IBC2023の現地レポートの第二弾は、配信やポスプロ、アクセサリー編をお届けする。
日本テレビ:映像編集の自動モザイク入れAIソフトウェア「BlurOn」
日テレはNTTグループのブースにおいてNTTデータと共同開発している映像編集向けのAI自動モザイクソフトウェア「BlurOn」を展示した。これはAIによって顔検出を行い、顔の部分に対してのみモザイクやぼかし、キャラクターの貼付けなどができる。認識精度は99.7%とのこと。これによりこれまで同種の作業にかかっていた時間を9割以上短縮できる。
変換処理はクラウドにアップロードして行われ、その変換速度は数秒程度と高速である。サービス提供形態にはAfter Effectsのプラグイン、Webブラウザからアップロード、またファイルを預かり変換して返却するなどがある。
IBC 2023では、従来からのモザイクやぼかし入れの機能を「For Video Blurring」とし、新たにAI自動マスキングのバージョン機能「For Video Masking」をベータバージョンとして初公開した。こちらはグリーンバックなしでもAIでマスクを生成するもの。こちらもその精度は非常に高く、髪も毛先までクリアにマスキングできる。映画やCM制作に耐えられるクオリティであるので、こちらのデモ映像をご覧いただきたい。
アドビ:AIを活用した新しいイノベーションを展示
アドビはPremiere Proのベータ版でAIで音声のノイズを自動的に低減する機能「スピーチを強調」を搭載した。これはAdobe PodcastのEnhance speechと同じ機能である。雑踏などで特定の人物の声を浮き上がらせることができ、バックグラウンド音をどのレベルで残すかを可変できる。またNABで発表された「文字起こしベースの編集」機能に要望が多かったという「あー」「うー」というフィラーワードと呼ばれる不体裁音を検出する「フィラーワード検出(Beta版)」機能を追加した。
Frame.ioではAWS S3バケットをFrame.ioに直接接続することができる新機能「Frame.io Storage Connect」のパブリックベータが公開された。これによってC2Cワークフローにおけるコスト削減とワークフローの効率化の両方が加速するだろう。
また展示はなかったが、IBCイノベーションステージのセミナーにおいて、先日正式発表した生成AI「Firefly」も含めたアドビのAIについて「著作権を侵害することなく生成AIの利用を広げる」というビジョンを、関係するマネージャーたちがオープンなディスカッションを行った。
ATOMOS:NINJAやSHOGUNシリーズの新製品を展示
ATOMOSはNINJA、NINJA ULTRA、SHOGUN、SHOGUN ULTRAの最新の製品群を展示した。これらの新製品は、すべてAtomOS 11を搭載する。
- 新型NINJA:AtomOS 11 5inch 1000nits
- NINJA ULTRA:AtomOS 11 5inch 1000nits Apple ProRes RAW+H.265(Dual Record)
- SHOGUN:AtomOS 11 7inch 2000nits
- SHOGUN ULTRA:AtomOS 11 7inch 2000nits Apple ProRes RAW+H.265(Dual Record)
またブラウザベースのクラウドエディターAtomos Editが、Premier Proにプラグイン的に連携できるようになった。クラウドベースのAtomos Editで各現場で分担して共同でラフ編集を行い、それをそのままPremier側に取り込んで最終仕上げをするというワークフローが実現する。
Ultrasync OneはRF駆動のワイヤレス・タイムコード/ゲンロック/ワードクロック・ソリューション。Ultrasync Blueはシンプル機能のBluetooth接続版。
キヤノン:屋内型4Kリモートカメラ「CR-N100」とリモートカメラコントローラー「RC-IP1000」
キヤノンはRTZリモートカメラの新製品「CR-N100」を展示した。CR-N100は4K30Pで光学20倍ズームレンズを搭載している。これによってキヤノンのPTZカメラは、今回のCR-N100から300、500、700と用途に応じた選択が可能となった。
また合わせて、これらのPTZカメララインナップに対応するリモートカメラコントローラー「RC-IP1000」も展示した。操作部は上段にタッチパネルディスプレイと設定ボタン群、下段左がレンズ操作、下段右がパン・チルト操作部になっている。7インチタッチパネルディスプレイを搭載し、IP映像を確認しながらカメラ操作をすることができる。表示映像は最大3×3まで可能。顔や瞳などをAF枠として設定、表示させて操作が可能。入出力はIPとSDIにも対応している。
Libec:電動ペデスタル「LX-ePed」
LibecはPTZカメラ向けの電動ペデスタル「LX-ePed」を展示した。PTZカメラが監視カメラ用途から、フルサイズセンサーを搭載して映像制作に利用範囲を広げる現在、従来のような固定ではなく、より高い映像表現をするためにカメラを動かすことも多くなっている。こうしたニーズに対応するための製品である。
車輪付きのスタジオバージョンも用意されている。リモコンは有線のみであるが、ワイヤレスで他システムともインターフェイスできるものも予定されているようである。