マトロックスは8月7日、東京・青山のカナダ大使館でマトロックスサマーイベント2009を開催した。サマーイベントでは、最新のマトロックス入出力製品とターンキーシステムを展示するとともに、マトロックス製品を取り扱うオービット・ミューズテクス(東京都渋谷区)とストレージ製品を扱うコムテックス(東京都品川区)が協力し、シアターでWindows環境を中心とした製品紹介を行った。
AXIO LEをHP Z800ベースに変更。Mac版も発売
マトロックス ターンキーシステムRT.X2 |
マトロックスMXO2シリーズ (上から)MXO2、MXO2 mini MAX、MXO2 Rack |
マトロックスCompressHD |
マトロックスのWindows環境製品は、アドビ システムズの編集ソフトウェアPremiere Pro CS4をより快適にするためのシステムとして構築。ミューズテクスでセールスディレクターを務める吉田英氏は「これまでのマトロックス製品はミドルレンジからハイエンドのプロフェッショナルを対象に製品展開をしてきたが、今後はより安価なシステムを望むプロフェッショナルに向けてシステム展開していく」と話し、リアルタイム作業でありながらも購入しやすい価格、さまざまなシチュエーションで利用できるフレキシビリティを持たせるというコンセプトで製品を投入するとした。ターンキーシステムとして、64bit OSを使用してメモリ空間を効率的に活用できるAXIO LEと、最高解像度1440×1280でAXIO LEの簡略版となるRT.X2を紹介した。
リニューアルしたAXIO LEは、HP製64bitワークステーションZ800とRAID5ディスクアレイを組み合わせて提供するターンキーシステムとなり、9月1日から275万円(税別)で発売する。8bit/10bit非圧縮やMPEG2 4:2:2 I-frame HDはもちろん、P2/P2 HD、XDCAM/XDCAM HD/XDCAM HD 422/XDCAM EX、MPEG-IMXといったMXFファイルやDVCPRO HDのネイティブ編集に対応している。HDDの転送レート上限までという制約はあるもののリアルタイムにテロップを扱え、Premiere Pro単体ではレンダリングが必要なエフェクトやトランジションについてもリアルタイムで扱えるように拡張できる。このほか放送用サーバへのMXFファイルダイレクト出力を可能にしている。RT.X2は、最高解像度1440×1280までとなり、放送用サーバへの出力機能を持たないシステム。RT.X2で制作したプロジェクトは、AXIO LEでも扱うことができる。9月からHP製ワークステーションZ400に4TB HDDを組み合わせて958,000円で提供する。
新ラインアップの展開としては、Mac Pro環境におけるPremiere Proを使用したMac OS X版AXIO LEを投入することが明らかにされた。従来のターンキーシステムDigi Suiteなどからのアップグレードも可能にする。9月にアムステルダムで開催されるIBC 2009で実機デモが行われるほか、日本では11月のInter BEE会場においてデモする予定だ。
オーサリング時に再エンコード不要なH.264出力を行うMAX
ミューズテクスが取り扱いを開始した2.5″ HDDを使用したCalDigit製RAIDシステムVR Mini。 |
コムテックが取り扱うRAIDディスク環境の新製品EditPro-Xpander。ディジーチェーンによりディスク領域拡張が可能。 |
Windows/MacのOSを問わず、Premiere Pro/Final Cut Proといったアプリケーションを問わず、デスクトップでもノートブックでも利用可能な小型ビデオキャプチャ新製品として紹介したのはMXO2 miniだ。HDMI、コンポーネント、S-Video、コンポジットの各入出力端子を利用したビデオ入出力と、HDMIエンベデッドまたはRCA端子によるオーディオ入出力が可能。HDMI出力については、民生用ハイビジョンディスプレイを接続してキャリブレーション機能を使用することで、業務用ピクチャーモニタと同等の品質で編集時のモニタ環境を実現することもできる。接続インタフェースはPCI Expressとなっており、ExpressCard/34またはPCIeカードを使用して接続する。利用システムが増えた場合においても、ExpressCardやPCIeカードを追加購入することもできる。ドライバーに関しては、新しいFinal Cut Studioに正式対応したものを9月にリリースする。
Mac環境の製品としては、新たにラックマウントの入出力製品MXO2 Rackが加わったことを報告した。Mac Pro、MacBook Proに対応したハイエンド製品として、各種入出力端子を使用して10bit 4:2:2までの各種映像フォーマットの入出力を可能にしている。
マトロックスの新技術であるMAXテクノロジーについても、機能の詳細が発表された。MAXは、H.264処理に特化したハードウェア・エンコードプロセッサー。100kbpsから最大50Mbpsまでのビットレートに対応し、H.264を使用したWeb映像/携帯動画からブルーレイディスク映像まで、さまざまな利用シーンに対応できる。特に、ブルーレイ用の映像出力においては、H.264コンプライアント・ファイルに対応しているため、オーサリングソフト側での再エンコードをすることなくディスクに記録することが可能なファイルを生成できることが特徴だ。MAXテクノロシーは、H.264エンコーダカードCompress HDのほか、MXO2/MXO2 mini/MXO2 Rackの各入出力製品に組み込んだ形でも提供する。Compress HDは、現在、Mac版ドライバーが提供されているが、近日中にWindows版も追加する。
ミューズテクス代表取締役の伊藤格氏は、「MXO2/MXO2 mini/MXO2 RackのMAX搭載版を使用することで、限られたPCI ExpressスロットやExpressCardスロットを有効に活用することが可能になる。拡張スロットのないノートブックにおいても、MAX搭載の製品を使用することで、H.264のエンコードを高速化できるメリットは大きい」と話した。
RED Rocket搭載のMac Pro処理パフォーマンスをデモ
RED Rocketの紹介とパフォーマンスデモが行われた。 |
視野角が広くコントラスト変化が少ないTVlogic製24型液晶モニタ |
ハードディスク環境については、コムテックスが取り扱うRAID環境として、タワー型/ラックマウント型のEditProシリーズに加え、ディジーチェーンにより122ドライブ・122TBまで容量拡張が可能な新製品ExpandProRAID/EditPro-Xpanderシリーズのほか、ミューズテクスが取り扱うRORKE DATAのSANパッケージGalaxy AuroraLSを使用した共有環境についても紹介した。EditPro/ExpandProRAID/EditPro-Xpanderシリーズのディスク環境は米Tekramの環境を使用。EditPro/EditPro-XpanderシリーズはPCI Express経由で行うが、RAIDコントローラをHDDユニット側ではなくPCI Expressカード上に搭載していることが特徴だ。ExpandProRAIDは、4Gbファイバーチャネル/3Gbps SAS/iSCSIの接続インタフェースを採用したラインアップを揃えた新製品だ。Galaxy AuroraLSは、1つの4Uラックマウント筐体に、RAID 6機能、サーバ機能、ファイバーチャネルスイッチ機能を盛り込み、1GB/sの転送速度で8台の編集システムから共有できる環境を構築できる。
伊藤氏は映像モニタについても言及。液晶モニタでは、価格の割に暗部の再現性が悪かったり、視野角が狭いと言うことも多く、マスターモニタとして紹介できるものがなかなかなかったのが実情だったという。今回、マスターモニタとして利用できるマルチフォーマット液晶モニタとして紹介したのは、TVlogic製のXVM-245Wだ。RGB各10bitの24型フルHD対応パネルを使用し、HD-SDI、DVI、HDMI、コンポーネント、コンポジット、S-Videoの各ビデオ入力端子からのビデオ信号を12bitで処理している。3D LUTやガンマ調整のほか、波形モニタ、ベクターモニタ、エンベデッドオーディオレベルモニタを搭載している。
今回、ミューズテクスがシアターデモ用に用意したMXO搭載のMac Proには、RED Digital Cinemaが開発したR3Dファイルリアルタイム再生カードRED Rocketを搭載。そのパフォーマンスについて、伊藤氏がRED社の現像ソフトウェアRoketCINE Xを使用して実演して見せた。ガンマカーブの変更などが、マウス操作に合わせてほぼリアルタイムに反映されていた。
AXIS LEのMac版投入やRED Rocketのパフォーマンスデモなど、興味深い発表が行われたイベントだっただけに、イベント開催の発表から実施まで告知期間が短期間であったことが残念だ。