北陸放送機器展2026のV-13、映像制作/放送関連機材部門に出展したキヤノンマーケティングジャパン株式会社のブースを訪れた。会場にはシネマ/業務用カメラとIPリモート撮影ソリューションが並び、実機を操作しながら、それぞれの機能を確認できる展示となっていた。
その中で今回、改めてじっくり触れてみたかったのが「EOS C50」だ。実機を手にすると、まず気になるのはそのコンパクトさである。しかし、ブースで説明を聞きながら操作していくと、サイズ以上に気になったのが「縦横同時記録」とデジタルズームだった。
どちらもスペック表だけを見ていると一機能として通り過ぎてしまいそうだが、実際の撮影を想像しながら触ってみると、少人数で映像を作る現場での使い方が見えてくる。今回はEOS C50を単に「小型のシネマカメラ」として見るのではなく、撮影から素材の受け渡しまで含めて考えてみた。
横を撮りながら、SNS用の縦も同時に残す
EOS C50で最初に気になったのが、縦横同時記録だ。全画角の4K映像を撮影しながら、その映像の一部を縦位置または正方形にクロップした2K映像として同時に記録できる。
撮影画面にはクロップする領域を示す枠を表示でき、その位置も変更できる。横位置の構図を作りながら、「この部分は縦動画でも使う」と意識してフレーミングできるわけだ。
例えばインタビューやイベントを横位置で収録しながら、SNS用の縦位置映像も必要になる場合がある。これまでは横位置の素材から後工程で切り出すか、別のカメラやスマートフォンで縦位置を撮影するといった方法が考えられた。
EOS C50なら、全画角の4K映像とクロップした縦位置の映像を同時に用意できる。CFexpressカードとSDカードに異なるストリームを記録できるため、撮影後にSDカード側の素材を渡し、SNS用の編集をすぐに始めるといったワークフローも組みやすい。
実際に縦位置の枠を表示して撮影画面を見ると、横位置だけを見ているときとは構図の考え方も少し変わる。横の完成画を作りながら、縦の画角にも被写体を収める。撮影した後に切り出すことを考えるのではなく、撮影時点から2つの用途を意識できるところが興味深い。
単焦点レンズを付けたまま、画角を変えてみる
もう一つ、実機を触っていて印象に残ったのがデジタルズームだ。ブースでは単焦点レンズを装着したEOS C50を使い、実際に画角を変える様子を確認した。EOS C50は単焦点レンズでも最大4倍のデジタルズームを利用できる。
単焦点レンズを装着しているのに、操作すると画面が滑らかに寄っていく。光学ズームとは仕組みが異なるものの、レンズ交換をせずに画角を変えられるため、撮影中に「もう少し寄りたい」という場面への対応方法が増える。
例えばインタビューの途中や、ほこりや砂が舞う場所など、すぐにレンズ交換しにくい状況がある。また、少人数の取材では何本ものレンズを持ち歩かず、できるだけ少ない機材で撮り切りたい場面も多い。そう考えると、デジタルズームは単に被写体を大きく表示するための機能ではなく、持ち込むレンズの構成を考える上でも一つの選択肢になる。
ブースでは広角ズームとの組み合わせも話題になった。ワイド側を確保したレンズを装着し、必要なときにデジタルズームで中望遠側を補う。これまで「広角ズームだけでは望遠側が足りない」と考えていたところに、別の使い方が見えてくる。
もちろん、どこまでデジタルズームを使うかは、求める画質や撮影内容によって判断が変わる。それでも実際に操作すると、「どのレンズを持っていくか」という撮影前の考え方まで変わり得る機能だと感じた。
縦横同時記録とデジタルズームを続けて試してみると、EOS C50のコンパクトさは単に持ち運びやすいという話だけではなく、少ない機材でどこまで撮影を組み立てられるかという方向につながっているように感じた。特に一人や少人数で撮影から素材の受け渡しまで進める場合、撮影後に映像をどう使うかまで考えた機能が効いてきそうだ。
最後にPTZへ。CR-N400はFHDで40倍まで寄れる
EOS C50を見た後は、ブースに並んだリモートカメラにも目を移した。中でも紹介されたのが「CR-N400」だ。1/2.3型CMOSセンサーと光学20倍ズームレンズを搭載し、フルHD撮影時にはアドバンストズームによって最大40倍まで対応する。
実機を見ると、40倍というズーム倍率に対して本体はコンパクトだ。ホールや講堂など、カメラを被写体の近くへ置けない場所でも、離れた位置から必要な画角を作れる。
さらにCR-N400では、通常の横位置映像に加えて縦方向にクロップした映像を出力できる。PTZカメラでも、横位置の映像と縦型コンテンツを意識した運用ができる点は、先ほど触れたEOS C50とも通じる部分がある。
CR-N400と上位モデルの「CR-N700」には、2026年10月15日公開予定の機能向上ファームウェアで、SDカードへのカメラ内部記録機能が追加される予定だ。これまで将来の機能拡張用として搭載されていたSDカードスロットを映像記録にも活用し、カメラ単体で収録できるようになる。
本線の映像をSDIやIPで送りながら、カメラ側にも映像を残すバックアップ用途などが考えられる。さらに記録した映像は、Webブラウザーやリモートカメラコントローラー「RC-IP1000」から再生でき、IP経由でFTPサーバーへ転送することも可能になる。
1台のカメラをどう使い切るか
EOS C50からCR-N400までを続けて見ていると、カテゴリーの異なる2台に共通する方向性が見えてきた。EOS C50では横位置の映像と縦位置の素材を同時に残し、デジタルズームによってレンズ交換をせずに画角を変えられる。CR-N400では離れた場所からPTZ操作しながら、横位置だけでなく縦型コンテンツを意識した映像も作れる。
カメラ単体の画質やスペックを見るだけではなく、1台を撮影現場でどう使い切り、撮った映像をその後どう展開するのか。実機を操作しながらブースを見ていくことで、シネマカメラとPTZカメラという異なる製品が、現在の映像制作ワークフローという一本の線でつながって見えてきた。