AJA Video Systemsは、Inter BEE 2009において、ProRes 422 テープレスメディアレコーダーKi Proを中心とした出展を行った。会期に合わせて、AJA本社から、セールス&マーケティング担当バイスプレジデントのポール・ワイザー(Paul Weiser)氏、プロダクトマーケティングマネジャーのブライス・バトン(Bryce Button)氏、プロダクトマネジャーのジョン・ソーン(Jon Thorn)氏、変換器担当プロダクトマネジャーのジェラルド・タッソーネ(Gerard M. Tassone)氏の4氏が来日した。Ki Proの最新情報や、AJAの取り組みについてインタビューした。彼らの言葉からは、Ki Proの活用法やProResコーデックであまり知られていない情報をいくつか聞くことができた。

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AJA Video Systemsプロダクトマネジメントチームの皆さん。
(左から)ブライス・バトン氏、ポール・ワイザー氏、ジェラルド・タッソーネ氏、ジョン・ソーン氏

ProResコーデック採用のKi Proの意外な活用法とは

──NAB ShowでKi Proを発表してから半年あまり。Inter BEE 2009でもKi Proを強く推し出した展示を行いましたね。

ワイザー氏「当社は製品の開発にあたり3つの方向性を打ち出している。1つはAquired、収録時に現場で素材を作ること。2つ目はEdit、編集段階での問題を解決すること。最後はConvert、放送業界で基礎的な技術となる変換技術を提供することだ。そのなかで、Ki Proは収録・編集という部分において重要な位置づけとなる製品だ」

──AJA製品は、入出力カードやコンバータを中心としたラインアップのイメージが強く、収録時に活用できる製品としてKi Proは初めての分野になります。

ワイザー氏「Ki Proが新分野に向けた 新製品であるのは確かだが、まったく新しい技術で作られているわけではない。Ki Proは、人気のあるオーディオ/ビデオ フレームシンクロナイザー&コンバータFS-1の技術をベースに、入出力デバイスIoHDの技術を加えることによってできており、すでに実績のある製品をもとに開発されてきたと言えるだろう」

──ようやく発売となったが、現在の状況は。

ワイザー氏「具体的な出荷台数は明かせないが、非常に良い反応をいただいている。現在多くのバックオーダーが発生してしまっている状況だ。日本へは、初期ロットで50台の出荷を行ったが予約段階で売り切れてしまった。12月の次期ロットについても50~100台の出荷を予定しているが、これも予約で埋まってしまいそうな勢いだ。増産により、なるべく早い時期に改善したいと思っているが、しばらくは同じような状況が続くのではと見ている」

──Ki Proは、世界的な視点で、ある地域で導入が進んでいるというような特徴がありますか。

ワイザー氏「特にある地域に偏って売れているという感じではなく、世界的にどの地域でも売れているという印象だ。加えて、私たちが想定していなかったようなところでもKi Proが活用されているようだ。音楽系の生放送番組でKi Proを活用して、制作を効率化しているというケースもあって、とても驚かされた」

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Inter BEE 2009のアスクブースの目玉となったAJA Video SystemsのKi Pro

ProResコーデックはWin版QuickTimeでも再生可能

──Ki ProはアップルのProResコーデックで記録することに特化している。他のノンリニア編集システムでも利用できるように、非圧縮で記録することも可能にする選択はなかったのですか。

バトン氏「NAB Showでは、コンパクトで軽く、アナログ、HDMI、SDIの各入出力に対応したモバイル用入出力デバイスIo Expressも発表したが、こちらはさまざまな撮影で扱うことを目指した製品だ。非圧縮で記録するのには相当なバンド幅が必要になるため、PCI Expressインタフェースを使用するこの製品を使用した方が適切だと思う。付け加えるけど、非圧縮では記録できないKi Proであっても、ProRes 422(HQ)まで対応しており、非圧縮と同等レベルの映像品質を得ていますよ」

ソーン氏「これは重要なことだが、AppleはQuickTime 7.6以降であれば、QuickTime Xも含めて、ProRes再生用コンポーネントを標準搭載し始めたんだ。実は、Final Cut Studioがなくても、ProResコーデックの素材をQuickTimeで再生することが可能になっている。つまり、QuickTimeベースのノンリニア編集システムであれば、Ki Proで記録したProResコーデック素材を読み込んで再生できるんだ。ただし、書き出すことはできないので、別のコーデックを使用する必要がある。Inter BEE 2009オートデスクブースで、Smoke For Mac OS Xのテクニカルプレビューをしているが、Ki Proで収録後にダイレクトにSmokeに読み込んで編集することも可能なんだ」

──QuickTime 7.6以降であれば可能ということだが、それはWindows版QuickTimeでも同様なのですか。

バトン氏「その通り。Windows版も同様だ。この点はもっと知られてもいいと思うよ。あと、ProResコーデックの素材が書き出せなくても、HD-SDI出力をKi Proに戻してやればProResコーデック素材を生成できる。あるいは、Ki ProをデッキのようにしてProResコーデック素材を再生することで、HD-SDIでベースバンド出力を得ることもできる。Ki Proは収録段階だけでなく、ノンリニア編集段階でも有効活用できるんだ」

──製品名でProを謳うように、プロフェッショナル向けにはAvidのDNxHDコーデックも選択できるようにするという検討はなかったのか。

ワイザー氏「Avidともパートナーシップを結んで、Avid DS Nitrisシステム用にカードを提供しているが、Ki Proでその選択は考えなかった。Ki ProのKiは製品ファミリー名で、Proはプロフェッショナル向けということと同時に、ProResを表しているんだ。Kiシリーズは継続的に新製品を投入したいと考えているが、現時点ではこれ以上のコメントはできないな」

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フレームシンク機能を搭載したアップ/ダウン/クロスコンバータFS-1

次世代制作環境に向けたAJAの取り組み

──4K制作への対応については、どう考えていますか。

ワイザー氏「4Kワークフローはデータ収録というイメージが強く、ベースバンド収録という印象はない。そのため、出力とモニタリングが重要な役割になると捉えている。しかし、まだまだ4K制作市場は成熟していないこともあり、KONA3とXENA 2Keについても、2Kフル解像度での取り扱いになっている。大手のポストプロであっても2Kまでの作業がほとんどだと思うし、ハリウッドの映画においても、多くの作品が2Kで処理されているという現状もある」

──ステレオスコピック3Dについても、モニタリングは重要になると思うが。

ワイザー氏「現状では対応できていない。それは、ステレオスコピック3Dのモニタリングをするには、フルフレームレートで左右の映像を同時に再生するためCPUパワーがまだまだ足りないことに加え、システム全体でのバンド幅を確保できないという問題もあるためだ。当社にとってもチャレンジングな取り組みになるだろう」

──Ki Proの話題が多く、XENAシリーズについての話題が少ないようにも感じる。今後の展開はどうなるのですか。

ワイザー氏「具体的なことは話せないが、XENAsシリーズやKONAシリーズといったデスクトップ製品についても開発は継続的に行っている。それらの新機能については時期が来たら発表したいと考えている段階なので、期待していて欲しい」

──Adobe Systemsの次世代ビデオ制作環境は64bit OS版だけになるようだ。それに対しての対応もされるとみてよいのですか。

バトン氏「Adobeは当社にとって重要なパートナーであることは間違いない。ただ、両社がどういう開発をしているのかを明らかにすることはできない。しかし、Mac版用のドライバーはすでに64bit OSに対応済みだし、Windows版はXP/Vistaの32bit環境だけでなくVista/Windows 7の64bit環境にも対応済みだ。次世代制作環境が64bit 限定アプリケーションになっても問題ないと考えている」

──ファイルベース制作においては、コンバータについても重要になる。今後の取り組みはどうなるのか。

タッソーネ氏「ファイルベース制作環境では、各種フォーマット変換に時間がかかるようになってきている。デジタルコンテンツを増やしていかねばならない状況の中で、FS-1というフレームシンク機能を搭載したアップ/ダウン/クロスコンバータの需要が高まっているようだ。ミニコンバータ製品もそうだが、収録現場や編集段階、放送局スタジオなどさまざまなシーンで活用できると考えているので、今後もユーザーの利用方法をリサーチしながらしっかりと取り組んでいく」

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。