3月8日(日)未明を期してアメリカではDaylight Saving Time(夏時間)に入ります。コロラドでは3月8日の午前2時に時計の針を1時間進める事になっており、これにより日本とコロラドの時差は今迄が16時間だったのが15時間となります。
TV番組の健康相談のプログラムでは急激に1時間早めるのは特に年寄りの人にはストレスがかかるので、自分が日常使っている時計の針を金曜日に20分進め、土曜日に更に20分進めて、本番の日曜日に更に20分進める様にするとストレスが少なくてすむので試してみられては、と言っています。
ここのところデンバー地区ではインフルエンザが猛威を振るっており、小学校での学級閉鎖が目立って来ていますが、いよいよ我が家にもその影響が出て来ており、家内が感染したとみえて始めの数日は激しい咳を伴って体力を消耗したようで約3週間ベッドに入ったきりとなっていました。
その後一旦回復して元気が出て来たと思いましたら、再び少し種類の異なるビールスに感染したのか再びベッドで横になったきりとなっています。昨年末に家内はインフルエンザの予防接種を受けたのですが、私は受けていません。予防接種を受けた家内がかかって、受けなかった私が大丈夫、と言う事でなんとも不合理な状況ですが、そうこうしているうちに私も何か鼻がグシュグシュしてきてどうやら遅ればせながらお付き合いする事になりそうです。
私の家内の母親は今年の5月で満100才をむかえますが、現在老人ホームで(Retirement Homeと呼んでいます。)日常的には天気の良い日は建物の周りの散歩コースを、また天気が悪いときには建物の内部での散歩を日課としており大変元気にやっています。
ところが2月下旬にインフルエンザにかかった様だ、との連絡があり、丈夫と言っても年ですから大変心配しましたが、このRetirement Homeは約250名の老人達がアパートメント形式の構成となっていますが、このとき約35名の老人がインフルエンザにかかってベッドに入ったままとなっている、とのことで緊急事態発生と言う事で外部の人の出入りをシャットアウトして、また内部の老人達も部屋から出歩かない様にとの対策をとりました。食事は日頃は内部のレストラン形式の食堂で摂っていますが、寝込んでいる人達にはルームサービスで供給すると言う対応がとられています。
そんなわけで、私達も電話での連絡で確認するだけですが、最近になって家内の母親は元気が出て来た、と言う事でホットしているところです。
襟を正して業務に当たる
アメリカの経済不況を反映して自動車産業のビッグ3(GM、Ford、Chrysler)の3社がその新車販売で大幅な売り上げ低下のためにその操業維持が困難となっている事から、連邦議会へ巨額な援助資金の投入を要請してこの苦境を乗り切ろうとしていますが、その議会での事情説明の為に3社の各社長がデトロイトからワシントンへ向かうにあたってそれぞれの会社の自家用ジェット機で移動する事に付いて「巨額な税金を使う資金投入を行ってもらう為の連邦議会での説明をするのに多大なお金のかかる自家用ジェット機でワシントンへ来るのは国民からの税金を使うと言う認識に欠けているのではないか?」との声が上がっており、結局自家用ジェット機での移動は取りやめとしたと言う事が最近生じています。
一方、コロラドでも経済不況が進行して来て各企業の苦戦が始まっていますが、企業活動が低迷して来ると同時に各地方自治体への税金収入の減少に直結しており、コロラド州では昨年10月1日よりスタートしている2009年会計年度での執行予算に対して租税収入が大幅に不足すると言う事態が生じています。
こうした状況に対して自動車ビッグ3の社長の場合と同様に、先のこのレポートでも報告しましたが、昨年11月にRitterコロラド州知事を団長とする大経済使節団をコロラドから日本と中国へ派遣した際に、その時の航空運賃について知事及び州の経済開発局長と州知事室のエネルギー局長の3名は他の使節団メンバーがいずれもエコノミークラスで合計一人当たり2575ドルの航空運賃で移動したのに対して、ビジネスクラスで一人当たり6615ドルを使って移動しています。
デトロイトの3大自動車メーカーの社長たちの場合と同様にこの航空運賃についても州民からの税金を使っていると言う感覚に欠けているのではないか?といった指摘の声が上がっています。
コロラド州としての租税収入が減少して大幅な総額6億ドルの執行予算の削減を計ろうとしている時にこうした事はまずいのではないか、と言う批判の声となっています。
租税収入が潤沢で州として執行予算に問題が無いか、又は先の経済使節団の訪問で多大な実質的な成果が上がっていればこの様な批判の声は出て来ないのですが、現在の緊縮財政下での運営に当って州の事業計画に大きな犠牲を計る必要が生じている時にこうした事は許されない、と言った州民の感情の表れといえます。
デトロイトの3社長の場合とこのコロラド州知事の場合ではその金額規模が大きく異なりますが、基本的にはモラル認識の問題になると思います。
州の経済使節団の事務局では「長旅であったので特にリーダーのRitter知事には「飛行中にはゆっくりと休んでもらって日本や中国ではいろいろなビジネスミーテイングの連続となるのでベストな体調で臨んでもらいたい」という配慮からビジネスクラスを選択しているのだ、との説明がなされています。
また、今回の日本と中国への経済使節団の派遣総費用は州政府としては約8万1000ドルの拠出を行っており、それ以外には関連する企業や団体からの拠出が総額9万2000ドルで、残り殆どは州の観光誘致費用予算から賄われているとしています。
今回はタイミング的にも日本も中国も経済不況の中での使節団の訪問でしたので期待する成果を上げる事が出来なかった、という事だったと思われます。 それにしてもこうした批判の声が出て来る事は、まだアメリカ社会もまともと言えそうです。
地上波TV放送のデジタル移行のその後
最近迄2月17日が今迄のアナログ方式からデジタル方式への全面移行の期日と設定されていました。日本でもこの事は既に報道されている事と思いますが、連邦議会の決定で6月12日(金)からと期限ギリギリで延期される事となっています。
もしブッシュ大統領のままでしたらそのまま2月17日にはデジタルへと移行が行われていたと思われますが、オバマ新大統領になって、その視聴者側で全米では約650万所帯になると推定されて、このまま切り替えてしまうとTVを見られない家庭が多数にのぼってしまい社会問題となる、と言う事で民主党では急遽延期する法案を提出して共和党と折衝討議を進めて来ましたが、期限の目前で延期される事となっています。
併せて、今迄のアナログ方式のTV受信機で今度のデジタル放送を受ける為のアナログ/デジタル コンバーターの購入にあたっての40ドルの国からの補助金クーポンを申し込む人がその後も継続しており、一方この為に準備した国庫予算も使い果たしてしまった事から、延期に当たっての追加補助金も確保しなくてはならない事も有って、最近になってこのクーポンを申し込んだ人達が大勢まだ待たされていると言う状態となっています。
以前にクーポンの支給を申し込んで入手した人の中でも、このクーポンの有効期限が発行日から30日以内にコンバーターを販売店で購入しないと無効となってしまう、と言う事を知らないでいて期限が過ぎてしまっている人達も多数にのぼるものと推定されています。
我が家では2月2日にオンラインで申し込んだのですが、クーポンの支給は4月11日に郵便で発送されるとしており現在待たされている状態です。
一方、このデジタル方式全面移行の期日が延期された事による放送局側の対応に付いては様々ですが、デンバー地区での地上波TV放送は2月18日現在で下記の様になっています。
放送局 | アナログ続行中 | デジタル放送中 |
KWGN 2ch | Yes | No |
KCNC 4ch CBS系 | Yes | Yes |
KRMA 6ch PBS系 | Yes | No |
KMGH 7ch ABC系 | Yes | Yes |
KUSA 9ch NBC系 | Yes | Yes |
KBDI 12ch PBS系 | STOP | Yes |
KTFD 14ch Telefutura系(スペイン語) | Yes | No |
KTVD 20ch MyTV系 | Yes | No |
KDEO 23ch 独立系 | Yes | No |
KDEN 25ch Telemundo系(スペイン語) | Yes | No |
KZCO 27ch AztecaAmerica系 | Yes | No |
KDVR 31ch Fox系 | Yes | No |
KRMT 41ch 独立系 | Yes | No |
KCEC 50ch Univision系(スペイン語) | STOP | Yes |
KWHD 53ch 独立系 | Yes | No |
KTBN 48ch & 57ch Trinity系 | Yes | No |
KPXC 59ch ION系 | Yes | No |
12chのPBS系は同じ送信アンテナをデジタルでも使用することから、当初の2月17日で準備して来たのでアンテナをデジタル対応にしてアナログ放送は取りやめています。
同じPBS系の6chがありますのでコマーシャルの無い放送局としては当初の期日通りデジタルへ移行しています。また、スペイン語放送の3社の中で50chのみがデジタル移行をアンテナ対応の為にデジタル移行を行っています。
CircuitCity店の破産閉店
家電製品の販売で全米でのチェーンストアーを展開してBestBuy店と競って来ていたCircuitCity店がその業績不調から先にそのセールスチャンネルを他へ売りに出すか、業績不調の店舗を閉めると言う様な方向で進んで来ていましたが、去る1月16日(金)に他への売却をあきらめ全面的に全米に展開している合計567店を閉鎖して営業活動を停止すると発表しました。その全米での各店の総従業員数は3万人にも達すると言う事で大きな影響力を与える事となります。
コロラドのデンバー地区には合計14店舗があって昨年の11月にその内の3店の閉鎖を発表したばかりでした。2月に入って、サーキットシテイでは「Going Out of Business Sale」と言う事で激しく在庫商品の売却特別セールを展開して、TVのコマーシャルでも頻繁に行っており、今迄営業していた時にこのくらい多くのTVコマーシャルを流しておれば閉店にならずに済んだのでは、と思わせる程です。
同店では3月31日迄この特別セールを展開してそれ以降にその活動を停止するとしています。各販売商品はカテゴリー別に異なっていますが、40%-60%の値引率で在庫各商品を処分販売しています。
CircuitCity店の閉鎖は競争相手であったBestBuy店やUltimate Electronics店へと流れる事になると考えられ、BestBuy店の株価上昇となっています。CircuitCity店は昨年の11月に破産申請を裁判所に行っており、同店への各商品供給メーカーは昨年の年末商戦期にはその商品供給面で制限を設けてやっていました。
また、昨年初よりレンタルビデオの全米チェーンの大手Blockbuster店が総額10億ドルで同店を買収してビデオレンタルとAV家電販売の総合チェーンを構成しようとして交渉して来ましたが、昨年7月にその交渉がまとまらずその買収から降りています。
コロラド州から日本への輸出商品の状況
コロラド州から外国への輸出に付いてその2008年の実績報告がされています。その日本への輸出額は総額3億3629万ドルで国別では第5位となっています。一昨年の2007年が総額3億5902万ドルでしたので、6.3%の低下となっており、第1位はカナダ、以下2位にメキシコ、3位が中国、4位はオランダで日本が5位となりました。かつては日本への輸出は総額で8億ドルを越えて首位を占めていたのですが、1990年代の中頃から急激に下がって来て昨年の統計では5位に付けました。
日本への輸出品目別では、金額で下記の様な順位となっています。
品目 | 2008年 | 2009年 | 増減 |
食肉(生肉又は冷蔵物) | 4468万ドル | 1709万ドル | 大幅増 |
食肉(冷凍物) | 2812万ドル | 1574万ドル | 増 |
医療、手術、歯科用などの機器 | 1573万ドル | 5802万ドル | 大幅減 |
産業機器類 | 1127万ドル | 1356万ドル | 減 |
データ処理システム機器 | 1114万ドル | 1489万ドル | 減 |
2003年には日本へのアメリカからの食肉(主として牛肉)の輸出は総額で14億ドルとピークを示しましたが、その後発生した狂牛病の問題の為に一気にゼロ近く迄下がってしまい、その後輸出が再開して昨年では輸出のトップ品目になるまでに回復して来ています。
現在でも日本への輸出用牛肉は狂牛病感染の危険の少ない生後20ヶ月以内の牛に限定されていますが、韓国向けなどでは生後30ヶ月以内を可として輸出されていますので、実績が認められれば近いうちに日本でも30ヶ月迄の規制に切り替えてくれるのではないかと期待しています。
コロラドでの一番の大手牛肉加工処理会社はデンバーの北のGreeleyに在るJBS Swift社で、同社は日本との牛肉輸出再開交渉の時にもTVで紹介されたり、また、中米からの不法労働者問題で取り上げられたりしていますが、日本への輸出再開が今後大きくその実績を伸ばすこととなる事を期待しています。
ちなみに、コロラド州の農業畜産統計局のレポートによりますと、2007年にコロラドで活動している年収入が1000ドル以上の農業畜産業の家数は3万7054軒で、その操業している土地の面積は平均で853エーカー(1エーカー=4046.8平方m)となっています。
それらの家の6942軒は女性がその代表者となっており、その出荷農業畜産物の売り上げ市場価格の67.3%が牛肉及び鶏肉などの食肉で占められています。
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あとがき
この前のこのレポートで報告しましたコロラドの地元新聞2紙のうちの1紙であるRocky Mountain Newsが新聞社を売りに出していましたが、約50日で創刊150年を迎えると言うのにその買い手が見つからずとうとう廃刊となりました。
そのFinal Editionは2009年2月27日(金)版でしたが、創刊号は1859年4月23日(土)版ですので150年の歴史を持つその編集スタイルが地元民に人気の有る新聞で、我が家でも購読していたのですが、2008年通年では同社の決算は1600万ドルの赤字を計上しており、以前から赤字経営が継続していたのですが、昨年12月4日に何処かへ売却するという意思を固めて公表し、買い手を捜していましたが、1社のみが買い取りたいとの意向を示し交渉していましたが結局まとまらず、廃刊としその活動を停める事となりました。
創業者はWilliam N. Byersと言う人で、当時は手動の印刷機を使って印刷を行っていましたが、コロラドが州となった時より、またデンバーが市となった時よりも昔に創刊しています。
その後1890年代ではデンバー地区では6紙の日刊新聞が有って購読者の獲得で競争していましたが、それにも勝ち抜いて、もう1紙の地元新聞である1892年創刊のDenver Post 紙の2紙が互いに競いながらコロラドのジャーナリズムを先導してきました。
現在の同紙のオーナーはE.W. Scripps氏でプライベートカンパニーですが、1926年から継続してオーナーとなっています。現在での経済不況の進行から同紙では広告収入の減少が起きて来ており、今回の廃刊への決心をさせたものと思われます。
最近のロッキーマウンテインニュース紙の発行部数は通常の日は21万部程で土曜日版は45万7000部となっていますが、今回のFinal Editionは特別号と言う事で全52ページの今迄の同紙の歴史をしのばせる回想録的な編集となっており35万部発行されました。
約230名の記者や編集者達によって纏められて来ました。1999年に発生した地元高校のコロンバインハイスクールでの生徒2人による銃の乱射事件の悲劇ではその同紙の報道が報道写真で有名なPulitzers賞を受賞して、その後にも更に3回の同賞を獲得しています。
Rocky Mountain Newsの商標権はオーナーのE.W. Scripps氏が現在所有していますが、将来また同氏が刊行するような事があればリバイバル出来る様になっていますが、そのチャンスがまた巡って来るでしょうか?
従業員達が社屋の一部屋に集まってその壁に埋め込まれたタイムカプセルを開封するという儀式が最終日に行われました。 このタイムカプセルは1985年に埋め込んだもので、「このカプセルはRocky Mountain News紙が創刊200周年を迎える2059年に開封する。」と記されており、中身には当時のRocky Mountain News紙とDenver Post紙、そして当時の全従業員の署名をしたノート、デンバー市の地図などいろいろなものが入っていました。
3月1日(日)には前回のこのレポートで紹介した同新聞社屋のビルの最上階に取り付けられていた「Rocky Mountain News」という大きな文字の看板が取り外される工事が行われてその150年の活動の幕を閉じています。
また、同紙が廃刊となった次の日2月28日(土)の新聞は同紙に代わってDenver Post 紙が何事も無かったかのように配達されましたが、以前より日曜日の版は両紙が相互乗り入れの形で刊行していましたので特別な問題も無く、実質的にその購読者をDenver Post紙が受け継いだ、と言う事になっています。