“11月3日、キヤノンがハリウッドにて歴史的発表を行う!” 9月中旬にこのアナウンスが出されて以降、業界関係にも詳細な情報は一切提示されず、世間では様々な憶測を呼んでいたが、いよいよその全貌が明らかにされた。

“CINEMA EOS SYSTEM”

キヤノンが満を持して発表してきた、新世代のデジタルシネマカメラシステムである。EOS C300/C300PLは、EOS 5D MarkII等で世界的好評を博したDSLR動画撮影機能”EOS MOVIE”を進化させ、スーパー35mm相当サイズの大型単板CMOSセンサーを搭載。さらに業務用ビデオカメラのXシリーズの長所である4:2:2 50Mbpsでのファイルベーステクノロジーなどプロフェッショナルビデオの機能も取り込んでいる。

そしてキヤノンのカメラメーカーとしての真髄である伝統のレンズテクノロジーを組み合わせ、さらには従来のEFレンズ群に加えて、今回新たにPLマウントレンズをラインナップ。まさにEOS MOVIEとXシリーズ、そしてレンズ技術の完全融合による、全く新しいデジタルシネマカメラ・ラインナップの登場となった。(製品詳細は、PRONEWSの記事参照

11月3日 3:00pm 映画界を代表するVIPが招待されるイベント

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11月3日 3:00pm 映画産業へいよいよ本格参入を表明したキヤノンは、ハリウッドから世界に向けてその歴史的発表が行われた。ここでは現地での模様を速報レポートとして、いち早くお伝えしよう。

発表会場となったのは、ハリウッドのど真ん中にあるメジャースタジオ”Paramount Studio(パラマウント・スタジオ)”。ここの施設数カ所を貸し切る形で今回のCINEMA EOS発表イベントが行われた。事前の情報漏洩を完全にシャットアウトするために完全招待制で、入場も厳しく制限され指定ホテルからすべて専用の送迎シャトルバスによる入場となり、さらに会場では事前に配布された入場パス、IDカード、招待リストが照合されるという厳重ぶり。

そして3:00pm、まず最初に会場中央にある劇場施設”Paramount Theater(パラマウント・シアター)”にて、オープニング・セレモニーとして、キヤノン株式会社の会長である御手洗冨士夫氏(前 経団連会長、現 名誉会長)によるスピーチと、CINEMA EOSによるデモ映像作品のスクリーニング、そしてゲストによるスピーチが行われた。その後4:10pmから1時間ほどプレスカンファレンスが行われ、ここでいよいよ、CINEMA EOSの機材紹介とデモ映像作家も参加しての技術的な詳細情報が明らかに。

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さらに敷地内のスタジオ”Stage 1,2″においては、新製品「CINEMA EOS SYSTEM」の実機C300シリーズと新しいPLレンズ、EFシネマレンズなどが一堂に展示された”Exhibit Showcase”が開催。これは翌日4日と5日にも開催され、多くのハリウッド関係者が招待され、会場ではデモ映像監督達による各種セッションが行われていた。

その後は敷地内にある”New York Back Lot(オールドニューヨークオープンセット)”で、カクテルレセプションが行われた後、”Blue Sky Tunk(水辺のシーンなどを撮影するプール施設:普段は駐車場として使用)”に巨大な特設テントを設営し、その中で豪勢なディナーパーティーが催され、全7時間に及ぶ一大イベントとなったのである。ハリウッド関係者に聞いても1社がこれだけの規模でイベントを行うことは最近では珍しいとのことで、招待客達を驚かせていた。

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オープニング・セレモニーのスピーチでは御手洗会長自身も1979年にキヤノンUSA社長に就任して23年間という長い米国勤務経験を持っていることもあり、感慨もひとしおといったところが窺われた。また今回の発表には同じくキヤノンUSA社長の経験を持つ、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の現会長、村瀬治男氏も参加されていたが、考えてみると御手洗氏、村瀬氏というキヤノングループの総帥2名が揃って新製品発表の場に顔を揃える、しかも海外で!という超異例とも言える大規模な発表からも、キヤノンが今回の製品に掛けている意気込みの強さが伝わってくる。

スコセッシも賞賛するキヤノンの映画進出への道

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また、何といっても凄かったのはそこに招待されていたVIPの面々だ。今回ゲストスピーチに立ったのはあの、マーティン・スコセッシ監督。スコセッシ監督は、キヤノンがレンズで72年と77年に2回オスカー受賞(アカデミー科学技術部門賞)を受賞していることからも、”Welcome back Hollywood !”と今回の本格的な映画産業への再参入を讃えた。また彼を筆頭にハリウッドの有名監督達も招待客リストに名を連ねており、さらには著名な撮影監督やプロダクション関係者など、まさにハリウッドを凝縮したような豪華なイベント内容には驚かされた。加えて世界中から集められた各国のプレス関係者など、初日に招待されたゲストは約600名、3日間で約2,000人を超える規模で映画関係者が参加したと思われる。

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いまデジタルシネマカメラに必要な機能を、最高のデザインに詰め込んだCINEMA EOS SYSTEMは、非常に高いレベルでチューニングされた大きな可能性を秘めたポテンシャルの高いマシンであることをハリウッド・クリエイターの誰もが強調していたのが印象深い。

今回は4つのデモ映像作品が用意されたが、各作品の制作スタッフからも貴重なお話を聞くことができた。さらには各プロダクションにも独占取材を行い、CINEMA EOS SYSTEMから創造されるこれからの制作ワークフローなども取材した。この模様は11月16日~18日に行われる、InterBEE2011のキヤノンブース内イベントセミナーにて詳細に紹介する予定だ。PRONEWSとあわせてチェックしてもらいたい。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。