2024コンセプト:Pの黙示録

2024年にはアップデートが中心、市場は成熟期を迎えた

映像伝送・配信部門では、主にビデオスイッチャーやコントローラーを取り上げていく。

2023年には、各社から数多くのPTZカメラが発売された。しかし、2024年には発売数は落ち着き、アップデートが中心となり、市場は成熟期を迎えたと言えるかもしれない。スイッチャーに関しても、業界全体として発売数は多くなく、一段落といった状況であったと考えられる。

ここ数年は、NDIの普及が著しかったが、近年ではSRT対応の機材も増加傾向にある。さらに、Blackmagic DesignがSMPTE 2110規格対応のカメラやコンバーターを投入し始めたことで、IPネットワークを介したビデオ転送がより身近になり、業界全体のワークフローに大きな変革が起きる可能性がある。

それでは本部門のファイナリストを発表しよう。

ローランド「V-80HD」

発売日:2024年2024年8月下旬
希望小売価格:オープン 市場実勢価格税込50万円前後

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

本機「V-80HD」は、その名の通り8入力のビデオスイッチャーである。ローランド製品らしく、マルチフォーマットに対応している点が大きな特徴である。SDI入力を4系統、HDMI入力を4系統搭載しており、そのうち2つのHDMI入力は4Kに対応している。また、内蔵のダウンスケーラーにより、4Kソースを使用するeスポーツイベントなどでも高い利便性を発揮する。

さらに、モーショングラフィックスソフトウェア「Graphics Presenter」も注目を集めている。特にテロップ演出の自由度が高く評価されており、従来PowerPointなどでデザインを作成していたクリエイターにとっても魅力的な選択肢となっている。

このソフトウェアには約120種類のデザインが初期搭載されており、今後はユーザーからのフィードバックをもとに、クラウドサービス上で提供するデザインを順次拡充していく予定である。

RODE「RODECaster Video」

発売日:2024年12月20日
希望小売価格:税込190,300円

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

RRØDECaster Videoは、オールインワンのビデオおよびオーディオ制作コンソールである。

本機は非常に高い機能性を備え、映像および音声入力端子が充実している点が特徴である。4つのHDMI入力端子、ウェブカメラなど多様な入力ソースに対応可能なUSB-Cポート2つ、マルチビューに対応したHDMI出力端子2つ、さらにXLRコンボジャック2つを搭載している。

また、RODEキャスターシリーズで定評のあるオーディオミキサー機能も搭載しており、必要な入出力端子をほぼ網羅している。特にオーディオ機能においては、競合製品を凌駕している。

さらに、ISO収録に対応しているだけでなく、本体から直接配信することも可能。小型の筐体に多岐にわたる機能を凝縮した優れたものであると言える。

Blackmagic Design「ATEM Micro Panel」

発売日:2024年9月
希望小売価格:税込112,800円

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

ATEM Advanced Panelシリーズと同様のプロ仕様デザインを採用し、「このサイズの製品を待っていた」という声も多い。本機は、小型化を実現しながらも、ATEM Advanced Panelシリーズと同等の操作感を提供する点が特徴である。接続はBluetoothまたはUSB-Cに対応している。ハイエンドなバックライト対応ボタンを搭載し、薄型のトランジション用フェーダーを採用することで、ATEM Micro Panelは極めてポータブルな設計となっている。

ボタン数はATEM Mini Extremeに比べて減少しているものの、その分操作がシンプルで使いやすい。

エーディーテクノ「Dante AV Ultraエンコーダ/デコーダ」

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

「Video Over IP」の中でも、賛同メーカーが増加し、注目度が上昇している「Dante AV」規格。そのDante AVをサポートした「Dante AV Ultraエンコーダー&デコーダー」シリーズである。同エンコーダー/デコーダーは、1GbE経由で4K60Pの高品質な配信が可能であり、低遅延であることが特徴と言える。マイクロ秒未満の同期を実現している。

Magewell「Modator 2U」

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

デコーダーやエンコーダーの「Modator 2U」は、変換処理用にカスタマイズ可能なソリューションである。筐体は、標準的なラックマウントに適合するように設計されており、最大10個のモジュールを搭載できるスロットを備えている。内蔵の4.8インチLEDタッチスクリーンまたはブラウザベースのウェブインターフェースを通じて、ステータスをモニタリングすることが可能である。また、デュアル電源と最適化された放熱機能により、24時間365日の連続稼働を実現し、年中無休の動作においても低遅延のエンコード・デコード性能を安定して提供する。

Matrox「Vion」

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

「Vion」は、ライブプロダクションに最適な4K IP-to-IPビデオゲートウェイであり、複数チャンネルのエンコード、デコード、トランスコードに対応している。H.264/HEVC、ST 2110-22、IPMX、JPEG-XS、NDIなど、多様なIPビデオフォーマットを低遅延で相互変換することが可能。また、ST 2110-22、SRT、RTSP、RTP、MPEG-2 TSなど、幅広いプロトコルに対応しており、NDIをSRTに変換・転送するなど、柔軟なルーティングワークフローを実現する。クラウド接続による次世代ワークフローにも活用できる。

ソニー「BRC-AM7」

発売日:2024年11月28日
希望小売価格:オープン。市場推定価格は税込1,540,000円前後

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

AIによる高精度な自動撮影の世界を切り開いたソニーから、「撮ってくれるカメラ」のフラッグシップモデルが登場した。1.0型4K対応積層型CMOSイメージセンサーExmor RSと画像処理エンジンBIONZ XRの組み合わせにより、4K60pの高解像度かつ低ノイズでの撮影を実現している。独自の電子式可変NDフィルターを搭載し、進化した「PTZオートフレーミング」機能を搭載する。TC端子とXLR端子も備えており、文句なしに、フラッグシップのPTZカメラと言える。

ZOOM「LiveTrak L6」

発売日:2024年9月下旬
希望小売価格:オープン 同社公式オンラインストアの価格は税込36,900円

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

32bitフロートに対応した10チャンネルのミキサー&レコーダーは、そのコンパクトさと軽量さが魅力である。デスク上のスペースを有効活用できる点は、非常にありがたい。また、端子とツマミが上面に配置されているため、操作性も高いと言える。10入力/4出力に対応し、MIDI IN/OUT端子、microSDHC/microSDXCカードによる記録、パラレコーディング機能などを搭載しており、税込36,900円という価格は、非常に魅力的である。

以下が映像伝送・配信部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2024 映像伝送・配信部門 ファイナリスト

  • ローランド「V-80HD」
  • RODE「RODECaster Video」
  • Blackmagic Design「ATEM Micro Panel」
  • エーディーテクノ「Dante AV Ultraエンコーダ/デコーダ」
  • Magewell「Modator 2U」
  • Matrox「Vion」
  • ソニー「BRC-AM7」
  • ZOOM「LiveTrak L6」

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2024 映像伝送・配信部門 ゴールド賞

ローランド「VR-80HD」

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

ゴールド賞はV-80HDに贈られた。V-160HDと比較すると映像入力数は減少しているが、搭載機能は大幅に拡充されている。特に「アサイナブル・パッド」の搭載により、頻繁に使用する機能への迅速なアクセスが可能となり、操作性が飛躍的に向上している。このパッドはV-80HDで大型化され、多様な機能を割り当てられる仕様となっている。

さらに、高品質な28チャンネルのデジタル・オーディオ・ミキサーや、最大5レイヤーの映像合成機能を備えており、本機1台で多くの作業を完結できる点が魅力である。長期にわたる使用でも信頼できる相棒として活躍する機材である。

PRONEWS AWARD 2024 映像伝送・配信部門 シルバー賞

ソニー「BRC-AM7」

映像伝送・配信編部門発表 Vol.06 [PRONEWS AWARD 2024]

ソニーが今年発売した注目のカメラの1台である。特にAIオートフレーミング機能は、人間が撮影しているかのような自然な映像を実現し、撮影の可能性を広げている。長時間撮影を含むさまざまな撮影シーンで、有力な選択肢となる。さらに、S-Log3やS-Cinetoneといったプロフェッショナルな映像表現に対応しており、他のソニー製カメラで撮影された映像とのシームレスな編集が可能である。このカメラは、多様な撮影現場で幅広く活用されることが期待される。