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7月に発売になるX-H2S。これこそが富士フイルムの技術を集結したシネマ・ミラーレス
X-H2S登場。さらに進化するXシリーズのパワー
富士フイルムのミラーレス機で動画を撮影する一番の魅力は、多彩なフィルムシミュレーションを4Kで活かせることだ。長年富士フイルムが培ってきた数々のフィルムストックは、写真だけにとどまらず、多くのシネマの現場で愛されてきた「フィルム画質」をデジタルの動画で再現させることができる。特にETERNAの色味を使った24Pの映像で撮影を行えば、正にデジタルシネマそのものを描ける。そういった意味も含めて、個人的に富士フイルムのXシリーズをシネマ・ミラーレスと呼んでいたりもするのだ。
スチルカメラとしても評価の高い富士フイルムのXシリーズだが、まだまだ動画撮影の現場で使われている印象が少ない。実際に使ってみたいという人もいるとは思うが、なかなかきっかけがつかめずにいる人が多いのではないだろうか。そんな中、遂にこの7月、新機種「X-H2S」が発売になる。これが驚くほど素晴らしい一台に仕上がっているため、是非ここでその特徴を紹介したい。
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ズームレンズだけで挑むシネマの世界
まずは今回X-H2Sと、新しく発売になる「XF18-120mmF4」のズームレンズだけで撮影した映像をご覧いただきたい。後で詳しく述べるが、この18-120mmのレンズの完成度も素晴らしい。ミラーレスとズームレンズでここまでのクオリティが描けるのは正に富士フイルムの色づくりへのこだわりと技術力の高さのおかげでしかないといえるだろう。
X-H2Sと新しく発表された18-120㎜のズームレンズだけで撮影した作品Hope
メイキング映像。半日という時間で撮影できたのもカメラの機動力があったからこそ
待望の積層型スーパー35㎜相当のセンサー搭載
積層型のセンサーを搭載したX-H2Sは「Speed and Power」と形容され、最新技術が詰まった一台だ。写真機としても毎秒40コマのブラックアウトフリーの撮影が可能で、AFの性能も、EVFの見やすさも、手振れ補正も他社には見られない独自の技術で見事な仕上がりとなっている。そして今回X-H2Sはシネマカメラとしても、大きな進化を遂げているところが注目のポイントだろう。
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内部記録でProResが遂に登場
まずは内蔵記録でApple ProRes 422(HQ、422、LT)を選ぶことができるのが素晴らしい。記録メディアとして採用されたCFexpress Type Bカードに収めることができる。CFexpress Type BカードなのでPCへのコピーも従来のSDカードに比べて高速だ。動画編集をするにあたり、今でもProResほど「高画質・高レスポンス」のコーデックは他になく、4Kであってもパソコンのスペックにあまり依存せず快適な編集作業ができるのがProResの特徴だといえるだろう。
また内部メディアで撮影が行えるので、このあたりも安心・安全であると同時に今までProRes記録を行いたいがためにつけていたNINJA、SHOGUNといった外部レコーダーは一切必要としなくなるのも利点になる。ミラーレスならではの機動力をさらに活かして撮影を進められるという訳だ。
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また新たにF-LOG2が実装され、更にDレンジの広いLOG撮影が行えるようになった。これによって14+STOPのダイナミクスレンジを捉えることができるようになり、より美しい色と諧調をシネマの作品に活かせる。
冒頭に書いたように、富士フイルムのXシリーズに搭載されるETERNAのフィルムシミュレーションがシネマ画質を支えているのだが、より「美しく」カラーグレーディングをFLOG2で行えるようになった。感度はISO1250からの撮影になるものの、その色味の表現が、個人的にはよりシネマライクな質感に仕上がっていると実感した。
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最大6K(6240×4160)記録がもたらす様々なメリット
また4:3の6Kによる撮影も、今回の作品作りには欠かせなかった。30fpsまでではあるが、6240×4160という大きさの解像度で記録することで2つの大きな利点が得られる。まず4Kの解像度でいろいろなクロップが行えるという点だ。
今回の作品ではクレーンによる俯瞰のシーンがあったのだが、編集時に4Kの解像度を確保しつつ、クレーンの映像を回転させるダッチロールの効果を加えることができた。撮影時にダッチロールを行うとなると実に大変なのだが、正に6Kの特性を活かした表現演出といえるだろう。ちなみに4Kであれば120fpsまでの撮影を行うことができる。
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6K撮影におけるもう一つの利点はVFX合成における利点だ。作品では3DCGとの合成を行っているのだが、ProResの6K解像度の素材でVFX合成をすると、4Kに小さくした際により馴染みのよい結果を得ることができる。ミラーレスのカメラでここまで精度の高いVFX合成ができるようになるとは夢のようだ。おそらくミラーレスとズームレンズという組み合わせでハイレベルのVFXに挑めるのは、X-H2SとXF18-120mmというコンビネーションが捉える画質の高さがあるからだ。時代を変える機材がいよいよ現れたな、とこれからの可能性にワクワクした。
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驚異のズームレンズXF18-120mmF4 LM PZ WR
撮影ではX-H2Sと新しく発売になる「XF18-120mmF4 LM PZ WR」のズームレンズだけを使用したのだが、このレンズの小ささと軽さもさることながら、そのクオリティの高さに圧倒された。
まずは18-120㎜という驚異のズーム域をF4通しで撮影できるので、動画としてズームを積極的に使えるというのが大きな魅力だ。18mmはワイドとして十分で、120㎜は表情を捉えるのに最高の焦点距離だ。一本あれば欲しい全ての画角を網羅できるといっていいだろう。そしてその画質もキレがよい。6Kを表現するのに十分なシャープさと、シネマならではボケ味、その表現力の高さは、作品を見て頂ければわかっていただけると思う。
さらにズームリングに加え、いわゆるシーソーリングやズームボタンなど、さまざまな方法でズームをコントロールすることができる。撮影ではリモートフォーカスコントールをズームリングに装着し、カメラマンがカメラの動きを担当して、私がズームをリモートでコントロールするスタイルをとった。軸ズレもおきず、AFも補正も素晴らしいので、ストレスのないオペレーションを現場で実現することができた。またズーム全域でセンサー面から近接60cmまで寄って撮影できるので、かなりアップの画づくりが可能だ。
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欲しい機能が満載で加速する機動力
そして7段という手振れ補正も、X-H2Sの大きな特徴といえるだろう。撮影ではジンバルを使用したのだが、手持ちでもかなり手ブレを抑えた画を狙えるのでドキュメンタリーの撮影などにおいても、その効果を大いに期待できる。インターフェースにもHDMIのノーマル端子が搭載されていたり、マイクとヘッドホンジャックがしっかりとついていたり、グリップの握りやすさも、動画撮影のスタイルとして一層の使いやすさを提供してくれる。
オプションにはなるが、背面に接続する専用ファンやリモートコントロールさせるためのモジュールグリップなども発売になる。手に取ってすぐにハイクオリティの撮影を行えるという、その機動力とポテンシャルの高さに非の打ち所がないカメラであることを感じさせてくれる。
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まとめ
今回の撮影は半日だったにもかかわらず、X-H2SとXF18-120mmF4 LM PZ WRのセットアップのシンプルさのおかげで驚異的な撮れ高を実現することができた。撮影クルーも私をいれてたった5人だ。クレーンやスライダー、ジンバルといった様々な特機に加え、ズームのリモートコントロールなどなど撮影演出にこだわり、更にはVFXの合成をするために、入念なライティングを現場で行えたのは、このカメラとレンズの組み合わせがもたらたす機動力の高さのおかげだったと感じる。
更には編集においてもProResという高画質の素材をサクサクと動かせるだけでなく、高品位のVFXの作業をシームレスに進めることができて、ただただ次世代を感じさせてくれた。昨今「新しいカメラ」の発表・発売に驚きが少なくなってきた中、X-H2Sの登場は新しい未来を見せてくれる一台になりそうだ。
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