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IBC2023の現地レポートの第三弾は、制作から配信までの最新技術に関してをお届けする。

AIはどうなっているか

AIに関してはIBCでは様々なセミナーやカンファレンスが開催された。複数のカンファレンスに参加したが、共通した課題としては、現在進行系の生成AIが鍵になること、生成AIを利用する場合の著作権の扱いを決めていく必要があることという点に集約できる。

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たとえばIBC直前にアドビは「Firefly」を公式リリースしたが、アドビブースでの展示やデモはまったくなかった。これは生成AI自体はサービスではないこと、物理的なものがあるわけではないこと、日進月歩であることが物理展示に馴染みにくいことが理由ではないかと思われる。

そんな中で目に見える展示としては、更に進化したアドビのPremier Proのテキストベースエディティングの進化と、本講で既報である日本テレビの「For Video Blurring」のモザイクやぼかし入れ機能と、「For Video Masking」AI自動マスキング機能などが最先端であった。

XRを活用したライブプロダクションの例

IBC2023のアクセラレーターメディアイノベーションプログラムでは、XRを使ったライブプロダクションのトライアルが紹介された。このプログラムは、IBCが中心となって複数の企業が次世代に向けたさまざまなプロジェクトを共同で構築するもの。毎年8つほどのプログラムが行われている。

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その中の一つ、ライブプロダクションのプロジェクトは「GALLERY AGNOSTIC LIVE MEDIA PRODUCTION」と呼ばれ、どんな番組でも「TikTokを作る」のと同じくらい簡単に作れることを実証することを目的としている。

これからのライブメディアプロダクションのワークフローの進歩を探求し、デバイスにとらわれない、ハイブリッドな作業方法を介して、それらを現代にアップグレードし、既存のオンプレミスとクラウドの両方のデバイスのコントロールを証明することを目的としている。

モバイル端末を利用したジャーナリストがクラウドベースのライブ配信を行うもの。遠隔地にいるジャーナリストや制作、送出担当者がHMDを装着して、XRで構築されるいわゆる「サブ」を共有するトライアルを行っている。デモ映像があるのでぜひその様子をご覧になっていただきたい。

日本の地上波テレビ局がこういう方向性まで行くことはないのかもしれないが、クラウドベースの映像制作の中でもライブプロダクションのこれからの姿を具現化しているものとして注目に値する。

なお、このプロジェクトは全世界にオープンコールで参加を呼びかけており、今後もプロジェクトを継続していくとのことだ。

バーチャルプロダクション

バーチャルプロダクション、その多くはインカメラVFXであるが、20社ほどが展示とデモンストレーションを行っていた。

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その中ではソニーが一歩先を行っている。特に今回ソニーは、新たにバーチャルプロダクション向けの「Crystal LED VERONA(ベローナ)」を世界で初めて展示した。VERONAはデジタルサイネージのような人が直接視認するのではなく、バーチャルプロダクションにおいてカメラでディスプレイを再撮することを前提としたモデルである。

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新開発した独自のディープブラック&低反射コーティング技術により、深く引き締まった黒の表現と、隣接するLEDディスプレイやスタジオ用照明機材からの外光によるコントラスト低下を大幅に低減している。実際に見た感じでも明らかに黒が黒く、反射が極めて少ない。またDCI-P3を97%以上カバーする広色域に対応している。ピッチサイズは1.5mmと2.3mmの2タイプ。ディスプレイキャビネットは、アスペクト比は1:1でサイズは500mmである。

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またモニター再撮によってどうしても発生するモアレ対策として、プリプロ段階でモアレの発生をシミュレーションして、現場で対策を施しやすいようにする仕組みなども提示していた。

FILMBOX+

FilmBox+はCANAL+とその子会社SPIインターナショナルによるストリーミングサービスである。その特徴はスマートチャンネルというオンデマンドコンテンツをキュレーションしたプレイリストで、従来のリニアチャンネルと同様に連続的に再生される。つまりリニアチャンネルとオンデマンドコンテンツを自分で自由に番組編成できるサービスである。

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スマートチャンネルのプレイリストはCMSを通じて、新しい専用ストリーミングチャンネルをわずか数分で作成できる。このプレイリストは視聴者が作成して自分で視聴することはもちろん、プレイリストを他の視聴者に配信することもできる。また個人の視聴者ではなく、サービス提供者事業者が作成して配信することもできる。またアドレッサブルに個人を特定した広告配信も可能。

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FilmBox+はこれまでに全世界で157のスマートチャンネルを展開しており、SPIの主要地域であるヨーロッパ、アドリア地域、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、チュルキエでも視聴可能である。今後さらに多くのスマートチャンネルが提供される予定だ。

スマートチャンネルについて同社は、

リニアチャンネルは世界中で愛されている。視聴者は、従来のテレビのザッピング体験を彷彿とさせるような、良い映画に偶然出会うというセレンディピティを大切にしているからだ。スマートチャンネルは、オンデマンドとリニア視聴の良いところを組み合わせたもので、視聴者は膨大な番組ライブラリーをスクロールすることで、通常なら見逃してしまうようなコンテンツを発見することができる。

としている。

FilmBox+は、同社のWEB、スマホアプリ、Apple TV、Android TV、Samsung、LGのSmart TVアプリで視聴することができる。

WRITER PROFILE

江口靖二

江口靖二

放送からネットまでを領域とするデジタルメディアコンサルタント。デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。