3大ソフトウェア初のそろい踏み
オートデスクは12月3日、泉ガーデンセンターギャラリーで3DCGソフトウェアユーザーイベント3Decemberを開催し、のべ600人以上が集まった。13時から6時間半以上にわたって行われた3December。「3D」と「December(12月)」の「D」をダブルミーニングにして、「3 December(12月3日)」に開催されているユーザーイベントだ。「Maya登場から10周年」というのがウリの3Decemberではあったが、事例紹介はMaya、3ds Maxのものになった。しかし展示会場のブースには、買収を完了したばかりのSoftimageの3DCGアニメーションソフトウェアSOFTIMAGE|XSI 7が!実は「3大ソフトウェア初のそろい踏み」イベントであった。
旧Alias|Wavefrontの3DCGソフトウェアMayaユーザー会AWGUA(Alias|Wavefront Global User Association)が主催して1999年にヨーロッパで始まったイベントで、2000年以降はAliasのグローバルコミュニケーションイベントとして実施してきた、2005年のAutodeskによる買収後は、Mayaだけでなく、Autodeskの3DCGソフトウェアのユーザーイベントとして展開。今年は、東京のほか、米ニューヨーク、米ラスベガス、米ロサンゼルス、英ロンドン、仏パリ、韓ソウル、豪メルボルンで開催された。
東京イベントでは、最初と最後で基調講演があり、Industrial Light & Magicの上杉裕世氏が3ds Maxを使用して制作した『スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐』や『パイレーツ・オブ・カリビアン / ワールド・エンド』におけるメイキングを解説したほか、Digital DomainのRichard Morton氏がMayaを使用した『スピードレーサー』のメイキングを紹介した。日本の事例紹介は、セガが3DCGショートムービー『SONIC: NIGHT OF THE WEREHOG』のメイキングを、デジタル・フロンティアが映画『バイオハザード・ディジェネレーション』における制作ワークフローについて解説した。基調講演で国内事例をサンドウィッチにした構成を採用したことで、最初の基調講演を見たらおさらばなんてことができないような工夫をしていた。
イベントから見える1社3大ソフト時代は果たして…?
3DCGベンダーのユーザー会と言えば、毎年夏に開催されるSIGGRAPH会期中に開催されるものがよく知られている。SIGGRAPH取材中は、各社のユーザー会になるべく出かけて、最新のユーザー事例を確認したり、その場の雰囲気を確認したりしてきた。事例紹介で細部にわたって報告し、休み時間になるとアルコールやソフトドリンクを片手にじっくり情報交換する。そんな風景を見るのは、そのソフトウェアの勢いを肌で感じる良い機会でありバロメーターでもあった。当然、各社のユーザー層により雰囲気は変わり、Aliasのユーザー会にはフィルムやデザインに強いユーザーが和気あいあいと参加していたし、Softimageのユーザー会にはゲームなどのエンターテインメント系のユーザーがじっくりと議論する姿が印象的だった。Autodeskユーザー会は、この2つとは異なり、CAD系や放送系の真面目な固い感じのユーザーが集まっていたことを思い出す。そういう意味では、3大ソフトウェア初のそろい踏みの3Decemberは、もはやユーザーの違いを楽しめるイベントではなくなってしまった。
それにしても、制作費圧縮に息も絶え絶えな日本のコンテンツ制作の状況にあって、CG系はもちろん、ノンリニア編集系もユーザー会自体が開催されなくなってきている。つまり、ユーザーが旧交を暖めつつ、互いの最新情報を交換しあう貴重な場が失われてしまっているのだ。ソフトウェアがバージョンアップして使いやすくなることは必要だが、やはり現場第一線のユーザーが交流することで生まれてくる技術の進歩もあるはずだ。3Decemberの開催は、久々に「3DCG制作者は頑張っているぞ」という思いを垣間見たような気がした。