今年のInterBEE会場で最も目を惹いたキーワードは「4K」だ。昨年までの3Dに代わって、今年はどのブースでも4K、8Kといった文字が踊っていたのは、個人的にも非常に気になった。これまで4Kという言葉は、ハイエンド映像の象徴として取り扱われていたが、今年はNAB、IBCを通じてさらにユージュアル感を増した様に思う。しかし実際のプロの現場ではようやくHD化が一般化したというのが現状。これからの4Kとはどのような展開を示すのだろうか?そして高画質化=のキーワードとして捉えられる4Kだが、本当に高解像度化ということだけで、高画質の追求は正しいのだろうか?

4Kがおうちにやってくる?

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そんな「4K」をごく身近で感じられる、一般向けイベントが行われた。12月9日、クロアチア政府観光局主催のパーティ『クロアチア・クリスマス・ナイト』が東京・霞ヶ関ビルの東海大学学友会館で催され、この中でソニーが12月下旬に発売を予定している民生用4KビデオプロジェクターVPL-VW1000ES

(税込168万円)

による4Kコンテンツ「αCLOCK」のクロアチア世界遺産画像が、4K上映にて一般に初披露された。『VPL-VW1000ES』は、新開発の4KディスプレイパネルSXRDを搭載し、高輝度2,000lm、DCI(デジタルシネマ・イニシアティブ)と同等の広い色域を実現している。

αCLOCK」は、2008年から始まったソニーαのデジタル一眼レフカメラを使ったソニーコーポレートサイトの連動企画。世界各地の世界遺産を1日12枚の写真で定点撮影し、その時間経過によって変化する美しい画像を見せるとともに、訪れた時間の画像をPCの壁紙としてダウンロード出来るもの。撮影はソニーαの機材を使って行われているが、そのほとんどが今もフラッグシップ機として君臨する『α900』である。『α900』は、2008年に発売開始されている比較的古い機種ではあるが、キヤノンの5D MarkⅡ、1Ds MarkⅡ、ニコンD700、D3X等とともに、2460万画素の35mmフルサイズセンサー(35.9×24.0)を搭載している。残念ながらその後のバージョンアップはなく動画撮影も出来ないが、ソニー初のフルサイズセンサー搭載機であり、現在でもスチルカメラマンからは人気の機種だ。

今回は残念ながら静止画のみの上映であったが、初回より本シリーズの撮影を担当している映像作家の貫井勇志氏によって撮影されたクロアチアの3カ所の、美しくも繊細な世界遺産の画像が、スライドショー形式で貫井氏の解説とともに上映。中世から続く要塞都市であの「魔女の宅急便」「紅の豚」では宮崎駿監督がモデルとした”アドリア海の真珠”と謳われる美しい港湾都市、ドゥブロヴニク。古代ローマから続く歴史が息づく街、スプリト、そして美しい石灰岩質の谷間を無数に流れる渓谷と湖に魅了されるプリトヴィチェ湖畔などが次々と4Kで上映され、観客の目を圧倒していた。

4Kで再現されるのはそのディテールだけではなかった…

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この中で貫井氏はデジタルとはいえ、フィルムに迫る解像度になったことを強調。そしてさらに今後の高画質化へ提言も語って頂いた。

4Kプロジェクター等が普及して、高い解像度の映像が一般にも普及する時代になってくると、次にプロフェッショナルに求められるのはやはり”ダイナミックレンジ“という方向性になってくるでしょう。解像度よりも諧調など、より広いダイナミックレンジで撮影し、その後RAWデータの現像処理とカラーグレーディングによって豊かな色彩を得られるようになるなど、更なる高画質への追求が可能になってくると思います。最近RAWやLOGで収録出来るムービーカメラも出て来た事には非常に興味がありますね

4K画像普及にはまだ多くの問題もある。テレビの放送規格や4K画像処理の環境の問題など。しかし時代は動いた。4K Ready!の時代がついに幕を切ったのである。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。