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今年のCine Gearの展示ブースから注目を挙げるならば、各社からリリースが相次いでいるラージセンサー搭載のデジタルシネマカメラだろう。RED MONSTRO VV、Panavision DXL2、ALEXA 65、ALEXA LF、キヤノンEOS C700 FF、ソニーのVENICEなどはラージセンサー以上に対応。S35とは異なる画質をアピールしていた。まずは、各社のブースの様子から紹介しよう。

Sonyブース:分離可能なVENICEエクステンションシステムやハイフレームレートへのアップグレードを発表

■画質の低下なしにイメージセンサーブロックを離せる「VENICEエクステンションシステム」

ソニーは、ジェームズ・キャメロンの映画製作会社ライトストーム・エンターテインメントが「アバター」続編の撮影にソニーのVENICEを使うことを発表した。「アバター」は、3Dのカメラをリグに乗せて撮影が行われるが、カムコーダーだと重すぎる。ライトストームは、カメラのフロントブロックだけを持って撮れるように要望したという。

そこで、ソニーはライトストームと協力して、VENICEをカスタマイズしてカメラ本体からイメージセンサーブロックから取り外して延長できる「VENICEエクステンションシステム」を開発。VENICEのケーブルシステムを使うことによって大幅に重量を減らすことに成功し、自由度の高い撮影が可能になるという。

ソニーブースの撮影コーナーには「アバター」の人形が並べられていた

エクステンションシステムのケーブルには、10フィート版と20フィート版の2種類があり、10フィート版は単純にケーブルを伸ばしたものだが、20フィート版は間にリピーターを挟んで延長している。このあたりの長さは、要望を聞きながら実現しているという。

■VENICEがハイフレームレートに対応

パラマウントシアターで行われたスクリーニングでは、夏に公開予定のVer.2のファームウェアの詳細を紹介。当初のリリース時期は8月と発表されていたがNABでは7月へ前倒され、Cine Gearでも7月から利用可能と改めて発表された。

また、「VENICEは優れているがハイフレームレートが欠けている」と言われてきたが、6Kで60p、4Kで90p、2Kで120pのハイフレームレートをイメージャーを変えることなく有償ベースで2019年春よりアップデートを開始することを発表した。

Teradekは、NAB2018でVENICEの後部に搭載する無線ビデオシステム「Teradek Bolt」をコンセプト展示していたが、Cine Gearではテラデックとソニーの両ブースでワーキングサンプルを展示。可動する状態で、こちらもVENICEに関する見逃せない展示となっていた。

プレゼンテーションの中で、ハイフレームレートに対応することを発表

ARRIブース:ALEXA LFやALEXA 65を展示

ARRIブースは、先日行われたNABの展示から大きな変更点はない。中でも一番の注目はやはりALEXA LEだ。予定より若干遅れたが、6月上旬にレンズ4本とカメラが出荷を開始。ブースでは、「ALEXA LEは今すぐにでも現場でも使える」という雰囲気でデモが行われていた。

出荷を開始したばかりのALEXA LF

Cine Gearでは、レンタル専用のALEXA 65を展示し、被写界深度の違いなどALEXA LEと比較できるようになっていた。会場で説明して頂いた話によると、これまでのALEXA 65はXPLという65mmフィルムの頃に使っていたレンズマウントを採用しているが、LFで使われているLPLマウントに換装していく予定があるという。

LPLマウントは、65ミリフィルムに対してもケラれないことが判明し、ARRIとしては時間をかけてLPLマウントに統一する方向に動く。ARRIは、シグネチャープライムがALEXA 65で使えるようになり、逆にALEXA 65でレンタルしているレンズをLFでも使えるようになるとのこと。ALEXA 65に対応するレンズとして、Prime DNAシリーズやPrime 65シリーズなどをラインナップしているが、「ALEXA 65はレンズの種類が少ない」と指摘されることがあった。今後は、LPLマウントの対応によってレンズの選択肢というのはどんどんと広がるだろうとのことだ。

レンタル専用のALEXA 65

リモートヘッドの「SRH-3」も見逃せない展示となっていた。ARRIは、2年前にSachtlerからスタビライザーのシステムを買収して「Artemis」シリーズを引き継いだり、FoMaSystemsというドイツの三軸ジンバルメーカーとパートナーを提携。「Trinity」をリリースし、それに追加して新たに登場したのが「SRH-3」だという。

リモートヘッドの「SRH-3」

SRH-3のコンソール。オールインワンで、ホイールでパンとチルトをコントロール可能。インターフェイスで切り替えて、ジョイスティックで操作できる。レンズコントロールのシステムもすべて含まれている

LEDパネル型ライト「SkyPanel」の10の新機能を搭載するファームウェア4が発表され、ブースでもデモが行われていた。実際の光源に対して色を合わせるXYコーディネート機能は、ランプを点灯させてそのランプをカラーメーターで測定し、カラーのXY値を直接打ち込むと再現できる。また、「ライトエンジンDMXコントロール」は、個々のライトエンジンを制御する機能で、例えばS360であればLEDの中にパネルが12個を搭載し、それを個々に操作することができるようになる。

SkyPanelはファームウェア4にバージョンアップを開始

S360には12のライトエンジンが搭載されており、個々のライトエンジンを制御して点灯可能

RED Digital Cinemaブース−暗いシーンでのGEMINIセンサーの優位性をアピール

REDはここ2年、NABの展示会場に出展せずにCine Gearの出展にリソースを注ぎ込んでいる。今年のCine Gearでも、ブースの展示だけでなく、REDで撮影された短編映画を公開するセミナーも開催しており、大注目の出展企業となっていた。そこで、今年のREDブースの見どころを、同社に聞いてみた。

――Cine Gear ExpoのRedブースのハイライト教えてください。

REDデジタルシネマはCine Gear Expo2018にステージ17のS101にブースを構えています。最上位のセンサーであるMONSTRO 8K VV、HELIUM 8K S35、GEMINI 5K S35を搭載したDSMC2カメララインナップを展示中です。さらに、REDは8K REDCODE RAW、HDR、および画像処理パイプライン(IPP2)をカバーする8Kワークフローをデモンストレーションを行っています。

REDはまた、ASCの新しい短編映画「エポック」よりプロデューサーのChristopher Probst氏、Rich Lee監督による舞台裏を紹介する予定です。彼らは、RED MONSTROのセンサーの特性によって4Kで完成した視覚的に魅力的な13分のストーリーを提供してくれました。

――先日発表した価格変更ラインナップのご紹介をご紹介ください。

REDデジタルシネマは、ユーザーに対しての価格、品質、そしてシンプルさに重点を置いて、高品質のカメラとセンサーの製品ラインナップを進化させています。REDのカメラの現行ラインナップは、MONSTRO 8K VV、HELIUM 8K S35、GEMINI 5K S35の3つのセンサーオプションを備えた1台のDSMC2カメラBRAINを含むように変更されました。

単一のDSMC2カメラBRAINには、選択したセンサーに関係なく、ハイエンドのフレームレートとデータレートが含まれています。REDの以前のカメララインナップと比較して合理化されたアプローチにより以前より価格を下げることができました。

REDの各センサーオプションと組み合わせたRED DSMC2カメラのBRAINは、柔軟性とパフォーマンスの究極のブレンドを提供します。

DSMC2とMONSTRO 8K VVセンサーは、映画のフルフレームレンズに対応し、35.4メガピクセルの超精細なスチルを生成し、17ストップのダイナミックレンジを兼ね備え54,500ドルという価格で提供します。

HELIUM 8K S35センサーを搭載したDSMC2は、今まで最高のDxOスコアを誇り、Super 35フレームで16.5+ストップのダイナミックレンジを提供し、現在24,500ドルで販売されています。

DSMC2のHELIUM

DSMC2 with GEMINI 5K S35センサーは、デュアル感度モードを利用して、明るい条件の場合は標準モード、低照度である暗い環境の場合はローライトモードで19,500ドルでクリエイターの方々に使いやすい環境を提供します。

DSMC2のGEMINI

映画やドラマに使われている暗いシーンを使ってGEMINIを試写できるコーナーを設置

GEMINIにはローライトと標準モードの2つ感度をもつデュアルセンシティビティモードを搭載。ローライトモードの明るさは必見といっていいだろう

REDは、EPIC-WとWEAPONカメラのBRAINの販売を徐々に廃止することになります。今回のラインナップの変更に加えて、我々は、古いREDカメラシステムから、またはセンサーから別のセンサーに移行しようとする顧客に新しいアップグレードパスを提供する予定です。

Canonブース:フルフレームを搭載したEOS C700 FFを展示

フルフレームセンサーを搭載したEOS C700 FF

5.9Kのフルフレームを搭載したEOS C700 FFを展示。36×24mmのフルサイズではなく、38.1×20.1mmのフルサイズセンサーを搭載し、最大5.9KのRAW収録、MXFとProResのマルチフォーマットに対応。モジュール構造を採用し、システムアクセサリーとの連携でシネマカメラとしてはもちろん、EFPカメラとしても運用することが可能。

ATOMOSのSHOGUN INFERNOとキヤノンEOS C300 Mark IIを組み合わせた展示

Blackmagic Designブース:話題のPocket Cinema Camera 4Kを展示

Blackmagic Designは今年もCine gearのゴールドスポンサー。展示ブースでは「Blackmagic Pocket Cinema Camera 4K」や「URSA Broadcast」などのカメラを展示。DaVinci Resolve 15のデモも行われていた。

カメラの展示が中心で、URSAシリーズが並べられていた

シグマの50-100mm T2や富士フイルムのHK4.7×18と組み合わせて展示が行われていた

今年秋に発売予定のBlackmagic Pocket Cinema Camera 4Kを展示。スチル撮影ボタンは機能しないなどの不具合はあったが、だいたいの機能は一通りは動いているように見えた

背面の液晶モニターが大型で、撮影や設定が快適だ

NABで発表されたDaVinci Resolve 15のデモも行われていた

Kinefinityブース:価格と性能が魅力のシネマカメラ

MAVO LFの出荷は2018年10月を予定。フルサイズのCMOSイメージセンサを採用し、センサーサイズは36×24mm、解像度は6Kを備える

Kinefinityは、スーパー35mmとフルフレームのフレームセンサーを搭載したMavoシネマカメラを発表。Cine Gearでは、デモユニットが展示されていた。

現在発売中のシネマカメラ「TERRA」。DSLRのように使いやすい小型、軽量を実現している

Logmar Camera Solutionsブース:軽くてコンパクトな65mmフィルムカメラ

デンマークの会社であるLogmar Camera Solutionsは、65mmフィルムを使った「Magellan 65mmフィルムカメラ」のプロトタイプを展示。レンズ、フィルム、バッテリーを含む撮影準備ができた状態の重量は12kgで、他の65mmフィルムカメラよりも軽量なのが特長。また、電子ビューファインダーのHDMIポートを使用して、外部USB 3.0ストレージメディアに録画することができる。中判カメラのHasselbladのVシステムのレンズマウントを採用しており、DistagonやPlanar、Sonnarといったレンズで撮影を可能にしている。

Magellanと500フィートフィルムマガジンを組み合わせたところ

レンズマウントは、ハッセルブラッドVシステムのものを採用

フィルムドアを開けたところ。すばやく調整ができるようになっている

txt・構成:編集部


Vol.03 [Digital Cinema Bülow VII] Vol.05