シグマ代表取締役社長 山木和人氏(左)と、商品企画部の若松大久真氏(右)
txt・構成:編集部

いよいよ発売直前。気になる時期と販売価格は?

7月に発表されたSIGMA fpがいよいよリリース目前となった。Lマウントでフルサイズ、しかしそのサイズは極小なシネマカメラといえばPRONEWS的には見逃せないと言える。

そんな発売まで秒読みのSIGMA fpについて2019年9月に開催されたIBC2019会場で山木社長と開発の若松氏にお話を伺った。シグマが初めて世に送り出したシネカメラはどこを目指したのか?

まさかのシネカメラ発表!会場から感動の声が上がった数少ない発表会からはや2ヶ月

山木社長(以下:山木氏):先日も発表会にお越しいただきまして、ありがとうございました。

フルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」

――近年まれにみる盛況な発表会でした。正直、レンズ発表と思いきや、シグマ初のシネマカメラSIGMA fp発表に大注目となりました。ここ最近の発表会の中では一番驚きましたし、感動しました。あの仕掛けも山木社長の案ですか?

山木氏:通常プレゼンは、100%自分で製作し決定します。今回は事前にみんなとシェアして意見をもらい、結構練りこみ、イベントにお越しいただいているお客様にサプライズをお届けしました。

最近の風潮では製品発表前に流出してしまうことが多く見られます。そこは情報漏洩しないように頑張りました。社内、当社の取引先にも伝えなかったです。日本の本社と海外にある弊社の100%子会社のみに伝えてました。

――全くと言っていいほど情報が洩れていなく発表日にSIGMA fpを見て驚きました。秋発売予定ということで待ち遠しいですが、正式な発売日と価格はどうなりますか?

山木氏:お待たせしていますが、11月には発売します。InterBEE頃でしょうか。価格に関しては、実はまだ決まっておりません。大体の価格帯は想定できていますが、コストの検証と、世界販売となりますので、為替の問題もございます。そのため価格は直前の決定になる予定です。

――価格は皆期待しております。結構抑えられた値段になる予定ですか?

山木氏:最近高価なミラーレスカメラの発売が多いですが、より多くのユーザー様のお手元にお届けしたく、努力しています。しかし高スペックでの開発に伴い初期投資も行っていますので、向き合いながら最適解を出せればと思います。

発表会でも、レンタルハウス向けのカメラじゃないか?ハイエンド仕様なのでは?と予想されている方が多く結構いらっしゃいましたが、そうならないように着地したいと思っています。

――ラージフォーマットのシネマ用カメラとしてはすごく価格が抑えられたものになるということですね。では、Lマウントの中ではお手軽な価格になるということでしょうか?

山木氏:色々攻めてきますね(笑)。Lマウントアライアンスでは、ライカさんやパナソニックさんのライナップがありますが価格はお安くはないですね。そこでどうなるかということになります。

※[追記]発売日は、2019年10月25日。希望小売価格はオープン、市場想定価格はボディ単品が税込220,000円、45mm F2.8 DG DN | contemporaryキットが税込264,000円とアナウンスされた

PLからLマウントへ変換する「SIGMA MOUNT CONVERTER MC-31」で「Classic Art Primes」など多くのシネレンズもfpで使用可能に。

――まさにLマウント兄弟が出揃い、SIGMA fpのポジショニングが気になります。SIGMA fpによってLマウントの世界が拡がることに相違ないと思います。SIGMA fpは様々な使用方法が浮かぶ、それを感じさせるIBCの展示ですね。

山木氏:今回は、朝からミーティングが目白押しです。様々なアクセサリーやカメラメーカー様が、SIGMA fpにすごく可能性を感じていただているようです。

――筐体のデータは、サードパーティーが周辺機器を製作可能なように自由頒布しているのですよね?

山木氏:はい。サイズなどを3Dデータで開放しています。また注目すべきはカメラコントロール部分までになりますが、SDKを提供する予定です。

――SIGMA fp開発で苦労された点を教えてください?

山木氏:苦労した点は多いのですが、主だったところでは3つあります。1つ目は、このカメラの独自性によるものですね。SIGMA fpは、我々が「まったく新しいコンセプトで作ろう」とゼロから開発したカメラです。

これまでどこにもなかったカメラゆえ、機能や大きさ・重さ、コストのバランスをどこで取るべきかのベンチマークや正解がないなかで、「最適解」を追求しなければならなかったことが一番大変だったところです。

2つ目はユーザーインターフェースです。「STILL」と「CINE」、完全に異なる2つのUIを作ったので、UIに関して言えばカメラまるまる2台分の開発労力がかかっていることになります。

1つのボディに静止画カメラと動画カメラ2つのUIをシームレスに行き来できるよう共存させる。メニューを作り分ける労力としては、それは大変でした。静止画カメラに動画機能を付属させる方がはるかに簡単だと思います。特にソフトウェア関連の作業ボリュームが倍増しました。

3つ目は、シグマにとっては、動画カメラの開発そのものが初めてだった点です。そのうえでさらに本格的な映像カメラを、ということですので、初めて尽くしでかなり大変でした。途中思いがけない障害もあって本当に苦労しましたね。

――SIGMA fp開発のきっかけを教えてください。ミラーレスを一から再構築しようと思ったのがスタートで着想から3年くらいかけているとお伺いしています。

山木氏:再構築というよりも、構成しているものを一回ばらして、すごくシンプルなものを作り、後から自分のスタイルで組み上げるとどんなことができるのか?と思ったのが最初です。

最初自分で少しスケッチして、そこから社内で話を始めました。その中で若松のように、シネマにすごく詳しい人間が、アイデアを出し、今の形に発展しました。正直今あるものは、最初のラフスケッチと結構違っています。

fpが実現するシネスタイルの反応は如何に?

山木氏:今回エンジニアとデザイナーが、新しい世界を作るんだと強い意気込みをもち、すごい情熱をもってやってくれたのはよかったな、と思います。

――辻川監督のプロモーションビデオもすごく良いです。SIGMA fpのローンチ方法そのものが非常に興味深いです。SIGMA fpに対しての辛辣な意見は少ないと思うのですがいかがですか?

山木氏:おかげさまであまり耳にはしていないです。「シグマ頑張れ!」と応援の意味合いもあると思います。

――シグマといえばFoveonセンサーです。多くのファンが次世代の新機種を待ち望んでいましたが、SIGMA fpはまさかのベイヤーセンサー採用でした。しかしながら応援してくれるファンの方が多いのではないでしょうか?

山木氏:意外にネガティブな方は少数です。もちろんFovenセンサーカメラの発売も待つけれど、SIGMA fpも、もう待ちわびている方がほとんどですね。

――我々もそうです(笑)。もともとユーザーを含めSIGMAの社風が変わっていることをファンは知っています。例えばDP/dpシリーズなど、変わったカメラを世に出している素地があるので、「そうきたか」と改めて感動はありました。IBC会場ではSIGMA fpシネスタイルで展示されていますが、会場での反響はいかがですか?

若松氏:シネレンズ発表時と同じように、本格的に使えるのでは?というご意見をいただいています。当初、ローエンドとか、ミドルクラスの方が注目されるのかと思っていました。α7ユーザーなどが中心かと思いきや、ALEXAやREDなど、実際に展示で並べているものもあるのですが、純粋に画を見いただいて良し悪しの評価をいただきます。

山木氏:ちゃんとした写真と、映画、フィルムを撮る道具として活用していただきたいので、そういう評価をいただけるのは嬉しいですね。

魅惑のシネボタン~1台に2つのカメラが存在する理由

――「CINE」ボタンは、非常に印象的です。映画を撮るために切り替えスイッチを「CINE」にしているんですよね?

「CINE」と「STILL」スイッチ切り替えで全く異なるUIで機能する

山木氏:ボタン一つで切り替ります。私はほとんど関わっていなくて、エンジニアとプロダクトデザイナーの仕事です。あのスイッチ部分はどこに設置するとか表記も長い時間をかけました。

若松氏:いろいろありました。別案も多く出ていました。最終的にはカメラの二面性とか、広がりを表現しており、シンプルでわかりやすいということで決定しました。

山木氏:ミラーレスカメラに動画機能が付いているのではありません。メニューから選択して動画撮影できるとか、録画ボタン押すとかではなく、「STILL」静止画、「CINE」動画の両バランスの切り替えですね。

若松氏:一般的なミラーレスカメラであれば、ダイヤルがあり、P、A、S、Mがあって、その中に動画用のカメラマークがあります。SIGMA fpの場合は、動画と静止画の切り替えというバランスです。「CINE」に切り替わったときに、UIがガラッと、本当のシネマ撮影用UIに切り替わります。

これもデザイナーと話して実装しました。まったく別のUIとなりますので、シネの時にしか出てこないメニューはでシネの時だけ、スチルの時には出てきません。結果、メニューを開いた構成も全部違います。開発の工数としては2倍かかっています。つまりカメラ2台分を一度に作ったような感覚ですね。

――まさに1台のカメラにそれぞれが共存するのですね。

txt・構成:編集部


Vol.06 [IBC2019] Vol.08