2月12日の開会式から始まったバンクーバー冬季オリンピックは多くの感動のドラマを提供して2月28日の閉会式で終了しました。
その間コロラドではカナダのバンクーバーが比較的近くに在る事やコロラドからのオリンピック選手が多く出場している事、そしてコロラドでのウインタースポーツとしてのスキーがロッキー山脈と言う地の利から盛んな事などが有って多くの人々の関心をよびました。
今回のオリンピックのTVでの放送ではNBCがその放送権を得ておりましたのでコロラドでは地元NBCネット局であるKUSA 9-1チャンネルとそのスポーツ主体のチャンネルである9-3チャンネルでのUniversal-NBCプログラムのそれぞれでゴールデンアワー帯を含む多くの時間をオリンピック報道に費やしています。
- コロラドの地元紙Denver Post 新聞社屋
- デンバーの町の中心に在るCivic Center ParkとColfax 通りを挟んでBroadway 通りとの交差点に在るコロラドの地元新聞Denver Post新聞社の建物です。今迄もう一つの地元紙Rocky Mountain News紙とその購読者獲得で競い合っていたのですが、昨年Rocky Mountain Newsが経営困難となりDenver Post紙が吸収合併しました。コロラドで最大の発行部数の新聞となっています。
また、地元新聞のDenver Post紙では、開会式の行われた翌日2月13日からそのスポーツ欄に全紙1枚分4ページのバンクーバー冬季オリンピック特別ページを設けて連日バンクーバーでの各種競技の様子や地元選手の活躍状況、そして各会場からのトピックスなどを報じていました。
この特集ページは閉会式の翌日まで毎日掲載されて、さらにその翌日の3月1日には今回のバンクーバー冬季オリンピックの総括記事が載せられました。
- Denver Post 新聞社の玄関
- 東からAurora、そしてDenver、さらにLakewoodと3つの市を東西に結ぶアメリカで最も長い通りと言われているColfax Avenueに面しているDenver Post新聞社の玄関入り口です。
かつて、プロ野球メジャーリーグの地元チームColorado Rockiesが2007年の秋のシーズン終盤の10月になってから快進撃を続けて、遂にナショナルリーグのチャンピオンとなり、ボストンレッドソックスとのWorld Seriesを戦う事となった時にDenver Post紙ではその新聞記事の第1面見出しに格別大きな文字で、「Rock-tober」(Rockies-October)[ロッキーズの10月]という活字が躍ってコロラドでのRocktoberは人々の間でポピュラーな新語となったという経緯があります。
駄洒落と言ってしまえばそれまでですが、多分デンバーポスト新聞社の編集室にこうした言葉の遊び心の強い人が居るのではないかと思いますが、今回の連日のバンクーバー冬季オリンピックの特集ページを眺めていて、何回ものこうした言葉遊びの見出しを見かけています。それらの中からいくつかご紹介しますと以下の様なものが有りました。
VonnCouver(Lindsey Vonn – Vancouver)
- Lindsey Vonn選手の活躍を伝えるDenver Post紙
- World Cupスキーの女子アルペン競技で今シーズンのチャンピオンとなったLindsey Vonn選手のバンクーバー冬季オリンピックでの活躍を伝えるDenver Post紙のバンクーバーオリンピック特集ページの1ページ目です。Vonn選手は地元スキー場Vailの町に住んでいるスキーのスピードレーサーで今回のバンクーバーでは金メダルと銅メダルを一つずつ獲得しています。
コロラドのスキーリゾートタウンAspen出身の女子アルペンスキー選手のLindsey Vonn選手はその直前の2月2日に行われたオーストリーでのアルペンスキーのWorld Cupの競技で練習中に転倒して左脚を負傷してオリンピックへの出場が危ぶまれましたが、バンクーバーでのスキー競技場の天候が悪くコースコンデイシヨンの悪化のため3日ほど競技日程が順延された事などもその負傷の回復に幸いして、最初の女子滑降では見事金メダルを獲得し、更に同じアメリカチームのJulia Mancuso選手が銀メダルと輝かしい記録を示し今回のアメリカチームを出だしから活気付けるのに十分な活躍をしました。
その活躍を報じるDenver Post紙の1面見出しのVonnCouverは「バンクーバーでのVonn選手の大活躍」とでも云う様な表現となっています。
その後に行われた女子Super G競技ではVonn選手は3位となって銅メダルを獲得し、更にその後に続く大回転および回転競技での活躍が期待されましたが、 旗門にスキー先端を引っ掛け棄権、また競技中に転倒して途中棄権と残念な結果となりました。
その様子をデンバーポスト紙では「Vonn: gold, bronze, black, blue」という見出し記事で伝えています。「最初の競技では金メダル、次は銅メダル、そして旗門不通過の真っ暗闇、そして転倒の青あざ」とでも云う様な表現となっています。
今回のLindsey Vonn選手のオリンピックでの様子をコロラドのメディアだけでなく、全米のジャーナリズムが一斉に書き立てているので、同じ女子スピード滑降スキー選手のJulia Mancuso選手やその他のアメリカ選手達から嫉妬心とも思われるコメントが記事で伝えられていました。
それほど人気のあるVonn選手ですが、オリンピック終了後あと2競技が今シーズンで残されていた女子World Cupスキー競技に早くも転戦しており、3月6日にスイスのCrans-Montanaで行われた滑降で首位となって3シーズン連続の種目別チャンピオンとなっています。前日に行われる予定だったスーパー複合の後半が雨のため中止となって、今季トータル10勝目World Cup通算で32勝目と言う大記録を挙げています。
今回のオリンピックはまさにVonnCouverとも云われるべき程のVonn選手の報道状況でした。
Kim-pressive(KimYu-na – Impressive)
- Kim Yuna選手の活躍を伝えるDenver Post紙
- バンクーバー冬季オリンピックの女子フィギュアスケートで金メダルに輝いた韓国の金ヨナ選手の活躍を伝えるDenver Post紙の2月26日(金)のバンクーバー特集ページの1ページ目です。「Kim-pressive!」の見出し活字が躍っています。
女子フィギュアスケート競技で韓国の金ヨナ選手が金メダルに輝いた翌日のデンバーポスト紙の特集ページの最初の見出しです。
大きな写真とともに「金選手の印象的な演技」とも云うようなタイトルですが、日本では、浅田、安藤、鈴木の各選手、そしてアメリカ代表での長洲選手、コロラドからはRachel Flatt の各選手が競いましたが、結果として金選手の完璧とも云える演技に金メダルが与えられる事になりました。
この競技の様子は日本でも皆さん詳細に観戦されておられると思います。
Bode-acious(Bode Miller – Buoyedacious)
- Bode Miller選手の活躍を伝えるDenver Post紙
- バンクーバー冬季オリンピックの男子スキーアルペン競技の3種目で金、銀、銅のメダルを獲得したBode Miller選手の活躍を伝えるDenver Post紙の2月22日(月)のバンクーバー特集ページの1ページ目です。「Bode-acious」の見出し活字が輝いています。
男子アルペンスキー競技のベテランアメリカ代表選手でコロラドのVailやBeaver Creekなどのスキー場をベースとして活躍しているBode Miller選手はニューハップシャー州の出身ですが、コロラドでは良く知られている選手です。
昨シーズンのWorld Cupスキー競技が不調に終わった事から今回のバンクーバーが彼の最後の競技となるか? と噂されていましたが、どうしてどうして、最初に行われた男子スーパーG競技では銀メダル、次の男子滑降では銅メダル、そして次のスーパー複合では何と金メダルと3種類のメダルを揃えて獲得する大活躍をしています。
- Bode Miller選手の復活を伝えるDenver Post紙
- 男子スキーアルペン競技のアメリカ第一人者であるBode Miller選手は、その精神的な起伏が激しく調子の良い時は好成績を残していますが、最近では不調が続いており、今回のバンクーバーが彼の競技生活最後の機会となるのではないかと言われていましたが、何と金、銀、銅の3つのメダルを獲得して、見違えるような好成績を残しています。
このBode Miller選手の活躍を伝えるデンバーポスト紙の見出しは、Bode-aciousと「Bode Miller – Buoyedacious」の短縮形の活字となっています。
Buoyedaciousという英語は英和辞典を引いてみますと、海などに浮かべるブイの動詞の過去分詞形Bouyedにaciousを付けて形容詞としている言葉で、英語ではencourageとかcheerの「元気付ける」と言う意味の様です。不調だった彼の最近の成績でしたが、今回の冬期オリンピックでの活躍で彼が浮上したので大変元気付けられる、と言う事でしょうか。
ともかく、今回のバンクーバーではコロラドの人達が最も感激したシーンを彼は提供してくれました。デンバーポスト紙では併せて「Miller time again」(ミラーの時が再びやって来た)とか、「A Golden Comeback」(輝かしい金メダルのカムバック)と言った見出しタイトルも載せられています。
Apolo Seven(Apolo Anton Ohno – Apollo 7)
- Apolo Anton Ohno選手の活躍を伝えるDenver Post紙
- 男子スケートのショートトラック競技のアメリカ第一人者であるアポロアントン大野選手の活躍を伝えるDenver Post紙の2月21日(日)のバンクーバー特集ページの1ページ目です。前日大野選手は1000m競技で銅メダルを獲得し、これでオリンピック過去通算7個目のメダル獲得をして、競技終了以後指で「7」を示している大野選手です。「APOLO SEVEN」の見出し活字が目立っています。
大野選手はこの後5000mリレーで銅メダルを獲得して通算8個のメダリストとなりアメリカで最も多いメダル獲得選手となっています。
男子スケートショートトラック競技のアポロアントン大野選手は今回の冬季オリンピックで3回目のオリンピック出場の日系人選手ですが、今迄にコロラドスプリングスの町に在るアメリカオリンピック協会の宿泊練習施設で長い間滞在して訓練をして来ていますので、コロラドでは大変良く知られているオリンピック選手です。
過去のソルトレークで金メダルと銀メダル各1個、そして、前回のトリノで金メダル1個と銅メダル2個と合計5個のメダルを獲得して来ていますが、今回のバンクーバーで1500mで銀メダル、1000mで銅メダルと2個で過去合計7個のオリンピックメダルを獲得した時点でのデンバーポスト紙の見出しですが、Apolo Sevenはかつてアメリカが月面着陸探査のアポロ計画で使用した宇宙船Apollo 7を大野選手の7個目のメダルとかけているApolo Sevenの見出し活字となっています。
この後彼は500m競技で前を走っていた2名の選手が転倒して彼が2着となったのですが、最終コーナーを回る時に前を走っていた選手を押したと言う事で失格となってしまいましたが、最後に行われた5000mリレーのアメリカチームのアンカーを務め銅メダルを獲得しましたので累計メダル数は合計8個となって、今迄のアメリカの選手の冬季オリンピックメダルの獲得数記録スピードスケートのBonnie Blair選手の持つ7個を抜いて新記録保持者となっています。
以上、今回のバンクーバー冬季オリンピックのコロラドの地元新聞の様子を記しましたが、スキー選手たちの活躍もさることながら各競技への観客たちも熱の入った観戦で素晴らしかった、と言う事でFan-tastic attendance(Fantastic – Game Fan)という見出しでデンバーポスト紙は結んでいます。
Vail とBeaver Creekの両スキー場が2015年のWorld Alpine Ski Championship大会の開催地となれるか?
コロラドで最大の規模のスキー場Vailとそれに隣接しているスキー場のBeaver Creekとが2015年に開催予定のアルペンスキー世界選手権大会の共催会場としての候補地として名乗りを挙げています。
この大会は奇数年の年に毎回開催されているアルペンスキーの世界チャンピオンを決めるもので、世界のアルペンスキーのレーサー達にとっては冬季オリンピックと並んで重要な競技会の場となっています。
コロラドのVailとBeaver Creekのスキー場は過去1989年と1999年にこの大会の開催地となっており、アメリカではこの他には1950年の大会が同じコロラドのAspenで開催されたのみとなっています。
2011年の開催は既にドイツのGarmisch-Partenkirchenで決まっており、2013年はオーストリアのSchladmingで開催される事となっています。
現在2015年の候補地として、スイスのSt. MoritzおよびイタリアのCortina d’Ampezzoが名乗りを挙げており、Cortinaでは今迄に開催された事がありませんが、ここのところヨーロッパでの開催が続いているので、今度はアメリカの順番だ、と言う事でVailとBeaver Creekとが今回開催地競争に加わっているものです。
このWorld Alpine Ski Championship大会の開催地に決まると、毎年世界の各スキー場を転戦するWorld Cup アルペンスキー大会の最終競技会はその同じ候補地で行われる事が恒例となっている、というオマケが付いて来ますので魅力的です。
Vail では今迄に1994年と1997年にその年のWorld Cup の最終競技会を開催していますが、いったいこれらの候補地の何処に決まるか大変興味が持たれています。
ちなみに、Vail 出身のLindsey Vonn選手は2015年には30才となっていますが、それまで頑張って現在のチャンピオンを維持していられるか? または、彼女に代わる新たなチャンピオンが地元から生まれるか? といった事も地元での話の種となっています。
もし、2015年の開催地に決まれば、Beaver Creek スキー場では現在ある男子の滑降コースに隣接して新しく女子の滑降コースを新設する事をオファーしており、そのコースをLindsey’s RunまたはVonn Bahnと名付けるのだ、と地元では云っています。
このコロラドのVailと Beaver Creekの両スキー場はデンバーの北西のBloomfieldの町に本社を持つ観光開発会社のVail Resorts社が開発して運営しており、冬はスキー、夏は避暑、ハイキングなどのリゾートタウンですが、ロッキー山脈を東西に横断している国道ハイウエー70号線沿いの山中にあって交通至便な事から多くのスキー客や避暑客で賑わいます。
Vailの町は全体的にヨーロッパのスキーリゾートタウン風の町造りで高級アパートや別荘などの長期に住んでいる人達もかなりおり、以前のフォード元アメリカ大統領が生前はこのVailに住んでいた事でも知られています。スキー場としてそのスロープが一般に開放されたのは1962年の事です。
Beaver Creekの町の方はVailの町から国道ハイウエー70号線を西に少し下って、Avonと言う出口で降りて南へ僅か登ったVailから12マイル(3.2km)程のところに在り、1980年に新しくスキー場を開発するのに合わせて建設されたリゾートタウンで、スキーシーズンではVailほどスキー客で混み合わない事からリフト搭乗待ち時間が短く、また、スロープも比較的難度の高いコースが揃っている事から上級者たちに人気があります。
あとがき
毎日のコロラド内の各スキー場の雪の状況を伝えている地元新聞Denver Post紙に掲載されている「Ski Country USA」の3月9日のデータでは下記の様に報告しています
VAIL | BEAVER CREEK | |
積雪量 | 46インチ(1.17m) | 52インチ(1.32m) |
24時間以内の降雪量 | 3インチ(7.6cm) | 6インチ(15.2cm) |
リフトの運転状況 | 31本中30本が運行 | 25本中25本が運行 |
雪面状況 | パウダーと少し固まったパウダースノー | パウダーと少し固まったパウダースノー |
滑降可能範囲 | ゲレンデの100%が滑降可能 | ゲレンデの100%が滑降可能 |
両方のスキー場ともに各ゲレンデは北向きのスロープとなっていますので、シーズンを通して遅くまでの滑降が可能となっているのが特徴です。
この冬はコロラドではロッキー山脈中には多くの降雪があったのですが、その東山麓のデンバー地区などでは非常に降雪が少なく、新年に入ってからは例年に比較して穏やかな暖かい気候となっています。例年ですと年が明けてから数回は華氏で0度(摂氏零下18度)以下に最低気温が下がる日があるのですが、今年はそうなりません。
アメリカ東海岸地域では記録的な大雪が降ったり、異常寒波に見舞われたりしていますが、全体的にはなにか地球温暖化を感じさせられる様なコロラドのこの冬シーズンでした。
3週間にわたるバンクーバー冬季オリンピックでそわそわしているうちに早くも3月に入って、春の陽気が感じられる様になったこの頃ですが、そうはいっても雛祭りも過ぎたと言うのにまだまだ我が家の庭の水仙はつぼみを付けていません。