2024コンセプト:Pの黙示録

ポストプロダクション部門発表

2024年1月から12月までに発売された新製品やアップデートを表彰する部門である。今年は一部、放送局機器も対象としている。

映像編集業界は、2021年のPremiere Proにおける音声テキスト化をきっかけに、AI対応の機能が急速に普及してきた。Premiere Proは、文字起こし、編集、カラー、オーディオ、字幕など、幅広い領域をカバーし、成熟期を迎えているが、Premiere Proだけが独占的な地位を確立しているわけではない。Final Cut Pro 11はAppleハードウェアとの連携が強みであり、Avidは映画業界からの信頼が厚い。Blackmagic Designは同社のハードウェアとクラウド連携の強みを誇り、EDIUSは動作の軽快さが特徴など、各編集ソフトに独自の強みがある。

2024年のアップデートでは、各社がそれぞれの特長を活かして進化を遂げている。

それでは、本部門のファイナリストを発表しよう。。

RAID「SIRIUS」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07 [PRONEWS AWARD 2024]

RAIDのSIRIUSシステムは、NAB2024にてリリースしたPOLARISシステムの運用実績およびTBSアクト社のフィードバックを加え、より「信用性が高く」「ポータブルな設定で」「お求めやすい価格帯」をテーマに商品開発を行った光伝送装置である。

当初、SIRIUSシステムに対応するカメラは、RED Digital Cinema社製のKOMODO、KOMODO-X、V-Raptor、V-Raptor(XL)であったが、対応機種がどんどんと増えている。「VENICE」「FX6」に対応し、さらにInter BEE 2024ではFreeflyの「Ember S5K」に対応することを発表した。SIRIUSは「マルチプルカメラ対応」を目指しており、対応カメラをどんどん増やしていく予定である。

Blackmagic Design「DaVinci Resolve 19」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

毎年大変なアップデートを繰り返してきているDaVinci Resolveだが、2024年4月のバージョン19では、Blackmagic Cloudとの連携や編集機能、新しいAIツールに大変な注目が集まっている。特に素晴らしいのはAIによる高精度なトラッキング機能「intelliTrack」だ。DaVinci Neural Engine AIで、オブジェクトの後ろに隠れたりしても正確なトラッキングが可能。AIによるノイズリダクション「UltraNR機能」、カラーページにあ主要なコントロールを1か所にまとめたColorSliceなどが話題だ。

アドビ「Premiere Pro 2025」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

2024年10月にはバージョン25.0が公開され、様々な仕様変更が行われた。最も大きな変更点としては、エッセンシャルグラフィックスが廃止された点が挙げらる。これまでテキストの編集はエッセンシャルグラフィックスで行われてきたが、今回のアップデートにより、プロパティパネルで設定するように変更された。必要な機能がパネルに集約されたことで、操作性が向上し、習熟すればより便利に作業を進めることができそうだ。

Premiere Proでは、タイムラインクリップのデザインが全面的に刷新され、モダンで一貫性のある、長時間視認性に優れたデザインへと生まれ変わった。また、複数のクリップのプロパティを同時に変更できる機能が初めて実装されたことも、大きな改善点の一つだ。

Avid「Media Composer 2024」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

近年の注目すべきアップデートの1つが「Media Composer | Ultimate」または「Media Composer | Enterprise」がサポートするPhraseFind AIとScriptSync AIだ。PhraseFind AIは、単語やフレーズを入力するだけで関連するクリップをすばやく見つけることができ、ScriptSync AIは、最適なテイクやクリップを早く見つけることが可能。さらに「v2024.6」では、文字起こしが強化されたり、「v2024.10」では、エフェクトベースのツール「Avid Titler+」がアップデートしてパフォーマンスが向上している。

グラスバレー「EDIUS」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

話題はEDIUS 11の11.20で搭載された「オートカラーコレクション」機能だ。映像を自動的に解析し、明るさとホワイトバランスを調整して、ニュートラルな画像にすることが可能である。適用後も、シンプルな操作で微調整が可能であるため、さまざまなシチュエーションに対応できる。EDIUSは、現在、唯一の買い切りであり、価格が安い点も魅力である。

Apple「Final Cut Pro 11」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

「Mac」「iPad」のいずれのプラットフォームにもリリースされている。目玉機能は、AIを活用した「マグネティックマスク」だ。マグネティックマスクは、グリーンバックやロトスコープを使用することなく、ビデオクリップ内の人物や物体を背景から簡単に分離することが可能。背景や見せたくないものをぼかすことが可能だ。iPhone対応の「Final Cut Camera」も興味深い。Blackmagic cameraよりもシンプルであり、使いやすさが特徴だ。

さくら映機「ALBA e Medico」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

XDCAM HD422ファイルへのインサート編集を可能にし、編集作業の効率化や運用の簡素化といった業界の課題に対応するファイルベースインサートアプリケーションである。1回書き出した動画ファイルに対しても、後から修正が可能である。差し替える箇所のみプレビューで確認できるため、修正作業にかかる時間を大幅に短縮し、効率化を実現する。テレビ番組の編集においては、待望のアプリが登場したと言える。

以下がポストプロダクション部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2024 ポストプロダクション部門 ファイナリスト

  • RAID「SIRIUS」
  • Blackmagic Design「DaVinci Resolve 19」
  • Adobe「Premiere Pro 2025」
  • Avid「Media Composer 2024」
  • グラスバレー「EDIUS」
  • Apple「Final Cut Pro 11」
  • さくら映機「ALBA e Medico」

はたして何が受賞するのか…?いよいよ発表!

PRONEWS AWARD 2024 ポストプロダクション部門 ゴールド賞

Blackmagic Design「DaVinci Resolve 19」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

毎年DaVinci Resolveの進化には驚かされるが、今年は、「DaVinci Resolve Replay」の登場に非常に驚いた。DaVinci Resolve Replayは、リプレイシステムの流れを一気に変える可能性を秘めている。

DaVinci Resolve 19のカットページはリプレイシステムとして再構築されている。Blackmagicの複数のHyperDeckなどのデバイスを多数活用し、それらをResolveと組み合わせることで実現している。これは非常に革新的な試みであり、もはやDaVinci Resolveがどのようなソフトウェアであるのか分からなくなってくるほどである。

ライブプロダクションサーバーとしてEVSが有名であるが、DaVinci Resolve Replayの登場によって、リプレイシステムがより身近な存在になるかもしれない。

PRONEWS AWARD 2024 ポストプロダクション部門 シルバー賞

アドビ「Premiere Pro」

ポストプロダクション・放送局 Vol.07

話題はなんといっても試用可能なPremiere Proベータ版の方である。ついにビデオ向けの新しい生成AI機能とを搭載した。生成AIを使用して、クリップの先頭または末尾にフレームをシームレスに追加する夢のような機能を搭載している。

キャプション翻訳も話題で、Premiere Proで多言語キャプションを自動生成し、世界中の視聴者向けのコンテンツを制作することが可能である。実は、ベータ版では、LUTを必要とせずにインポート時に即座に一貫性のある映像に変換する新しい色管理システムを搭載している。こちらに関しても大きなニュースである。