2.9」、「50-135mm T2.9 MK II」のシネズーム3本構成となる。同ギアポジションのデザインを採用し、ズーム中にフォーカスを維持するためのパーフォーカル設計やフォーカス全域でブリージングの発生を抑制、低ディストーション等、3本で機械的および光学的特性が一致するように設計されている。

■ARRI Signature Zoomシリーズ4本

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ARRIはSignatureシリーズのズームレンズ「Signature Zoom」4機種を発売した。Signature Primeとトーンの一致が特徴で、「16-32mm T2.8」「24-75mm T2.8」「45-135mm T2.8」「65-300mm T2.8」をラインナップするSignatureズーム共通の特徴は、4本すべてT2.8の最大口径で、シリーズ通して16mmから300mmまでをT2.8でカバーする。さらにエクステンダーを併用すれば16mm~510mmまで広い焦点距離を利用することが可能だ。

■FUJIFILM Premista 19-45mm T2.9

発売日:2021年1月28日 希望小売価格:オープン

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富士フイルムは、ラージフォーマットセンサー対応のシネマカメラ用ズームレンズ「Premista」シリーズの広角ズームタイプを発売した。Premistaシリーズはワイド、標準、望遠の3本構成となる。Premistaシリーズ共通の特徴は、各社プライムレンズとの親和性だ。Premistaはナチュラルで、色の傾向はいわば偏りがない真ん中の色を実現しており、それゆえに他社製プライムレンズと組み合わせても、合わせやすいレンズと言われている。また、Premista28-100、Premista 80-250とレンズ前枠径や3連リングのギア位置が共通で、効率的な運用が可能としている。

■ZEISS Supreme Prime Radiance新焦点距離4モデル

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カールツァイスは、フレアとコントラストが特長のハイエンドシネプライムシリーズ「ZEISS Supreme Prime Radiance」に4本の焦点距離モデル(18mm、40mm、65mm、135mm)を追加した。Supreme Prime通常版同様、Supreme Prime Radianceのイメージサークル径は46.3mmあるため、ほぼすべてのシネマカメラのセンサーサイズをカバーする。

Supreme Prime Radiance 18mmと135mmは、既存のSupreme Prime Radianceシリーズ(焦点距離21mmから100mmまでの7本)のカバー領域をワイド側とテレ側に拡大。Supreme Prime Radiance 40mmと65mmは、35-50-85mmという定番焦点距離の間を埋め、人物の半身アップやフェイスショットなど、デリケートな心理描写を得意とする焦点距離として映像表現を深めるとしている。

■Angénieux Optimo Primeプラチナセット12本セット

Angénieuxはフルフレームプライムレンズシリーズ「Optimo Prime」のすべて揃った12本のプラチナセットを発売した。T値は18mmと200mmを除いて1.8を特徴とする。AngénieuxのOptimoズームのルックを継承したプライムレンズで、レンズの構造にモジュラー形式の採用しており、絞りユニットをカートリッジのように交換可能。標準は9枚の円形絞りだが、3枚の三角形や楕円を選べる。中央のIOPと呼ばれるステージにはガラスを1枚変更可能で、コーティングしていないガラスを入れて反射を増やせる。各レンズの背面にもネジ付きフィルターステージがあり、合計3カ所の設定が可能。撮影監督の方の好みのテイストをレンズで実現できる。

■Leitz Cine LEITZ ZOOMシリーズ

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Leitz Cineは、46.5mmのイメージサークルを持つシネズームレンズ「LEITZ ZOOM」を発売した。ワイドズームは25-75mm T2.8、テレズームは55-125mm T2.8で2本ともランピングはない。前径は両方とも114mm。Leitz Primeのルック、品質に限りなく近いズームレンズだという。Leitz Primeとのマッチングだけでなく、Leitz Summilux-C、Summicron-C、Thaliaなどの他のレンズシリーズとのマッチングも良いので多様な使い方が可能としている。

以下がレンズ部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2021カメラ部門 ファイナリスト

  • Tokina CINEMA ZOOM 25-75mm T2.9
  • ARRI Signature Zoomシリーズ4本
  • FUJIFILM Premista 19-45mm T2.9
  • ZEISS Supreme Prime Radiance新焦点距離4モデル
  • Angénieux Optimo Primeプラチナセット12本レンズセット
  • Leitz Cine LEITZ ZOOMシリーズ

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2021 レンズ部門 ゴールド賞

カールツァイス Supreme Prime Radiance新焦点距離4モデル

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受賞にあたり、カールツァイス 小倉新人氏よりコメントをいただいた。

毎年数多くの製品が発表・発売される中、映像業界随一の情報媒体であるPRONEWS様に、本製品をご評価いただけたことは大変光栄です。本製品はクリーンな描写でハイスペックな姉妹レンズ(ZEISS Supreme Prime)と異なり、「光の輪郭に柔らかさが残る写り」を特長としています。数値性能の比較のみでレンズを語るのではなく、脚本と演技を引き立てうる、情感に訴える描写性能に着目いただけたことに、社内関係者一同喜んでおります。

Supreme Prime Radianceが最初に直面した、そして最大のハードルは、これまでシャープネスとフレア低減に心血を注いできた設計者たちに、柔らかい描写と美しいフレアを求めることでした。研究設計チームにとっては、これまでの価値観を一旦リセットして臨むこととなった、大きなプロジェクトでした。

ラージフォーマットセンサー全域で破綻のないディテールを担保しつつ、全焦点距離11本の描写特性(柔らかさとフレアの色味と出方)を揃えたレンズの研究開発に2年以上の歳月を費やしました。新たにレンズコーティング組成を考案し、設計プログラムを組み、文字通り昼夜問わず計算を繰り返して作り上げた試作機での検証で、思わぬ反射が起きて設計をやり直すなど数々の問題に直面してきましたが、諦めずに本製品を世に送り出すことができてよかったです。

このレンズはすでに海外では封切り作品に使われているほか、2022年に公開予定の複数の邦画撮影にも使われています。YouTubeのプレイリストをぜひご覧いただき、劇場またはご自宅でその描写をお楽しみいただければ幸いです。

PRONEWS AWARD 2021 レンズ部門 シルバー賞

富士フイルム Premista 19-45mm T2.9

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受賞にあたり、富士フイルム株式会社よりコメントをいただいた。

このような賞を頂くことができとても光栄です。これまでも、FUJINONブランドから多くのシネレンズを世の中に送り出して来ました。今回のPremistaは「シネマの世界で存在感を高めるんだ!」というかけ声の下、開発をスタートしました。私たちがレンズ開発で最も大事にしている「クリアでナチュラルなルック」という特長を伸ばすと共に、現場の潜在的・顕在的なお困り事を解消できる製品を目指し、製販一体となって商品開発を進めて来たシリーズなので、とても嬉しく思います。

19-45mm T2.9の開発で特に苦労したのは、光学性能を高めつつシリーズ3本のギア位置を統一させたことです。標準・望遠・広角ズームは、フォーカスやズームを動かす際のレンズ群の移動量が異なります。ギア位置を統一するためには、レンズ群の配置に制限をかける必要がありますが、その与えられた制限の中で設計者は性能を出すことが求められます。

実を言うと、標準・望遠ズームの全長255mmに対し、全長が25mm短い広角ズームのギア位置統一は難易度が高く、一旦は諦めました。しかしながら、諦めきれない機構設計者が人知れず知恵を絞り、検討を継続したことで実現できたという裏話があります。現場の皆様にはその広角ズームも使用いただき、交換時の利便性とPremistaのルックを是非感じていただきたいと思います。

昨年のBroadcast&Cinema EXPO(00 FUJINON 02 FUJINON)など、PRONEWSを通じて多くの読者の方にPremistaの魅力を知っていただき、同時に私たちも皆様の声を聞くことができました。これからも頂いた要望やご意見と真摯に向き合い、新しい企画やレンズ開発に挑戦していきたいと思います。これからのFUJINONもどうぞよろしくお願いいたします。


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