2024年、晩夏。 久々に業務用ハンドヘルドカメラ界隈がお祭騒ぎになった。

ソニーから6年ぶりに新型カメラ「PXW-Z200」(以下:Z200)が登場したからだ。最後に発表された機種「PXW-Z280/Z190」(以下:Z280/Z190)の登場が2018年であり、さらにテレビロケのデファクトスタンダード機となった「HXR-NX5R」(以下:NX5R)から換算すると実に8年ぶりの新機種登場だ。

    テキスト
NX5Rとの比較。どのように変わったのかが気になる
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発表されるやいなや、SNSや私の周辺でもZ200の話題で持ちきりになった。そして同時に、公式情報や各メディアのレビューを目にしたコンシューマーからは様々な意見や評価が噴出した。

筆者はこの夏、発表・発売前からZ200を長期間に渡って使う機会を頂き、実際に幾つかの撮影現場にZ200を投入し収録、オンエアまで行っている。

そうした実践経験の視点から、ソニーZ200をどう評価したのかレビューしたい。

基本仕様

まず、スペックに関してだが、今回のレビューでは細かくは触れない。また、実業務で使わなかった機能に関しても、殊更にコメントは行わないつもりだ。

仕様や各新機能に関しては、こちらで猿田さんが完璧にまとめてくださっているので、まだ未読の方はぜひ先に読んでいただきたい。

Z200の基本スペックは以下の通り。

センサー 1.0型 積層型CMOSセンサー単板式
画素数 総画素数2090万画素/有効画素数1400万画素
光学ズーム比 20倍
焦点距離 24mm~480mm(35mm換算)
最大記録解像度/フレームレート 4K/120p(3840×2160/119.88Hz)
オートフォーカス BIONZ XR + AIプロセッシングユニット
475点の像面位相差AF(測距エリアカバー率・約81%)
NDフィルター 可変式電子NDフィルター(1/4~1/128)
音声収録 最大4チャンネル収録
液晶モニター 3.5型・約276万画素
SDI出力 SDI OUT:BNC、12G-SDI、6G-SDI、3G-SDI(Level A/B)、HD-SDI
入出力端子 HDMI Type-A / USB Type-C / LAN / TC(BNC)他
ネットワーク RTMP/S・SRT対応
外形寸法 約175.6×201.3×371.1mm
重量(本体) 約1.96kg

姉妹機のHXR-NX800もほぼ同等のスペックだが、搭載されている端子が一部オミットされているのと、それに伴ってか重量も約0.03kg軽量になっている。

本体サイズと重量

Z200を手にして、まず一番の感想は「小ぶり」で「軽量」という感嘆だ。

外寸法は約175.6×201.3×371.1mmで、印象としてはNX5RとPXW-Z150の間ぐらいのサイズ感。

本体重量は約1.96kgだが、オペレーション重量…すなわち、レンズフード・バッテリー(BP-U35・LCDフード・マイクホルダー・アイカップ)の最低限の純正パーツを取り付けると約2.4kgとなる。このスタイルでもショットガンマイクは付いていない状態なので、仮にAZDEN SGM-250LX(0.12kg)を取り付けると、約2.52kgがロケに臨める最低限の装備重量というところだろうか。

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マイクホルダーを取り外し、VFを折り下げると、かなりコンパクトになる
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Z200は4CH音声収録対応の上、入力にXLR×2系統に加えて3.5mmジャックでのマイク入力も追加

先のオペレーション重量で比較するとZ190で約2.8kg、HXR-NX5Rで約2.5kgとなっている(公称・いずれもマイクなし・小容量バッテリー装着)。

Z200とNX5Rはほぼ同じ重量になるのだが、Z200では重量バランスが見直され、レンズを軽量化して本体の後方に重心が移動したため手持ち撮影時のバランスが良くなっている。

また、レンズのワイド端が24mm(35mm換算)と広角化し、多くの場面でワイコン要らずとなった。そのため、テレビロケではワイコン必須だったZ280・Z190・NX5Rと比較すると、圧倒的に軽量なオペレーション重量となる(ワイド端とワイコンに関しては後述)。

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ワンマンロケでの撮影スタイル

さらに液晶モニターの展開・収納方法が新しくなり、ワンアクションで液晶モニターを使用ポジションに展開できるようになった。

また、従来よりも"より遠く"に液晶モニターが開くことで老眼に優しくなっている。遠くなったため、手持ち撮影時にカメラ本体を身体に押しつけてカメラを安定させるスタイルを取っても、液晶画面が近すぎずに見やすい。

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液晶モニターがやや遠くなったので老眼が始まった筆者には嬉しいデザイン

理想を言えば、液晶モニターヒンジ部分が前後にスライドして、視度調整可能なギミックになっていればなお嬉しかった。

カメラの左右バランスは良く、上部ハンドルを握って行うローアングル撮影などは、ハンドルに指を引っ掛けてカメラをぶら下げるだけで水平が取れてしまう。

本体の軽量化、重量バランスの見直し、ワイコン不要、手持ち撮影の安定―といった要素が相乗して、数字以上に軽量に感じるカメラになっている。長時間の手持ち撮影になることも多いテレビロケの現場では、この軽量さとバランスの良さは大変に魅力的だ。

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スッキリとしたボタンやダイアル配置

ズームレンズ

Z200は光学20倍のズームレンズを搭載している。同じ1インチセンサーを採用するZ150(2016年3月発売)は光学12倍であったため8年あまりの歳月の流れは大きい。

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1インチセンサーによる余裕のある画作りを感じる
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広角端

注目すべきはズーム比よりも、ワイド端の広角化だ。私の記憶する限りでは、ソニーの業務用ハンドヘルド機としては最広角の焦点距離を持つはずで、次点はPXW-X180/160の26mmだったと思う。

現在、テレビロケのフィールドで活躍している代表的な3機種のワイド端を比較すると、Z280:30.3mm/Z190:28.8mm/NX5R:28.8mmとなっており、手持ちで振り回しロケを行うにはちょっと広角が足りない…。ワイコンを取り付けての運用は必須という感じだった。

当然ながらワイコンを取り付けると、重量の増加や光学的特性の劣化など、広角を得るのと引き換えにしなければならないデメリットも出てくる。

重量の増加に関しては、例えばNX5R対応のワイコンZunow WCX-80だとプラス290gとなる。

NX5Rのオペレーション重量約2.5kgにAZDEN SGM-250LXとZunow WCX-80を追加すると、2.91kg。Z200をワイコン不要で考えると2.52kgだったので、NX5Rとの差は約400gにもなる。今はバッテリーをZ200はBP-U35、NX5RはNP-F770で計算しているため、それぞれBP-U70とNP-F970の現場標準仕様にバッテリーを増量すると、少し差は埋まるかもしれない。

それでもワイコンでカメラ前方が重くなるのではなく、バッテリーでカメラ後方に重量が増す分には、手持ち撮影でも手首や腕への負担の掛かり方はかなり違う。

さて「Z200はワイコン要らず…」と言っているが、本当にワイコンは不要なのだろうか?

NX5Rのワイド端28.8mmにZunow WCX-80のx0.8ワイコンを取り付けた場合、焦点距離は23.04mmとなる。これがデジロケに慣れているカメラマンの身に染みついているデジのワイド端だろう。それと比べると、Z200のワイド端は24.0mmと1mm近く狭い。広角側の1mmなので、その差は決して小さくはない。

しかしながら実際にワイコンなしのZ200でロケを行ってみると、ワイドの広さで困ることはほぼなかった。極端に狭い場所に行っていないというのもあるだろうが、24mmといえばミラーレス一眼カメラなどで使い慣れている画角というのもあり、カメラの位置取りに悩むことはなかった。

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24mmの広角端
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では、Z200にワイコンを付けた場合はどうなるだろうか? 幸い、Z200はNX5Rと同じ72mmのフィルター径を備えるので、NX5Rユーザーはレンズフィルター類をそのまま流用できる。

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フィルター径は72mm。NX5Rなどのフィルター類が流用できる

仮にZunow WCX-80(x0.8)を取り付けたとすると、Z200の広角端24.0mmは19.2mmへと広がリ、一昔前のショートズームレンズ「キヤノン HJ11×4.7B」のワイド端に迫ることになる。

…が、そうは上手くいかない。Z200に0.8倍のワイコンを取り付けると四隅がケラレてしまうのだ。これは、Zunow WCX-80が焦点距離28~29mm台のNXシリーズの広角端を前提に設計されたワイコンであるので、広角端24mmのZ200に合わないのは当然である。現行ワイコンの全モデルを試したわけではないので確証はないが、恐らく現行のワイコンをZ200で使用するのは難しいと思われる。

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72mm径のワイコンも取り付けられるが…
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NX5R用のx0.8のワイコンだと四隅にケラレが発生する
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ただ現実問題もう少し広角が必要という場面は出てくるだろう。レンズ交換式ではないデジの場合は、ワイコンなどで対処するほかない。ソニーから純正ワイコンが出ることはなさそうなので、サードパーティ製でZunowあたりがx0.9ぐらいのワイコンを出してきてくれないだろうか…。

望遠端

望遠側は、光学20倍だが24mmスタートとなるため、NX5R(576mm)と比べると少し控えめの480mmとなる。しかし、全画素超解像ズームを併用することで4K撮影モードは1.5倍の720mm相当、HD撮影モードは2.0倍の960mm相当まで寄れる。テレビのデジロケの場合、その多くはHD収録になるだろうから全画素超解像ズーム2.0倍が使えることになる。

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480mm(光学20倍)の望遠端
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全画素超解像ズーム(x2.0)による960mm相当の望遠端
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望遠端の画質だが、光学20倍での望遠端は目立った歪みや滲みもなく、解像感も悪くない。そこへ全画素超解像ズームを使うと、解像感は低下するが極端なデジタル臭さは感じず、そのまま光学特性が劣化していったような、ある意味で自然な画質になる。

また、Z200の全画素超解像ズームは、光学ズームの望遠端を使い切ってから機能が有効になるデジタルズームの一種だが、その切り替わりはほとんどわからないレベルでシームレスに移行する。常用で機能を有効にしていても問題ないだろう。ただし、ズームの速度によっては多少切り替わりを感じることがある。

ズームレスポンス

ハンドヘルド機の操作性で一番気になる性能の1つが、ズームリング操作によるズームレスポンスだ。Z200の場合、いくつか領域を分けて評価する必要がある。

まず、短距離のズームレスポンスはかなり良い。メカ式ズームを除けば、サーボ式ズームでこれほどレスポンスの良いズームはこれ以上は望めないと思える。

人にZ200のズームリングのレスポンスを聞かれて私がいつも答えるのは、「ENGなら寄れるタイミングだが、NX5Rなどのデジだと寄るのを躊躇する時があるはずだ。それが、Z200ならかなり自信を持って寄り引きできる」と。情報バラエティーなどの振り回しカメラであれば、遠慮なく会話に合わせてズームワークを行える。

一方、問題もある。まず、広角端から望遠端までの全域ズームに必要なリングの回転角度が大きい。ENGレンズの場合、その光学倍率に限らずズームの全域はリングを90°回転することで完結する。そのため、デジに求められるズームの操作系も全域ズームは90°で行われることが理想だ。というのも、90°であればリングを操作する指の形(体勢)を変えずに、ズーム操作をどの領域でも行うことができるからだ。

しかし、Z200は全域ズームを行うのに120°以上の回転角を要する。そのため、ズーム域の末端になると、人差し指だけ、もしくは親指だけでリングを送り出す操作になってしまい、多くの指がレンズ鏡筒から離れてしまう。

ちなみに、クイックに90°程度の角度でズーム操作を行うと、全体の70%程度の遷移率になる。

次に、「広角域から中望遠域」と「中望遠域から望遠域」のそれぞれのズーム領域で、ズームリングによるズーム遷移率に差があることだ。どうも望遠域の方が同じリングの回転量でもズームの動きが遅いようで、ぬる~っとした動きになる。

人物撮影なら、2ショットから1ショットは素早く寄れるのだが、その1ショットからさらにアップに行こうとすると、さっきのリングの回転感では寄り切れないというフィーリングに苛まれる…。

さらにズームアウト時の勝手な加速だ。望遠域~中望遠域をスタートにして広角端まで一気にズームアウトしようとすると、広角端付近で一気に加速したようなズームワークになる。

この場合も、カメラワークが並行して行われているため、カメラワークの決まりとズームワークの決まりが合わず、着地点が意図しない画角になる。

これらの問題点を抱えているため、Z200を使ったカメラマン達は「自分のカメラワークが下手になったかと思った…」と感想を漏らしている。実際のカメラワークはズームとともにパンワークも併用されるため、こうしたチグハグな動きが起きると、カメラの動きとズームの動きを連携させるのが難しくなる。

全域ズームの回転角度の問題は、サーボモーターの出力の問題も関係してきそうで、改善は難しいかもしれないが、他の2つに関しては、エンコーダーとアクチュエータの連携処理の問題であるはずなので、ファームウェアアップデートで改善できるなら手を入れてほしい部分だ。

スローズーム

Z200ではスローズームができるようになった。ソニーのデジはHVR-Z5Jあたりを最後にスローズームができなくなっていた。正確に言えばカメラで行える最低速ズームの速度が速すぎて、慚無い…情感の乏しい低速ズームしか行えなかったのだ。そのため、NX5RやZ280/Z190ユーザーは現場でのスローズームを諦めて、編集でのデジタルズームに任せることにしていた。

筆者のタイムコード・ラボでは、この10年あまりはソニー製デジは導入せず、JVC GY-HM600シリーズやキヤノンXF605をメインアームとして使用。これらのカメラは放送用ENGレンズばりのスローズームが可能であるので、撮影時に意図したスローズームを行っている。

しかし、NX5R指定のロケやクライアント所有のPXW-X200(2014年発表)を使用する際は、やはりスローズームは撮影時に行わず、編集に投げていた。

スローズームは、料理や商品撮り表現の他、音楽ライブ撮影などでも必要なワークである。高速駆動するサーボ性能と同等に、スローでじんわりとズームできる性能も大切なのだ。

また、一切映像が動かないFIXだと3秒しか視聴が保たないカットが、スローズームだと5秒保たせられるなど、尺調整にも重要な役割を果たす。実際、FIXで撮ったカットをディレクターが勝手に編集でスローズームを掛けているので、やはりスローズームはディレクターも欲しいカット表現なのだ。

Z200では右手グリップ部分のズームシーソーで可変速なスローズームが行えるほか、ハンドル部分のズームレバーでもスローズームが可能。速度を「1」に固定すれば、低速ズームを安定して行うことができる。

個人的にはJVC機に搭載されているような「プリセットズーム」機能が欲しい。この機能はユーザーアサインボタンに割り付け可能で、指定した画角まで指定のズーム速度で自動的にズームワークを行ってくれる。ボタンを一度押せば、あとは勝手にズームが進捗してくれる。そのためカメラ本体に触れ続ける必要がなく、ブレのない安定したスローズームができる機能で、JVC機で重宝している。

ところで、スローズームに関しては一点宿題もある。ズームリングによるスローズームがガクガクズームになってしまい、手動でのスローズームが難しいのだ。

これは、8月上旬にお借りした試作機だけの問題で、その後の製品機では改善されているとソニーから聞いているのだが、実際に製品版を手にしたユーザーや、また今回のレビューでお借りしたシリアル番号付きの個体でも、ガクガクズームが発生している。

個体差があるのか、私を含めて声を上げている全員が手動スローズームが下手くそなのか…、今一度検証する必要がある。

手ブレ補正

Z200には光学機構でのみ手ブレを補正する「手ブレ補正スタンダード」と、さらに電子的な補正を付加する「手ブレ補正アクティブ」が搭載されている。

「手ブレ補正スタンダード」だけでもかなり強力でかつ自然な補正を行ってくれるため、ほとんどの手持ちシーンではスタンダードで十分だろう。強力に補正するが、カメラワークを行うときに妨げとなる様な画角の貼り付きも起きず、頼れる手ブレ補正だ。

「手ブレ補正アクティブ」を使うと、さらに強力な手ブレ補正が掛かり、望遠撮影や歩きながらの撮影などでしっかりとブレを押さえたい場合に有用だ。ただし、クロップが掛かって画角が狭くなる点には留意しなければならない。

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アサインボタンに割り付けられる手ブレ補正項目

さて、ここまでは精度の違いはあれ、従来機と同等なのだが、嬉しい改良点もある。手ブレ補正自体の機能ではないのだが、手ブレ補正の有効/無効を切り替えるアサインボタンへの割り付け方法に選択肢が増えた。

NX5Rなどの場合、手ブレ補正の切替はOFF→スタンダード→アクティブ→OFFという順繰りの切替が行われていた。例えばスタンダード使用中からOFFにしたくても、アクティブを経由してしかOFFにできないため、一旦は画角が狭く変化してしまう問題があり、録画中や生放送・配信中は触ることができなかった。

Z200では、従来の順繰り切替も残しつつ、OFF⇔スタンダード/OFF⇔アクティブという設定も可能になった。早速、アサイン1にOFF⇔アクティブ/アサイン2にOFF⇔スタンダードを割り付けて使用した。

…と非常に有り難い改良が行われたのだが、ここで新たな問題が明らかになった。

スタンダード有効からOFFへと切り替えると、画角が大きくスライドするのだ。光学系で補正しているレンズ群が、OFFになるとセンター位置(デフォルト)に戻るため、ガクッと画が動いているのだろう。それだけ大きなブレでもしっかりと補正してくれていると言うことなのだが、結局OFF⇔スタンダードができるようになっても、録画/生放送・配信中は切替は行えないことになる。

それでも、ワンアクションでOFFと求める手ブレ補正を切り替えられるようになったのは、ありがたい。

アイリスダイアル

さて、このZ200で最大の物議を醸しているのが、3連リングを採用せずに2連リング仕様にし、アイリス操作をダイアルにした点だろう。そのアイリスダイアルは、鏡筒部分に添えた左手から指が届く位置ではあるのだが、撮影内容によっては使いづらい位置になると評価する。

カメラを構えるスタイルとして、左手をレンズ筐体の上方から包む「順手」と、レンズを下から支えるように添える「逆手」がある。どちらが順で逆でも良いが、ここでは前述のように定義づける。

Z200のアイリスダイアルの位置で「順手」持ちをした場合は、人差し指か親指でダイアルを操作することになるが、かなり不自然な指の体勢を取らないとダイアルを触れれない。

また、この指の体勢になった時点で、ズームリングやフォーカスリングを同時に操作することが困難であり、フォーカス・ズーム操作をすればアイリス操作が、アイリス操作をすればフォーカス・ズーム操作がワンテンポ遅れることになる。筆者は基本的には「順手」持ちをするので、実際のロケでも、それぞれの操作が常にワンテンポ遅れての操作になってしまった。

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「順手」でのアイリスダイアル操作の構え方。左:親指操作の場合/右:人差し指操作の場合

カメラマンは極力レンズ鏡筒から指を離したり、指の体勢を変えたくないと思っている。即応できる状態を維持するのは勿論、画角やフォーカス感を指の角度などで覚えているからだ。

そのため、同じダイアルでも「IRIS AUTO」と書かれた位置や、HVR-Z1Jのように筐体下部にレイアウトされていれば、左手のポジションを変えることなく、自然な指の体勢で触れただろう。

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赤丸の位置にアイリスダイアルがあれば、自然に操作できただろう…

また、筐体側面の中央に配置するにしても、この出っ張った土台の上ではなく、本体と同一平面にあれば、HVR-V1Jのようなレイアウトで、操作性は向上したと思われる。

「逆手」の場合は、左手の親指がフォーカス/ズーム/アイリスを順次移動して操作するスタイルになる。「逆手」でのアイリスダイアル操作は自然に行え、指のストレスはない。しかし「逆手」は基本的に親指によるリング・ダイアルの順次操作になるため、「順手」操作より全ての操作がワンテンポ遅れる。また、先述の「指の形が覚えている…」というのが通用しない。

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「逆手」でのアイリスダイアル操作の構え方。親指がリングやダイアルを順次移動して操作する

また、三脚に載せて運用する場合やハイアングル気味だと「逆手」のスタイルは取りづらい。

なお、Z200のアイリスダイアルの"ひと回し"は、明るさ一段分の変化にとどまる。大きく明るさを変える場合は、グルグルと何度かダイアルを回す必要があることには要注意だ。

手持ち撮影に限って言えば、右手グリップ部分に人差し指で操作できるダイアルが用意されていれば良かったのになぁ…と思う。そうすれば、左手は2連リングから離れることなく、右手人差し指でアイリスをアサインしたダイアルを操作できるからだ。

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右手グリップ部分にダイアルがあれば、また違った評価になったかも…

一点、ソフトウェアで追加して欲しいのが、アイリスダイアルの回転方向の設定だ。現在のアイリスダイアルは、上に回すとアイリスを絞り(暗くなる)、下に回すとアイリスが開く(明るくなる)。確かに「アイリスリング」と同じ挙動なのだが、不思議なことにリングではなくダイアルになった途端に、その回転方向に違和感を覚えてしまった。

感覚的にはダイアルを上に回すと明るくなって、下に回すと暗くなるリバース設定も付けて加えてほしい(現在は、アイリスダイアルの設定項目はなし)。

リングアサイン機能(予定)

2025年6月に予定されているアップデートで、2連リングに機能を割り当てることができるようになる。アサインの詳細については、別途案内があるようだ。

ソニーとしてはオートフォーカスに大きな自信を持っており、フォーカスはオートに任せて、ズームとアイリスは従来通りレンズリング操作で…。あるいは、ズームはズームシーソーを使って操作し、フォーカスやアイリスをリングに割り当てるなどの構想もあるようだ。

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MF/AF切替や、PUSH AUTOボタンがここに配置されたのは大歓迎!
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突然乱入してきてレポーターごっこを始めるインバウンド客。しっかりと顔認識しているためAFでも中央にフォーカスが抜けることもない
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後ろ姿であっても、胴体や後頭部をカメラが認識している

しかし実際の現場では、必ずしもオートフォーカスが的確に動作する「被写体認識」できる被写体ばかりを撮影するわけではないし、ズームシーソー操作もバラエティー向きではない。

ところで、もしもアイリス操作をレンズリングにアサインできるようになった場合、元々備わっている「アイリスダイアル」はどのように扱われるのだろうか。無効になるのか?「アイリスダイアル」「アイリスリング」ダブル対応になるのか…。

可能であれば「アイリスダイアル」を「フォーカスダイアル」として使用できる選択肢を作って欲しい。そうすれば基本はオートフォーカスで使用して、必要な時に「AFアシスト」として「フォーカスダイアル」で介入操作をできる様になる。

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リングアサイン・カスタム案

完全にオートフォーカスに任せるというのは、プロの世界では難しい。仮に、意図していない被写体にピントが合い続けてしまったり、オートフォーカスが迷ってボケてしまったりして、大切な瞬間を撮り逃した場合、ソニーが責任を取ってくれるのだろうか?

マニュアル操作で失敗した場合は自分の腕が未熟だったと認め、責任を取ることも納得できるが、機材のせいで失敗したことをカメラマンに押しつけられるのは納得できないだろう。どれだけ「機械の性能がぁ…」と言い訳したところで、クライアントや視聴者には関係のない話だ。

オートを上手く使いこなすのもプロには絶対必要なスキルだと考えているが、オートだけに頼った撮影というのはリスクしかない。ぎりぎりのリスクヘッジとして、AFアシストでオートフォーカスに介入できるように、アイリスダイアルへのフォーカス割り当てなどは検討してほしい。

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このアイリスダイアルをどう活用するかでZ200の使い勝手は変わると思う

最短焦点距離(M.O.D)

さて、ズームの挙動の課題や、アイリスダイアルとのつきあい方などを見てきたが、ソニーZ200の購入を私が考えるときに一番ネックとなっているのが「最短焦点距離」の長さだ。最短焦点距離(M.O.D:Minimum Object Distance)とはピントが合う最短距離のことだ。特に問題になるのが望遠側でのM.O.Dである。

M.O.Dはイメージセンサ―Z200ならCMOSの撮像面からの距離であるのだが、Z200には距離基準マークが印字されていないので、正確なM.O.Dはわからない。 そのため、レンズ前玉から被写体までの距離「ワーキングディスタンス(W.D)」を基準に話を進める。

Z200の望遠端でのW.Dは「100cm」。おそらくM.O.Dは110cmを超えるだろう。これは、デジとしては、かなり長いW.Dだ。つまり、ズームレンズを最望遠にしてアップで被写体を撮る場合、カメラのレンズ先から1m以上離れていないとピントが来ない、ということになる。

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最短ワーキングディスタンス1mとはこれぐらいの距離

バラエティーロケをやっているカメラマンなら、このW.Dはかなり厳しいということがわかるだろう。演者の手元にズームアップするとピントが来ないことがしばしば起きるということだ。

もちろんクローズアップレンズを取り付ければ最短焦点距離の短縮は可能だが、会話軸でカメラを振り回している最中にクローズアップレンズを付けたり外したりすることは不可能だ。

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最短焦点距離の長さがインサート撮影の際に課題になる…

実際、8月初旬から何度もZ200をテレビロケに連れて行って撮影を行っているが、このW.D=1mにかなり泣かされている。

「W.Dが1mなら、対象から離れれば良いだけでは?」と思うかも知れないが、そうはいかない場面というのがロケにはしょっちゅうある。特に演者の作業する手元を肩越しに撮影するとか、調理シーンの撮影などだ。

確かにカメラマン自身が少し離れればフォーカスを持ってくることはできるが、例えば鍋で調理をしているとか、深さのある箱の中で工作をしている…などといった行程は、離れてしまうと容器のフチなどで中身が見えなくなってしまう。Z200を使ったバラエティーロケは身長180cmを超える高身長カメラマンぐらいしか生き残れなくなる未来が見える!

冗談はさておき、今までのデジであれば問題なくピントが来ていた距離感が通用しなくなることは確かだ。

ちなみに、ロケデジのデファクトスタンダードであるソニーHXR-NX5RのW.Dはというと。ワイコンなしで77cm、x0.8のワイコン装着時で53cmとなる。

53cmである!

NX5Rでロケをしている場合は、ほぼワイコン装着仕様だと思われるので、ほとんどのバラエティカメラマンは、この55cm前後のW.Dに慣れており、その感覚でカメラを振り、ズームワークをしているはずだ。

当然ながら、インサートで商品接写などを行う場合はクローズアップを取り付けることで解決はする。しかし、NX5Rならクローズアップレンズを取り付けるまでもないような雑感インサート的なカットでもクローズアップがないとピントが来ないなど、煩わしい場面に何度も遭遇した。

このM.O.DやW.Dの問題はファームウェアのバージョンアップではどうしようもない。光学設計の段階でハードウェア的に決まってしまっているのだ。

しかし、一つだけ解決方法がある。まぁ、絶対にソニーはやらないであろう対応方法だが、解決策としてここに書き残す。それはハイブリッドズームの併用だ。ハイブリッドズームとは光学ズームとデジタルズームを混合したズーム方法。パナソニックがそういう呼称を使っていたような気もする。

Z200の場合、デジタルズーム処理は光学ズーム域を使い切ってから全画素超解像ズームが始まる。しかし、キヤノンやJVCのデジタルズームは違った処理を行っている。キヤノンだとアドバンストズーム(XF605)、JVCだとダイナミックズーム(GY-HC550)という機能名で実装されている。

これらのズームは光学ズームとデジタルズームを同時に行うズーム方法で、光学的にズームを始めると同時にデジタルズーム処理も並行して始まり、望遠端で光学的にもデジタル的にも最大望遠になる。メリットは、光学域とデジタル域を意識せずに使えること。XF605のような端付きズームリングでも使えること。デメリットは光学のみと比べると画質的には不利になることだろうか。

なお、この機能はオーバーサンプリングから必要解像度を得ている記録フォーマットに限るので、多くの場合はHDフォーマットでのみ有効になる機能だ。

そして、このハイブリッドズームはM.O.Dの改善に繋がる。例えば、キヤノンXF605の場合だと光学15倍の望遠端(z99)でのW.Dは57cmである。しかし、アドバンストズームを使った場合、光学15倍で得られる画角(アップのサイズ)をデジタルズームが併用されることで約80%(z81)の焦点距離で得ることができた。M.O.DやW.Dは広角ほど短く、望遠ほど長くなるため、光学の最望遠端(z99)よりも手前であるこの焦点距離(z81)だと、W.Dが11cmとなり 、光学ズームだけでアップにするよりも短いW.Dを得ることができるのだ。

実際、キヤノンXF605でアドバンストズームを常用するようになってから、料理接写ですらクローズアップレンズを付けることがなくなった。調理場での調理工程と客席テーブルでの料理接写を行ったり来たりするようなロケでは大助かりだ。

光学ズームとデジタルズームの組み合わせを、概念図にしてみた。話を判りやすくするために、広角25mmで光学20倍ズーム、デジタルズームでx2.0という架空のレンズを想定して、ソニーの全画素超解像ズーム/ハイブリッドズーム/デジタルエクステンダーによるズーム概念図を描いてみた。

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ハイブリッドズーム概念図
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ハイブリッドズームに関しては、画質を維持するためにデジタルズーム処理が単純なリニア変化になっていないと思われる。XF605の挙動を参考にした値で、参考例を提示している(正しいかどうかは不明)。

ここで見るべきポイントは、500mm相当を達成するのに、光学ズーム値(z値?)がいくらになっているかということだ。同一の焦点距離の画角を作るのにz99よりも小さなz値で達成できるため、より短いワーキングディスタンスを利用できる。

仮にZ200にハイブリッドズームが搭載された場合、HDフォーマットであれば光学望遠の約80%(z80)で最大光学望遠(z99)と同じ画角を得られると仮定する。その場合、z80の焦点距離でのW.Dは77cmとなり光学20倍の望遠端ではフォーカスが来ない100cm未満の距離でもアップの撮影を行うことができる。

同じような効果は、デジタルエクステンダーでも得られるが、その場合はワイド端の広さが犠牲になるので、振り回しのロケ向きではない。だが次善策としては使えるので、上記のようなハイブリッドズームを搭載しなくても、せめてデジタルエクステンダーを実装してほしい。なおデジタルエクステンダー(x2.0)の場合ならz50で光学ズームのz99と同じ焦点距離を得られることになる。その場合のZ200のW.Dは36cmとなる。これはこれで魅力的だ。

感度

Z200では感度表示にISOとdB(ゲイン)のどちらかが選択できる。従来からのビデオカメラユーザーであればdB表示の方が馴染みがあるだろうし、ミラーレス一眼カメラやシネマカメラからのユーザーであればISO表示の方が使い易いだろう。

筆者は所謂ビデオカメラ系のユーザーだが、Z200ではISO表示の方が使い勝手が良いと感じた。

そもそもの感度に関してだが、Z200を基準感度のISO 250/0dBで使用すると、暗いカメラだと感じる。屋外では全く問題ないが、一般家庭の天井照明だけのような環境だと明るさが足りない。そのため、感度を上げて撮影することになるが、筆者はZ200での屋内撮影ではISO 800を常用感度に設定している。ちなみにISO 800をdB表示で表すと、大体10dBとなる。これはビデオカメラユーザーからすると結構ゲインアップした設定に感じるだろう。

しかし、Z200は新設計の1インチCMOSセンサーを搭載し回路設計も見直されているため、10dBであってもノイズが気になることはなかった。しかし、10dBと意識するとなんとなく精神衛生上よくないので、私はISO表示で使っているのだ。

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夜間や低照度でも、デジクラスとしては明るく低ノイズで撮影できる

ちなみに私の場合は、ISO/GAINスイッチにはL:250=0dB/M:800≒10dB/H:1600≒17dBといった感度設定を割り当てている(撮影内容によって変更あり)。

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ISO表示とdB表示の切り替えが可能

ISO 800であれば、ノイズ感を気にすることなく収録できる。ISO 1000~1250あたりから増感し始めたかな?というのが見え始め、ISO 1600~2000ぐらいまでは、画質的にもOKな範囲だと思う。

Z200のISO⇔dBの対応表を自作してみたので、以下に提示する。

Z200のdB表示は1dB単位で設定できるが、対応表ではわかりやすく3dB単位で記している。

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ISO/dBテーブル

これは公式のものではないが、実際の挙動から見て間違いないと思われる。なお、ISO/GAINスイッチへの割り当て設定は、ISO表示かdB表示かで割り当て内容も変わってしまうので、まずはISOかdBかを決めてからスイッチの内容を設定した方が良いだろう。

一点面白いのは、マイナスゲイン(-3dB)に相当するISO値(165ぐらい?)が用意されていないことだ。これはソニーからも「正解」という返事をもらっている。なぜ用意されていないのかは不明だが、減感設定を使いたい場合はdB表示を選択してから割り当てる必要がある。

なお、この表の関係性はガンマ設定をSDR(B.T709)にしている時のものだ。HLGやS-Log3での収録の場合は、基準感度か変わるためISO⇔dBの関係も変更される。

HLGやS-Log3に設定した場合、基準感度はISO 1600と少し高めだ。そのため、被写体によってはノイズを感じやすい。

私がZ200を初めて手にして撮影したのが花火だったのだが、その際、日頃B.T709しか使わないような私が色気を出してHLGで撮影した。まだZ200の特性もわかっていなかった時期だったため、ISO 1600スタートのHLG設定で「高感度も余裕があるのかな?」と思って、ISO 3200ぐらいで撮影してみると結果はかなりノイジーな映像となってしまった。

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HLGで撮影した花火。動画で見ると結構ノイジー
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ある程度は編集ソフトのノイズリダクションを使って軽減できるだろうが、画像処理が前提のS-Log3などのフッテージだと、このノイズの多さは編集耐性に影響を与えそうで、課題になるだろう。

まとめ

ソニーZ200は今後のソニーハンドヘルド機の基本仕様やデザインを示す、始祖的な役割をもつモデルだと私は感じている。

ひとつはすでに記した液晶モニターの展開・収納のデザイン。いままでは上部ハンドル前方に横たわるように液晶モニターは収納されていた。このデザインはソニーHVR-Z1J/HDR-FX1が初めて採用したデザインで、以降同社はもちろん他社のハンドヘルド機でも採用された続けたグランドデザインだ。そのデザインにソニー自らがメスを入れてきたのだ。

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脱着可能な液晶モニターフードが標準付属

そして、物議を醸している「2連リング」。オートフォーカスの成熟や新しいユーザー層を意識した操作系の簡素化など、これからのソニーの戦略が見て取れる設計だ。しかし、今後全てのソニーハンドヘルド機が2連リングになるとは思えない。

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物議を醸している2連リングとアイリスダイアル

上位機種であるZ280の後継機などは引き続きハイエンドユーザーをターゲットにした3連リングを踏襲すると思われる。そして他社は2連リングはユーザーニーズを取りこぼすと考え、少なくとも上位機種は3連リングを採用し続けるだろう。

一方で、2連リングをアサイナブルデバイスとして、フォーカス/ズーム/アイリスを割り当てられるような考え方は、このクラスのモデルとしては珍しい。リングやダイアル類に可変パラメーターを柔軟に割り当てられるモデルが増えていくのかも知れない。

より幅広い層をターゲットにするならば、アイリスだけではなく「明るさダイアル」として、アイリス/ISO/NDを複合してコントロールできるリングにしても良いかもしれない。

ディレクターが使う場合などは、特にISOやNDフィルターを使いこなせない。ゴールデンタイムのテレビ番組を見ていても、ディレクター一人でカメラ構えて取材したんだろうな…という映像は、アイリスだけで限界まで絞り込んで、小絞りボケが起きたボケボケの映像が平気でオンエアで流れている。ここにバリアブルNDフィルターが連動したり、ISOが連動すれば、ディレクターなどのカメラが専門でないユーザーでも適切な露出設定の映像が撮りやすくなるだろう。

さらにズームリングに関しては、現在のキヤノン方向式に加えて、ニコン方向式を設定できる様にしても良いだろう。特にEマウントレンズを使っているαユーザーを取り込んで行きたいのならば、それはユーザーフレンドリーな設定になる。

デジでニコン方向式が採用されれば、恐らくソニーCCD-VX1(1992年)以来のハンドヘルド機への実装になるのではないだろうか?

また細かいことだが「ショルダーストラップ取付金具」の位置が前方はハンドルグリップ「右側」、後方はハンドルグリップ「左側」に変更になったことを高く評価している。

従来機の「取付金具」の位置は、前方はハンドルグリップ「左側」、後方は本体後部「右側」という位置だった。これは他社のハンドヘルド機も同様だ。

恐らくこのデザインに固定されたのはソニーDCR-VX1000(1995年)からだと思われる。

しかし、現在のハンドヘルド機ではその金具の位置では支障があると感じていた。現行のハンドヘルド機の多くで、ハンドル前部上面に多くのボタンやスイッチがレイアウトされているからだ。そして、撮影時にショルダーストラップをカメラの右側面に除けると、ベルト部分がそれらのボタン・スイッチに被ってしまうという問題があったのだ。

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上面ボタンの右側にベルト取付金具があるため、撮影時にベルトが邪魔にならない

この問題に対しては、私も以前より他社メーカーに改善を要望していたのだが、まさかソニーが先陣切って対応してくるとは思っていなかった。

しかし、残念ながらZ200の取付金具の配置は満点ではない。後方金具がハンドル後部のシュー金具と並んで配置されており、そのシューにアクセサリー機器を取り付けるとベルトが干渉してしまう。なぜこのレイアウトをソニーが良しとしてしまったのかわからないが、もう少し実際の運用をイメージした設計にしてほしかった。

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ハンドル左後方にあるベルト取付金具

ちなみに、この問題の回避策としては、写真用品の「デュアルシュー」を使うことで、シューの位置を右側に逃がす方法がある。副次的にカメラを構えた時にワイヤレス受信機の顔への圧迫感が軽減されるなどというメリットもある。

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ショルダーベルトがワイヤレス受信機に干渉している
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デュアルシューを使って右へ逃がすという荒技

いろいろと賛否はあるにせよ、従来機とは違ったアプローチを各所に盛り込んだZ200は、新しいユーザー層の獲得も視野にリデザインされたハンドヘルドビデオカメラであると言える。

そして、既存ユーザーもこのZ200の新しい試みに対応するだけの「思考のアップデート」が求められるターニングポイントに今、立っているのかも知れない。

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イヤフォンジャックの近傍にイヤフォンボリュームボタンという配置は合理的
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従来式のゲインとホワイトバランスのトグルスイッチ。個人的にはフロントRECボタンが欲しかった

WRITER PROFILE

宏哉

宏哉

のべ100ヶ国の海外ロケを担当。テレビのスポーツ中継から、イベントのネット配信、ドローン空撮など幅広い分野で映像と戯れる。