▲多くの人が集まったAudio&Visual新製品発表会

Roland Audio&Visual新製品発表会

6月23日、表参道スパイラルホールにてローランド社主催でAudio&Visual新製品発表会と題した展示会が開催された。文字通り同社が手掛けるAudio&Visusalに関する現行及び新商品の展示とセミナーが行われた。Visualの部分ではPRONEWSコラム「業界探検倶楽部」でもお馴染みの小寺信良氏によるビデオフィールドコンバーター「VC-50HD」とビデオフィールドレコーダー「F-1」のワークフローに関するプレゼンテーションが行われ多くの注目を浴びていた。 「VC-50HD」と「F-1」という話題のコンバーターとレコーダーの開発を担当したローランドエスジー 開発部プロデューサーの志水貴光氏に話を聞くことができた。

ポータブルなファイルベースの収録システムを実現するローランドのVC-50HD、F-1

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ポータブルなファイルベースの収録システムを実現するローランドのVC-50HD

ローランドは、ビデオフィールドコンバーター「VC-50HD」とビデオフィールドレコーダー「F-1」のVersion 2を発表した。VC-50HDは、高画質/非圧縮のHD/SD-SDIとコストパフォーマンスの高いHDV機器間での相互変換を可能にする小型のコンバーター。価格は35万円(税別)で、6月に発売したばかり。F-1のVersion 2は、2~50MbpsのMPEG-2 TS記録やループレコーディング、プリレコーディングなどの機能をアップデートにより追加される予定だ。2つを組み合わせてポータブルなファイルベースの収録システムを実現できるところにも注目が集まっている。

手のひらサイズでバッテリー駆動にも対応

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外部電源を搭載できるバッテリープレートホルダーを装備した状態
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F-1とほぼ同じサイズを実現するほど小型化を実現している

VC-50HDは、HD/SD-SDIとIEEE1394の相互変換が可能なコンバーターで、カメラ側のHD/SD-SDIからVC-50HDを経由してIEEE1394側の機器に映像をコンバートしたり、IEEE1394側の機器で再生すればVC-50HDを経由してHD/SD-SDIにアウトすることができる。例えば、スタジオ設備のHD化を進める一方、どうしても映像の編集やバックアップのコスト、効率化を考えるとHDVフォーマットを使いたい時があるが、そんな時にVC-50HDを導入すれば両者の利点を活かした自由度の高いシステムを構築できるようになる。

同社のマルチフォーマットコンバーター「VC-300HD」との違いは、機能を絞ってバッテリー駆動や小型軽量化し、価格は1/3を実現したところだ。F-1と同じサイズになるように手のひらサイズを実現したり、ACアダプタやニッケル水素電池8本で約2時間、XLR 4ピン対応外部バッテリーで約10時間の駆動を可能にして、「野外で使用したい、機動的に使いたい」というスタイルを実現している。

映像の変換方向(SDI→IEEE1394やIEEE1394→SDI)やMPEG-2 TSのビットレート(35Mbpsや50Mbps)といった大まかな設定は本体右側面にあるディップスイッチで設定が可能。さらに、PCに接続した専用ユーティリティ(2009年8月リリース予定。ローランドのホームページより無償ダウンロード) を使えば、ディップスイッチで設定できないMPEG-2 TSの8Mbps(HD)などビットレート設定が可能になる。

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モニタリングに最適なHDMI出力を前面に装備

また、本体前面にはHDMI端子を搭載しているので、民生用の大型モニタにも対応できる。HDMI端子にはSDIやIEEE1394から入力された映像を変換の方向に関わりなくモニタできるようになっている。

VC-50HDの応用で注目したいのがBlu-rayディスクレコーターへの対応で、VC-50HDは民生用のBlu-rayレコーダーに接続して記録することにも対応が可能だ。VC-300HDは放送局内でBlu-rayディスクの作成用として非常にニーズの高い製品だが、より低価格を実現したVC-50HDの発表以降は「VC-50HDでBlu-rayディスクの制作は可能なのか?」という問い合わせが続いているという。そんなところからも同機の期待の高さが伺える。

F-1との組み合わせで高画質、高機能の収録に対応

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新しい機能が追加されるF-1

F-1は、HDVやDVを長時間録画するためのポータブルレコーダーで、不定期に公開されるアップデートにより次々と機能を追加することが可能だ。バージョン1.2や1.3は放送や制作の現場をサポートするためのアップデートだったが、Version 2では「ループレコーディング」や「2~50MbpsのMPEG-2 TS記録」など多目的な用途への機能追加が中心で、”VC-50HDでMPEG-2 TSへ変換して、F-1で記録する”という組み合わせで使うことを前提としたアップデートといえるだろう。

VC-50HDとF-1の組み合わせで注目のMPEG-2 TS記録は、50MbpsでHDVを超える高画質を可能とするのが特徴だ。50Mbpsの活用例について志水氏はこう語る。

「例えば、HDCAMからバックアップ兼オフライン編集用素材を50Mbpsで記録するというのが考えられます。オフライン編集だったら多少圧縮がかかっても編集できるフォーマットで撮ったほうが現場などで荒編集をしやすいですからね。F-1には簡単な編集ができる”F-1ユーティリティ”と呼ばれるものが付属しますが、このツールはもともと現場で荒編集をしてほしいという目的で作ったツールでもあるのです。もちろん、MPEG-2 TSの編集にも対応します」

もっとも低いビットレートMPEG-2 TS 8Mbps(HD)では27時間の長時間記録、SDの場合は112.5時間の記録に対応するのも特徴だ。

「実は当初、最低のビットレートは35Mbpsで連続記録は9時間でした。しかし、ポータブルレコーダーには”まる一日連続記録したい”、厳密にはディスクの交換の時間も含めて24時間以上の記録に対応したいという要望がありました。こうした経緯で”8Mbpsで27時間記録”という長時間向けのビットレートが追加されました」

ループレコーディングはMPEG-2 TS記録と一緒に使えばいろいろなシーンに応用できそうな機能で、指定した一定ごとの時間(10/30/60分)にファイルを分割しながらの録画し、ディスクスペースがなくなれば古いファイルを自動的に削除してつねに記録された状態を保つというものだ。

「テレビ局であれば地震が起きた瞬間の局の様子を撮影したいという需要がありますが、こういった用途は高画質で常に撮りっぱなしの状態にしたいはずです。VC-50HDとF-1の組み合わせですと、50Mbpsで記録して10分ごとのループレコーディング設定で対応可能になります」

撮影された素材は、F-1に装備されているEthernetからネットワークを通じてPCからコピーすることが可能だ。設定の変更や素材の回収ごとに天井に設置されている定点カメラや監視カメラに手を伸ばす必要もないし、ループレコーディングを10分に設定していれば転送が高速でないネットワークを経由してもコピーにそれほど時間がかからず、速報といった用途にも対応できる。また、レコーダーによってはファイルシステムにFAT32を採用しているために素材を4GBごとに分割してしまうものがあるが、F-1ではNTFSを採用しているのでメディアのスペースがなくなるまで1ファイルでセーブできる。つまり27時間録画したら、1ファイルで27時間のファイルを生成できるのも利点であろう。

手ごろな価格で双方向、高画質を実現

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F-1にはVGA出力を搭載しており、マウスで操作や設定が可能

VC-50HDの競合製品を挙げるならばHD/SD-SDIとIEEE1394の双方向コンバートに対応したトムソンカノープスの「ADVC-HDM1」などが考えられるが、価格は95万円とVC-50HDの2倍以上になる。安くて単機能なコンバーターというのもいくつか発売されているが、低価格帯のものでSDIとHDVの双方向に変換できるものや、8Mbps、35Mbps、50Mbpsなど3段階のビットレートに対応しているものは恐らくVC-50HD以外に存在していないだろう。

志水氏はVC-50HDの強みとして”画質に注目してほしい”と語る。

 「コンバーター選びで意外と見落とされるのが”画質”です。デジタル TO デジタルのコンバートというのは”どのコンバーターでも画質は変わらない”と思われがちですが、各製品ごとに画質の差というものが確実に存在します。VC-50HDの変換エンジンは、価格が3倍のVC-300HDと比較しても見劣りのないエンジンを搭載しているのも特徴です」(志水氏)

 機会があれば、ぜひ実機でその画質の実力を見比べてほしい。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。