北陸放送機器展2026のV-04、映像制作/放送関連機材部門に出展したブラックマジックデザイン株式会社のブースを訪れた。撮影からポストプロダクション、ライブ制作、IP伝送まで幅広い製品が並ぶ中、今回もっとも足が止まったのは「DaVinci Resolve Studio 21.1」のデモだった。
画面に表示されていたのは、見慣れたDaVinci Resolveである。ところが、編集を始めたのは人ではない。外部のAIアシスタントと連携し、日本語で編集内容を指示すると、AI側がDaVinci Resolveを操作してタイムラインに手を入れていく。実際にその動きを目の前で見ると、「AIに編集方法を相談する」という段階から、さらに一歩進んだ使い方が見えてきた。
今回のデモでは、構成を作らずに素材を並べたタイムラインを用意し、「30秒間のダイジェストにしてほしい」と指示した。BGMを軸にインタビューを使い、複数のインサートを入れる。編集内容を自然な言葉で伝えた後は、画面を見ながらAIがどう動くのかを待つことになった。
「30秒のダイジェストに」でDaVinci Resolveが動き始めた
DaVinci Resolve Studio 21.1では、メニューに用意された「Setup AI Assistants…」から対応するAIアシスタントとの連携を設定できる。今回のデモでも、この機能を使ってAIアシスタントとDaVinci Resolveを接続していた。
指示を送ってしばらくすると、DaVinci Resolveの画面に変化が現れた。人がマウスを操作していないのに、画面上では編集作業が進んでいく。完成した編集結果が一瞬で生成されるのではなく、新しいタイムラインを作り、素材を確認しながら処理を進めていく。その途中経過が画面上に見えるため、「いま何をしようとしているのか」と思わず動きを追ってしまう。
やがて、もともと1分以上あった素材から、指示した30秒に近いダイジェストが形になった。インタビューも残り、映像クリップとBGMがタイムライン上に配置されている。自分でカットを重ねていく従来の操作とは異なり、「何を作りたいか」を言葉で伝えるところから編集を始められる点が印象に残った。
さらに「インサートを追加」「最後にクレジット」と頼んでみる
そこで、完成したダイジェストに対して追加の指示を出してみた。インタビュー中に複数のインサートを入れ、最後にクレジットを追加するという内容だ。ここでもDaVinci Resolveを直接操作せず、AIアシスタント側へ日本語で伝える。
AIはプロジェクト内に用意されていた素材を使い、タイムラインへの配置を進めていった。ただし、すべてが意図した通りに仕上がったわけではない。インサートが見えない位置に配置されるなど、修正が必要な部分もあり、最後は人の手による調整を加えた。
この結果も含めて、今回のデモは興味深かった。AIが一度ですべてを完成させるというより、人が目的を伝えて作業を任せ、結果を確認しながら必要な部分を修正していく。現時点でのAIアシスタントとの付き合い方が、そのまま画面上に現れていた。
操作方法より先に「やりたいこと」を伝える
もう一つ気になったのは、DaVinci Resolveの操作に詳しくない人にとっての入口だ。通常なら、どのページを開き、どのツールを使い、タイムラインをどう操作するのかを覚える必要がある。AIアシスタントとの連携では、まず「30秒にまとめたい」「ここにインサートを入れたい」と目的を言葉で伝えることができる。
もちろん、今回のデモだけで編集知識が不要になるとは言えない。実際に意図しない配置も発生しており、仕上がりを判断して修正するには人の目が必要だった。それでも、素材整理や仮編集、レンダリングなどの作業をAIへ任せ、その結果を人が判断するという役割分担は見えてくる。
DaVinci ResolveにAI機能が加わったという説明だけでは、その変化は想像しにくい。しかし、人がマウスに触れていない状態でタイムラインが動き、日本語で伝えた内容が実際の編集操作へ変わっていく。その過程を目の前で見られたことが、今回のデモで最も印象に残った。
もう一つの注目は「Blackmagic SDI Expander 8x12G」
AI編集のデモを見た後、もう一つ目に留まったのが「Blackmagic SDI Expander 8x12G」だ。こちらはポストプロダクションとは異なる方向から、映像制作のワークフローを支える製品である。
Blackmagic SDI Expander 8x12Gは、8チャンネルの12G-SDIをSMPTE-2110へ変換すると同時に、別の8チャンネルのSMPTE-2110を12G-SDIへ変換できる。既存の12G-SDI機器を100GイーサネットによるSMPTE-2110 IPシステムへ接続するためのゲートウェイとして機能する。
会場で説明を聞きながら背面を見ると、用途が分かりやすい。多数のSDIケーブルを長距離にわたって引き回すのではなく、複数の映像信号をIPへ変換してまとめて伝送する。放送局や大規模施設など、カメラや映像機器とコントロール側の距離が離れる現場では、ケーブル構成を整理する選択肢になる。
また、2系統の100Gイーサネットポートを備え、SMPTE-2022-7による冗長伝送にも対応する。既存のSDI設備をすべて一度にIPへ置き換えるのではなく、現在のSDI機器を活用しながらSMPTE-2110環境へ接続できる点も、この製品の役割を分かりやすくしている。
AIが編集し、IPが映像を運ぶ
今回のブラックマジックデザインブースでは、DaVinci Resolve Studio 21.1のAIアシスタント連携とBlackmagic SDI Expander 8x12Gという、性格の異なる2つの展示が印象に残った。
一方では、これまで人がマウスやキーボードで行ってきた編集操作の一部をAIへ渡す。もう一方では、既存のSDI機器とSMPTE-2110 IPシステムをつなぎ、複数の映像信号をネットワークで運ぶ。どちらも単体のスペックだけではなく、映像制作の工程をどう組み立てるかという部分に関わる展示である。
中でも、人が触っていないDaVinci Resolveが日本語の指示を受けて動き始めた場面は強く印象に残った。まだ人による確認や修正が必要な部分はある。それでも、人がすべての操作を行うのではなく、AIへ作業を頼み、その結果を人が判断する。そんな映像編集の進め方が、すでに実際の画面上で動き始めていた。