” To the New Media, Beyond Digital ! ” KOBA2011 6月14~17日 江南 COEX

日本よりも映画作りが盛んで、ドラマコンテンツはいまや日本のTVチャンネルには欠かせない国、韓国。ここでも毎年放送機材展が行われている。今年で21回目を迎えるKOBA2011(Korea International Broadcast,Audio & Lighting Equipment Show)は、ソウル市の南、ハンガンの南側の江南地区に位置する新興地域COEXのコンベンションセンター内で行われる。世界33カ国から603社の出展があり、米国の181社、韓国の123社に次ぎ、日本企業も51社と多数の出展をしている放送機材展。” To the New Media, Beyond Digital ! “をテーマに、韓国のお国柄を現すような展示が多数観られる興味深い機材展だ。

このKOBAショーは、展示会場の広さはInterBEE(幕張メッセ6ホール分)の1/2程度だが、各ブースが密集しているため凝縮感があって見がいがある。筆者は初めての参戦で、多くの経験者からは「1日あれば充分廻れますよ」という話を聞いていたのだが、実際に行ってみると展示が凝縮されているので意外と観がいがあり、丁寧に隅々まで観て廻ると1日では足りなかった印象だ。さらに時期的にはNABで発表された新製品がじっくりと見られる良い機会でもあり、NAB時より多少チューンナップされた機材や、モックアップだった製品がワーキングモデル(稼働モデル)が見られたりするのも良いところだ。

韓国メーカーの製品以外の有名メーカー製品の展示に関しては、日本よりもディストリビューター(輸入代理店)の出展が多い。また韓国の公営放送局であるKBSや民放の放送局もブース出展しているため、技術情報とともに番組コンテンツの情報も楽しめることで、広い来場者層を獲得しているようだ。

韓国ではすでに9年前にアジア最初の地デジ放送を開始しているが、アナログ放送との並行放送で、完全アナログ停波は来年の2012年末を予定している。またステレオスコピック3D(S3D)制作も日本よりも先行していると思われたが、具体的なTV向けなどの3Dコンテンツ制作はこれからのようだ。日本と似ているお国柄としてサムスンやLG電子などのTVメーカーが強いこともあり、最近では3D対応のディスプレイを発売し始めた事から、コンテンツ不足などを解消するため、最近、政府からS3Dコンテンツに関する助成金が出るようになり、今後のS3D制作市場の活性化が見込まれているという。

また全く違った方面では、ITコミュニケーションに力を入れている韓国では、ここ近年においてカフェの出店が目立っており、中には『サイバーカフェ』と呼ばれるPCやデジタルサイネージなどが充実したカフェが存在する。ここで流す3Dコンテンツなどにも期待が高まっており、これも市場拡大の可能性がありそうで、3D撮影用リグとともに、ソニー、パナソニックから出されていた一体型ニ眼式3Dカメラ等にも注目が集まっていた。会場展示から注目の製品をいくつかピックアップしていこう。

Road Technology

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“SUPERTRON”のブランド名のモニターだが、日本ではPROTECH(日本ビデオシステム)として販売されている、Road Technology社。実は日本の有名大手企業にも液晶パネルなどをOEM供給している老舗の韓国企業だ。新製品のSMD-7200は、裸眼で3D映像を認識できる7.2インチ液晶のミニ3D裸眼モニターを参考展示。表示機能などかなり精度も良く、今年後半の発売を目指しているが価格や発売時期は未定。

REDROVER

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2011NABShowで計測技術研究所と、ハーフミラー式4K3Dモニターのマーケットアグリーメントを締結した韓国の業務用3D関連メーカーのトップランナー、REDROVER社。元々はSEVENDATA社と名乗っていたが、カナダのRedrover Studioとの業務提携により、2007年にREDROVER Co.,Ltdに社名変更。解像度を落とさない業務用3Dモニター「True3Di」などを中心に展示。

VARAVON

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DSLR関係を中心にセンスのよい撮影サポート製品を送り出している韓国の新しいメーカーVARAVON。NABでも出品されていたDSLR用のサポートリグ”ARMOR”は、シンプルながらも小型軽量で無駄の無い作りが特徴だ。NABでは出ていなかったフロントグリップとサポートアームが追加で発表されていた。

Cineroid

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10年以上の長い社歴を持つCineroidでは、DSLRムービー撮影用のLEDライトやEVFなどのオリジナル製品を展示。またステディカム操作時に水平バランスを視覚的に直感認知できるLEDバランスメーター”HORIZON”も参考展示。

AVA(Audio Visual Application)

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デスク大のタッチパネル(サムスン製)に様々なアプリケーションやコンテンツなどを表示して、複合的にそれらを表示できるLCDマルチタッチシステム。様々な画像やPDFなどファイルをパネル上で最大32ポイントを指などを動かし、コンテンツを自在に回転/移動表示でき、それをプロジェクター経由で別の場所へ映し出すことが可能。

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。