XR Experienceで奇妙(Weird)な体験作品を
SXSW2023の会期中盤となる3月12日~14日の3日間は、VR映像作品を中心としたコンテンツ体験できる「XR Experience」が開催された。薄暗い雰囲気の展示会場には約30のブースが並び、毎日11時の開場前には行列ができる人気ぶりだ。その日1日の予約がすぐに埋まってしまうために、残念ながら体験できなかったコンテンツも多い。中でも特に人気だったコンテンツをいくつかピックアップして紹介していこう。
Symbiosis
今年のXR Experienceで一番の話題が、この「Symbiosis」だ。複数の赤いコードが繋がれた宇宙服のような体験装置が異様な雰囲気を醸し出していた。気候変動によって人類が暮らせなくなった200年後の世界をテーマにしており、嗅覚や触覚など身体感覚を共有する新たな生命体の感覚を体験できるという。多すぎる配線による機材トラブルでうまく体験ができていない様子もあったが、周りから見ても是非とも体験してみたいと思わせるブースだ。
今年の展示会場となったFairmont Hotelでは「XR&Metaverse」がテーマのカンファレンスセッションも行われ、XR系のクリエイター等が集まる場所となっていた。本作のクリエイターは「The Art of Sensory XR feat. Polymorf & IDFA DocLab」というタイトルのカンファレンスセッションにも登壇。
VRの映像と音声に加えて、匂いや温度や質感といった全身の感覚を再現し、メタバース上の体験を身体感覚としてフィードバックする技術について議論していた。このように、展示会に作品を出展しているクリエイターが登壇するセッションも多く、コンテンツの裏側の技術的な話が聞けるのもSXSWも魅力だ。
Rockets, by Pillow
ベッドに寝そべりながら体験するVRヒーリング系のコンテンツかと思いきや、内容はロケットを操作し、パズルを解き、モンスターを倒していくゲームだった。寝そべってプレイすることで、幼い頃に頭の中で空想していた世界を再現しているような不思議な感覚を味わえる。VRの没入感によって年齢や性別などの自己認識が変化する感覚を体験できるのは非常に面白い。
aespa VR Concert at KWANGYA
昨年のSXSWではMegan Thee Stallionのバーチャルコンサートを発表したAmaze VRが、今年はKpopをフィーチャーしたコンテンツでカムバック。4人組のKpopグループ「aespa」のメンバーそれぞれに対応するアバター「ae」が登場し、目の前でパフォーマンスを行うバーチャルコンサートが体験できるエンターテインメント作品。
今年のMusic Showcaseの方には、BilllieというKpopグループが登場しそちらも話題になっていた。
Consensus Gentium
スマホの画面上で視聴するインタラクティブな映像作品。インカメラで自分自身の顔が常に撮影されており、AIの顔認識技術によって表情の変化を読み取り、ストーリーが変化していく。スマホに搭載されている監視技術に対する警告のメッセージを描いている。XR Experienceではこのように、VRに限らず新たな映像表現やストーリーテリングの手法についてのアイデアも取り上げられている。
XR Experienceで行こう
XR Experienceには今年も奇妙(Weird)な体験作品が多く集まっていた。いかにもSXSWらしいチョイスだと言える。全ての作品はこのリストになるが、やはり現場でのみの体験となる。さらに昨年もそうだったが、VRヘッドセットでの視聴は一度に体験可能な人数が限られるため、多くの来場者に対応できてないのは残念だった。今後の技術進化によって、この辺りの物理的な制約からも解放されることを期待したい。さらに会場にいなくても、この体験ができると、まさにXR Experienceを体現していると言えるのではないだろうか?
※VR映画作品などは、一部はオンラインからでも体験できる