第13回 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア開催を前に

ショートフィルム専門の映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)』が、6月16日〜26日の日程で今年も例年通り開催される。第13回目を迎えるSSFF&ASIAは米国アカデミー賞の公認国際短編映画祭として、世界各国から約4,200以上の作品が集まり、いまや世界でも著名な短編映画祭となっている。注目すべきは、最近この手の映画祭の応募作品傾向として顕著なデジタル一眼レフカメラ(DSLR)による作品応募だ。今回のSSFF&ASIAでも、DSLR撮影による作品は応募総数の約1/4を占めており、すでにショートフィルム撮影でもスタンダードな機材となっているようだ。

開催に向けて準備も忙しい中、SSFF&ASIAの代表でもある別所哲也氏に、普段では聞けない映画撮影機材などのお話を伺う機会を得た。

映像の持つ力をいまこそ!

TB_PRONEWS01.jpg

© Short Shorts Film Festival & Asia

–映像テクノロジーの進化において、映画の作品性も進化していると感じていますか?

僕たちが”フィルムフェスティバル”と名乗っているのは、映画の原点に対して敬意を表して、あえて”フィルム”としていますが、時代の変遷とともにフィルムで撮影された作品は減り、いまではデジタル撮影された作品がほとんどです。そういう意味では技術とともに映画も進化していきますし、ショートフィルムは”ノールール”ですので、映画祭にも型破りな方法で参加して来て欲しいと思っています。

これはあくまで僕個人の考えですが、映画制作において、かつてはプリプロダクション、つまり脚本やコンテ作り、ロケーションスカウトなど、映画の制作手順のうち最初の段階が重要だったと思います。今でももちろんそれは大切なのですが、撮った後にどういう編集加工ができるかなど、最後のポストプロダクションでの処理で何ができるかを事前に知っていないと、作品が仕上げられない時代になっています。これから映像制作を目指す方はまずポストプロダクションの勉強を最初にするべきなのではないかな、思うときがありますね。今は様々なテクノロジーを味方につけないと良い映画が撮れないという時代に入っているのかも知れませんね。

–別所さんご自身も映像テクノロジーや撮影機材などに興味をお持ちなのでしょうか?

僕は昔からカメラなどメカニカルなものが大好きなので、昔の8mmカメラなどは、スクラップでも集めて手元に持っておきたいくらい好きです(笑)。特に最近ではデジタル一眼レフカメラの技術とその表現力は凄いと思いますね。照明が少なくても良いとか、色んなレンズを使ってこれまでには考えられなかったようなアングルや表現が撮れるなど、映画制作の道具がどんどん広がっていると感じています。ポストプロダクションなどの編集部分でも”デスクトップ・フィルム・メイキング”などと呼ばれていますが、PC1台で編集も出来てしまうので、これまでの(映像制作の)教科書的な文法にはない型破りな方法で創る人も出てくるでしょうし、興味津々です。

–EOS MOVIEなど、DSLRで撮影された映像についてはどのような印象をお持ちですか?

最初にEOS MOVIEの画を観たときは本当に驚きました。とてもフィルムライクで、それぞれの作家の個性も出ていますし、カメラの持っている力に驚かされましたね。今回の応募作品の中でもデジタル一眼レフカメラで撮った作品が多く寄せられました。日本国内だけでなく、海外でもデジタル一眼レフカメラで撮られた作品がこの1、2年で本当に増えましたね。これから一つの映像作りの選択肢として、かなり大きな位置を占めてくると思います。EOS MOVIEの映像は、一般の方が観れば単に”キレイな映像だな”と思うだけかも知れませんが、作り手からすれば制作方法の幅が広がり、これまで発想出来なかったような撮影、例えば10台のカメラを並べて同時撮影するなど、ハリウッドクラスでもなかなか出来なかったようなことが出来るようになったことは、本当に可能性が広がったと思います。

また今年SSFF&ASIAでは、3.11東日本大震災への復興支援企画として、世界の映画人なども協賛するチャリティ・オークションも行われる。

(この震災では)”映像が持っている力”の良い部分も悪い部分も見せつけられたと思います。映像メディアのあり方もそうですが、事実を伝える強力な道具にもなれば、事実と違うことを伝えてしまうものにもなる。だけれども映像の持っている力は凄くて、人を奮い立たせて一つにまとめる力や、たった一人の苦しみを日本全国で分かち合うことが出来たり、まさに”魔法”のような存在で、しかもそれを僕たちは皆受け手となり、また発信する側にもなり得る事を体感し、痛感しました。この時代の日本に生まれて、僕たちはこの歴史的な悲劇に遭遇してしまいましたが、一番大切な事は目を背けずに、みんな一緒に立ち向かっていくということだと思うのです。そんな中で映画祭の主催者として本当に心を打たれたのは、海外の方からたくさんの励ましのお言葉を頂戴したことです。

その代表として、初年度よりこの映画祭を応援してくれているジョージ・ルーカス監督から、僕たちの映画祭に対して、「自粛などせず、ちゃんと実施して『日本は大丈夫だ』ということを示してほしい」という応援と、被災地にも心配りを頂いた今年の開催に向けてのメッセージレターを頂きました。それを発端に、映画祭では被災地に向けたチャリティ・オークションを行い、その売り上げの一部を義援金として被災地に送りたいと思っています。何よりもこの映画祭に世界の映像作家が集い、未来に向けて映画の持っている感動を分かち合う力、元気を生み出す力、そして現実から目を背けずに前進する力になって欲しいという思いを込めて、この映画祭を開催したいと思っています。

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア 2011

  • オフィシャルHPhttp://www.shortshorts.org
  • Twitter:@s_s_f_f
  • 会場:表参道ヒルズ スペース オー、ラフォーレミュージアム原宿、ブリリアショートショートシアター(横浜)他で6月16日より26日まで開催

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。